15:00 〜 15:15
[SGC33-06] 高-Mg安山岩及び玄武岩中の強親鉄性元素の特徴とカムチャッカ前弧域における第四紀島弧火成活動の成因
キーワード:カムチャッカ、強親鉄性元素、島弧火成活動、高-Mg安山岩、海山
カムチャッカは太平洋プレート(PAP)北部の沈み込みに対応した巨大な火山弧であり,3本の火山帯が形成されている;Eastern Volcanic Front(EVF),Central Kamchatka Depression(CKD),Sredinny Range.カムチャッカの中央部には,ハワイホットスポットから連なる天皇海山列の先端がPAPと共に沈み込んでいる.PAPスラブの北端では,沈み込み角度が50°から35°と浅くなり,それに伴いEVF沿いの火山フロントが北緯55°付近において,CKDへと北に屈曲する.一方,EVFの北東延長上の前弧域にも1Maより若い第四紀単成火山群,East Cone火山群(EC)が存在する.8つの火山から採取された新鮮な16個のEC溶岩は,全岩のSiO2,MgO,Al2O3含有量に基づき,高-Mg安山岩(HMA)と玄武岩(B)を含む5タイプに分類される.EC溶岩は初生的(FeO*/MgO<1)であり,Pbのスパイクといった島弧溶岩の特徴を示す.EC溶岩の岩石学的及び地球化学的な情報に基づく先行研究によると,沈み込んだ天皇海山列からの熱的・化学的な影響が,前弧域において一過性でありながら多様な組成を持つEC溶岩を生じさせた.例えば超高Ni含有カンラン石斑晶を含むHMAは,海山由来の高温でSiに富む流体によって,マントルカンラン岩が交代作用を受け形成された輝岩岩脈のメルトに由来する.一方,Bは先の交代作用によってSiに乏しくなった流体がさらに上昇し,マントルカンラン岩を溶融することで生じたとされる(Nishizawa et al. 2017).
EC溶岩の生成過程の更なる解明に向けて,我々は強親鉄性元素(HSE)に注目した.HSEは金属相や硫化物相に濃集する特徴があり,溶岩中のHSE濃度はその溶融や分別過程を反映する重要な情報を提供し得る.本研究では,EC溶岩中のRu,Pd,Os,Ir,Ptを含む白金族元素(PGE)とReの全岩組成を分析した.枯渇したマントル組成(DM; Salters & Stracke, 2004)で規格化したスパイダー図において,Re及びplatinum-PGE(P-PGE; Pt. Pd)に比べIridium-PGE(I-PGE; Os, Ir, Ru)に枯渇するというMORBや島弧溶岩に一般的なトレンドを示す.岩石タイプや火山ごとにそのトレンドは異なるが,特にHMAとBはP-PGEとReの濃度とトレンドは類似しているのに対し,I-PGEは対照的で, EC溶岩の中でHMAは最も濃度が低く,初生的なBは最もI-PGE濃度が高い.それはあたかも初生的なBメルトからI-PGEのみを取り去る様な“ナゲット”効果によってHMAが生成されたかのように見える.つまり,メルトのP-PGEとRe濃度を決める要素はほぼ共通である一方,I-PGE濃度を決める要素は両者に違いがあることを意味し,これはEC溶岩の起源とその多様性を示す重要な特徴といえる.
EC溶岩のHSE濃度を決めた要因を明らかにする為に,次の4つの異なる溶融モデルを想定し初生メルトのフォワード計算を行った;1. 全岩バッチ溶融モデル,2. 硫化物メルト同伴モデル,3. 硫化物メルト分配モデル,4. 硫化物溶融モデル.その結果,HMAと初生的なBのHSE濃度の違いは単純な溶融度の違いでは説明できないことが判明した.また,マントル岩石中でHSEの主なホストとなる硫化物相の存在無しに,EC溶岩のHSE組成を再現することは難しいといえる.
EC溶岩の生成過程の更なる解明に向けて,我々は強親鉄性元素(HSE)に注目した.HSEは金属相や硫化物相に濃集する特徴があり,溶岩中のHSE濃度はその溶融や分別過程を反映する重要な情報を提供し得る.本研究では,EC溶岩中のRu,Pd,Os,Ir,Ptを含む白金族元素(PGE)とReの全岩組成を分析した.枯渇したマントル組成(DM; Salters & Stracke, 2004)で規格化したスパイダー図において,Re及びplatinum-PGE(P-PGE; Pt. Pd)に比べIridium-PGE(I-PGE; Os, Ir, Ru)に枯渇するというMORBや島弧溶岩に一般的なトレンドを示す.岩石タイプや火山ごとにそのトレンドは異なるが,特にHMAとBはP-PGEとReの濃度とトレンドは類似しているのに対し,I-PGEは対照的で, EC溶岩の中でHMAは最も濃度が低く,初生的なBは最もI-PGE濃度が高い.それはあたかも初生的なBメルトからI-PGEのみを取り去る様な“ナゲット”効果によってHMAが生成されたかのように見える.つまり,メルトのP-PGEとRe濃度を決める要素はほぼ共通である一方,I-PGE濃度を決める要素は両者に違いがあることを意味し,これはEC溶岩の起源とその多様性を示す重要な特徴といえる.
EC溶岩のHSE濃度を決めた要因を明らかにする為に,次の4つの異なる溶融モデルを想定し初生メルトのフォワード計算を行った;1. 全岩バッチ溶融モデル,2. 硫化物メルト同伴モデル,3. 硫化物メルト分配モデル,4. 硫化物溶融モデル.その結果,HMAと初生的なBのHSE濃度の違いは単純な溶融度の違いでは説明できないことが判明した.また,マントル岩石中でHSEの主なホストとなる硫化物相の存在無しに,EC溶岩のHSE組成を再現することは難しいといえる.