日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

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[U-14] 変動する地球に生きるための素養を育む地球教育の現状と課題

2021年6月5日(土) 15:30 〜 17:00 Ch.01 (Zoom会場01)

コンビーナ:市川 洋、中井 咲織(京都光華女子大学こども教育学部こども教育学科)、熊谷 英憲(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、西 弘嗣(東北大学学術資源研究公開センター 東北大学総合学術博物館)、座長:市川 洋(なし)

16:30 〜 16:45

[U14-05] 全国高校地学教育関係者情報交換会からの問題提起

★招待講演

*岩田 真1、飯田 和也2、宮嶋 敏3 (1.広島県立大柿高等学校、2.駒場東邦中学高等学校、3.埼玉県立熊谷高等学校)

2019年11月23,24日に行われた「全国高校地学教育関係者情報交換会」において,高等学校の地学教育の課題として,地学教員の孤立化・高齢化,地学専任以外の教員が地学の授業を担当していることなどが挙げられ,これらの課題を解決のために「学校・地域を超えたネットワークの形成」,「世代を超えてノウハウを継承するシステムの作成」,「地学専任以外の教員への支援」の必要性が提案された。その提案を受け,オンラインでの情報交換ができる場として「全国地学教育関係者オンライン情報交換会」を設立された。
オンライン情報交換会は,中・高・大学の教員,研究機関・出版関係者などによる自主的な活動で,主にSlackとZoomというアプリを用いて運営されており,参加者による授業実践の報告や作成教材の紹介,大学教員や研究機関の関係者によるそれぞれ専門の分野に関する講演など様々な活動を実施してきた。これまでの情報交換の中で見えてきたいくつかの課題をここに報告させていただく。

1つめは,若手地学教員への支援である。地学教員の多くは学校に1人であることが多く元々孤立しやすい環境にある。各県には高校教員によって活動されている地学部会や地学研究会があり,そこでは学校を超えての情報交換や交流が行われてきた。しかし,これらの会に参加する若手地学教員は年々減少傾向にあり,人数不足から取り組みが衰退している県もみられた。各県の地学部会や地学研究会の活動を支援するとともに,教員養成の段階の学生にこれらの研究会の取り組みを紹介するなど,教員になってからも地学教育を学び続ける支援を行っていく必要があると考える。
2つめは,学校外からの地学教育の支援である。情報交換の中で,専門家による最新の研究に関する講義などで生徒たちに地球科学に触れる機会を設けたいという高校教員の声が多く聞かれた。また,高校生にアウトリーチする機会を探している研究者や大学関係者もみられた。これら両方のニーズがあるにも関わらず,実施に至った実践例はまだまだ少ない。オンラインによる交流によって新たな地学教育の支援の形も見られる中,今後生徒たちに地球科学に触れる機会をいかに増やしていくか検討していく必要がある。