日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS18] 古気候・古海洋変動

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (30) (Ch.30)

コンビーナ:長谷川 精(高知大学理工学部)、コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、山本 彬友(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、コンビーナ:山崎 敦子(九州大学大学院理学研究院)、座長:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、長谷川 精(高知大学理工学部)

11:00 〜 13:00

[MIS18-P16] 男鹿半島に見られる巨大炭酸塩コンクリーション群の成因

★招待講演

*隈 隆成1、渡部 晟2、西本 昌司3、澤木 博之4、吉田 英一1 (1.名古屋大学、2.元秋田県立博物館、3.愛知大学、4.男鹿半島・大潟ジオパークガイドの会)

キーワード:コンクリーション、海洋堆積物、女川層、鯨骨、ドロマイト

炭酸塩コンクリーションは世界中の様々な時代の地層中に見られる.これまでのコンクリーションに関わる先行研究では,炭酸塩コンクリーションの形成には,主に生物遺骸(有機体)の炭素成分と海水中のカルシウムとの急速な反応によって形成されることが示唆されてきた.しかしながら,海洋堆積物の中で実際にどのようにコンクリーションが形成されるのか未だ不明な点が残る.本研究では,秋田県男鹿半島鵜ノ崎海岸に分布する直径1~9 mの巨大コンクリーションを研究対象とした.これらの巨大炭酸塩コンクリーションは,中心部に鯨骨を含むものと含まないものがあり,その形成メカニズムと堆積環境を検討した.
本研究では,鵜ノ崎海岸に見られる炭酸塩コンクリーションのうち,内部に鯨骨を含むコンクリーションに対して,顕微鏡観察,X線を用いた元素マッピングを行った.また,化石本体部,コンクリーション部,マトリックス部に分けて,安定炭素・酸素同位体比分析,元素組成・鉱物組成分析を行った.野外観察の結果,巨大炭酸塩コンクリーション群は,西黒沢層最上位,及び女川層中に見られ,炭酸塩岩質な砂岩の層準にレンズ状,紡錘上,球状の炭酸塩コンクリーションが見られた.炭酸塩岩質な砂岩~シルト岩には級化構造と平行葉理が観察され,一部には一方向流を示す斜交層理が観察された.炭酸塩岩質な砂岩層には,様々な生痕化石が確認され,内部構造は擾乱されていた.炭酸塩コンクリーション中の堆積構造は不明瞭であるが,蛍光顕微鏡観察の結果,数mmのスケールの生痕が確認された.鉱物組成分析の結果,コンクリーションの主要鉱物はドロマイトであった.安定炭素・酸素同位体分析の結果は,化石本体部,コンクリーション部,マトリックス部の全体ではδ13Cとδ18Oで逆相関の関係が見られた.軽いδ13C&重いδ18Oは,鯨の有機物を炭素源として,重いδ13C&軽いδ18Oは,底生生物や微生物が鯨由来の軽い炭素を繰り返し取り込み,残った相対的に重いδ13Cがそれぞれ海水と反応して形成された炭酸塩の可能性がある.以上の結果より,巨大炭酸塩コンクリーション群は,初めに海底に沈んだ鯨の死体の周りに鯨骨群集が形成され,次に,速い堆積速度で鯨の死体が埋積され,底生生物や微生物の活動によって分解された炭素が炭酸として海水と反応することによって形成されたと推定される.