11:00 〜 13:00
[MZZ52-P02] 非破壊岩石分析による土佐山内家大名墓碑山内大名の花崗岩質墓碑の産地推定
キーワード:磁化率(帯磁率)、産地同定、花崗岩、墓石、大名墓
日本各地には江戸時代に整備された広大な大名墓所が存在し、墓所内に奉られている数メートルにもわたる巨大な墓石群は当時の政治と文化を映し出す鏡になっている。大名墓所の墓石に使用されている石材の産地および運搬工程は当時の文化を知る手がかりとなりうるが、石材産地に関する文献記録が少なく、産地がはっきりしない墓石が多い。高知県山内家大名墓所には花崗岩で制作された墓石があるが、その産地については議論が残されていた。そこで本研究では、土佐山内家の大名墓所の墓石を対象に帯磁率、有色鉱物の粒径、カリ長石の色の非破壊岩石分析を行った。非破壊分析で得られた特徴について、高知県で産出される花崗岩と瀬戸内海で産出される山陽花崗岩と比較し石材産地の推定を行った。墓石の帯磁率は0.3~0.4×10-3 SIを示すとともにガウス分布に従った。また、花崗岩に含まれる有色鉱物の粒径は対数正規分布に従うとともに、有色鉱物の含有率と粒径は他の花崗岩と比較して大きい特徴を示した。帯磁率と粒径の特徴は高知県南西部大月町で産出する花崗岩にも認められた。一方、山陽花崗岩については白石島の花崗岩が唯一2つの特性に合致したが、墓石と比較してカリ長石の色が強く赤みがかっていた。本研究の結果、山内家墓碑の花崗岩は高知県南西部の大月町に産出する花崗岩由来である可能性が高いことが分かった。江戸時代以前の中世に造られた高知県の石造物は山陽花崗岩由来だと考えられている。本研究結果は江戸時代前後に高知県の石材の流通ルートが変化したのか、変化したとしたらそのきっかけは何か、もしくは中世の石造物が山陽花崗岩由来であるという記録が不正確なのかという点で重要な示唆を与える。