17:15 〜 18:30
[SCG45-P05] 北部日本海溝三陸沖中部斜面平坦面のマルチビーム海底地形、シングルチャンネル反射法音波探査
キーワード:日本海溝、中部斜面平坦面、マルチビーム海底地形調査、シングルチャンネル反射法音波探査
海域における巨大地震津波履歴の研究の一環として、2019年にJAMSTEC調査船「かいめい」のKM19-03航海が行われた。その航海中、北部日本海溝三陸沖(39-40°N)において、中部斜面平坦面(Mid-Slope Terrace, MST)のマルチビーム海底地形調査、およびシングルチャンネル反射法音波探査を行った。
中部斜面平坦面(MST)とは、日本海溝陸側斜面の上部斜面と下部斜面の急斜面域の間で、水深4000-6000 mに現れる、平均傾斜が0-2°程度の平坦面〜緩斜面の地形変換面である。MSTが現れる水深や平坦面の幅には海溝の南北にわたって地域的変動があるが、その変動は、沈み込み帯の上盤プレート陸側斜面に働く力学の地域性、あるいは構造発達の時間発展的なステージの違いを反映しているものかもしれない。本調査域は水深4600-4800 mで、MSTの東西(海溝〜陸側)幅が最大級の約20 kmある、MSTがよく発達している地域である。
「かいめい」の海底地形データは、マルチビーム音響測深機KM122によって取得された。また、ドイツ調査船「ゾンネ」SO251A航海でもKM122を用いて、JAMSTEC「みらい」MR16-09 Leg 4航海ではSeaBeam 3012マルチビーム音響測深機を用いて、当海域を横断したそれぞれ1測線の海底地形データが取得されている。それらの海底地形データは最近のマルチビーム音響測深機によって計測されたため、これまでに得られていたデータと比較して、詳細なデータとなっている。MST上の斜面崩壊地形、急崖、小海嶺、そして表層を覆う堆積小海盆が混交する複雑な地形(e.g. 佐々木, 2003)が、より鮮明にマッピングできた。
斜面崩壊地形は浸食や地すべり、急崖は断層活動、小海嶺は隆起、堆積小海盆は沈降運動を示唆するものと考えられる。シングルチャンネル反射記録を見ると、堆積小海盆の層厚は最も厚く堆積している場所でも約75 m程度である。調査域内の堆積小海盆におけるピストンコアリングで得られた堆積物コアから見積もられた堆積速度約36-109 cm/kyrを考えると、MST上の堆積小海盆は約7-20万年内で形成されていることになる。MSTの西側、陸側に位置する小海盆の堆積層は、層下部に行くにしたがい陸側に傾斜しており、MSTの西側は陸側に傾動しながら沈降していることが示唆される。
本講演では、表層部の構造記載から、日本海溝の上盤プレートの構造形成の前後関係、発達・変動史を議論する。
「かいめい」船長をはじめとする乗組員の高度な技術により、調査航海は成功に至った。日本海洋事業観測技術員の高江洲盛史氏、大渡祐樹氏、井和丸光氏、森岡美樹氏には、データ取得に関して多大なる支援をいただいた。ここに記して感謝の意を表します。
図:北部日本海溝三陸沖、中部斜面平坦面の海底地形。等深線間隔は50 m。
中部斜面平坦面(MST)とは、日本海溝陸側斜面の上部斜面と下部斜面の急斜面域の間で、水深4000-6000 mに現れる、平均傾斜が0-2°程度の平坦面〜緩斜面の地形変換面である。MSTが現れる水深や平坦面の幅には海溝の南北にわたって地域的変動があるが、その変動は、沈み込み帯の上盤プレート陸側斜面に働く力学の地域性、あるいは構造発達の時間発展的なステージの違いを反映しているものかもしれない。本調査域は水深4600-4800 mで、MSTの東西(海溝〜陸側)幅が最大級の約20 kmある、MSTがよく発達している地域である。
「かいめい」の海底地形データは、マルチビーム音響測深機KM122によって取得された。また、ドイツ調査船「ゾンネ」SO251A航海でもKM122を用いて、JAMSTEC「みらい」MR16-09 Leg 4航海ではSeaBeam 3012マルチビーム音響測深機を用いて、当海域を横断したそれぞれ1測線の海底地形データが取得されている。それらの海底地形データは最近のマルチビーム音響測深機によって計測されたため、これまでに得られていたデータと比較して、詳細なデータとなっている。MST上の斜面崩壊地形、急崖、小海嶺、そして表層を覆う堆積小海盆が混交する複雑な地形(e.g. 佐々木, 2003)が、より鮮明にマッピングできた。
斜面崩壊地形は浸食や地すべり、急崖は断層活動、小海嶺は隆起、堆積小海盆は沈降運動を示唆するものと考えられる。シングルチャンネル反射記録を見ると、堆積小海盆の層厚は最も厚く堆積している場所でも約75 m程度である。調査域内の堆積小海盆におけるピストンコアリングで得られた堆積物コアから見積もられた堆積速度約36-109 cm/kyrを考えると、MST上の堆積小海盆は約7-20万年内で形成されていることになる。MSTの西側、陸側に位置する小海盆の堆積層は、層下部に行くにしたがい陸側に傾斜しており、MSTの西側は陸側に傾動しながら沈降していることが示唆される。
本講演では、表層部の構造記載から、日本海溝の上盤プレートの構造形成の前後関係、発達・変動史を議論する。
「かいめい」船長をはじめとする乗組員の高度な技術により、調査航海は成功に至った。日本海洋事業観測技術員の高江洲盛史氏、大渡祐樹氏、井和丸光氏、森岡美樹氏には、データ取得に関して多大なる支援をいただいた。ここに記して感謝の意を表します。
図:北部日本海溝三陸沖、中部斜面平坦面の海底地形。等深線間隔は50 m。