日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT21] 地理情報システムと地図・空間表現

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (18) (Ch.18)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、コンビーナ:田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)、座長:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)

11:00 〜 13:00

[HTT21-P04] 都市空間における小動物の生態に関する研究

*原田 茜1田中 一成1 (1.大阪工業大学)


キーワード:猫、ルートセンサス法、GIS

1.はじめに
 近年、動物を家族に迎え入れる家が多くなっている。都市生活において身近な動物(ペット)の存在は、社会的ストレスの解消だけでなく、地球規模の環境を身近に考えるきっかけになっているともいえる。一方、ペットを飼う人が増えたと同時に手放す人も一時的に増えた。ペットのお世話を十分にできずに、そのままほかの飼い主に譲ったり、ひどい場合は保健所に持ち込んだり捨てたりする人も出てきている。
 その中でも猫の飼育数は犬の飼育数を上回るほど増加しており、猫ブームとなっている。猫が犬よりも多く飼われる一番の要因に飼育しやすさ、飼育費用が少なくすむという理由もある。こうした現状により今では飼い主のいない猫を見かける回数が多くなってきている。猫が好きな人もそうでない人もいる中でフン被害や近隣トラブル、飼い主のいない猫に対する苦情なども数多くあり、捨て猫やそういった行為が問題視されている。
 こういった問題をこれから解決するには人が猫に感じる不満やストレスと猫が人に感じる不満やストレスは何か、どういったことが原因で不満が生まれているのかの現状を把握したのち猫にとっても人にとっても気持ちの良い暮らしができる環境を調査し、猫と人が気持ちの良い暮らしのできる都市空間デザインを提案すべきではないかと考える。
2.研究の目的と方法
 研究方法は地域猫活動をおこなっている東の地区とおこなっていない西の地区が存在する対象地区Aでアンケートをおこない、飼い主のいない猫に対する印象の調査である。その結果をもとに猫の行動範囲と関係しているのかを探り、GISによる分析で人が飼い主のいない猫に感じている不満やストレスになる部分を把握し、互いに快適な環境で暮らすために何を改善すべきなのかを考察した。
3.対象地区Aのアンケート
 アンケート結果よりどの場所で飼い主のいない猫による被害が多いのか、地域猫活動をおこなっている地区では飼い主のいない猫に対してどのような印象があるのかなどを確認することを目的としている。本調査のアンケートの分析から地域猫活動や地域猫について知らない人が多いために、地域猫に対してわるい印象を持っている人が多いことが分かった。そのため地域猫活動について周知してもらうことで地域猫に対する理解が高まり猫に対する印象が良くなると考える。
4.猫の行動範囲の把握
 この調査は対象地区Aでおこなった本調査のアンケートの結果から実際に対象地区Aに生息している猫の数と行動範囲を猫のカルテとルートセンサス法により調べることで被害が多い原因を探る。猫のカルテを作成し、対象地区Aの猫の生息数を調査した。地域猫活動をおこなっている東の地区では13匹、おこなっていない西の地区では8匹が確認でき、対象地区Aでは合計21匹の猫が確認することができた。ルートセンサス法では、期間と時間を決め猫の生息位置を記録し、猫の行動範囲の最小値と最大値を加えた。
猫の行動範囲の調査より対象地区Aにいる猫の生息数や行動範囲が分かった。それにより猫の行動範囲と被害は関連していることが明らかとなった。
5.GISによる分析と考察
 これまでの結果を踏まえてGISによる分析よりアンケートを活用して被害の中で一番多かったフン被害を対象とした。アンケート結果を回収した区間ごとで割合によって色分けをした。地域猫活動をおこなっていない東の地区では、個人で餌を与えている。この場合、トイレの設置やフンの処理をしている人はいないため猫たちは自分の好む場所で排泄しているためにフン被害の場所が大きく広がっているのではないかと考えられる。
6.散布図
 地域猫を悪いと思う人と分被害を受けている人には関係がみられたため、被害が減れば地域猫に対する嫌悪感をなくしていけるのではないかと考える。
7.おわりに
 本研究は、人間と飼い主のいない猫の暮らしの分析をおこなった。都市内の小動物と我々人間は、異なる次元に暮らしており、これが接し交わることでプラス側、マイナス側の様々な生活が生まれる。異なる次元からアプローチすることで接する機会、方法、空間デザインに結びつく可能性がある。