日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-03] あなたは自然災害から生き残れますか?学校での学びで!

2023年5月21日(日) 09:00 〜 10:30 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:林 信太郎田口 康博山本 隆太(静岡大学地域創造教育センター)、髙橋 裕(豊島岡女子学園)、座長:林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)、田口 康博山本 隆太(静岡大学地域創造教育センター)、髙橋 裕(豊島岡女子学園)

09:33 〜 09:48

[O03-03] あなたは火山災害から身を守れますか?学校の学びで

★招待講演

*林 信太郎1 (1.秋田大学大学院教育学研究科)

キーワード:地理総合、防災教育、火山災害

この講演では,学校の学びで,みなさんが災害から身を守れるかどうか,火山災害を材料に考えます。また,学校の学びを分析する時,主に地理総合の教科書(5種類)を使います。地理総合は高校の必修科目であり,また,防災教育の内容が充実しているからです。それとともに,地球科学的自然現象をあつかう地学基礎についても検討していきます。
もっとも危険な火山災害:さまざまな火山災害のうち,もっとも危険な火山災害は,火砕流,火山泥流,噴石の3種類です。いずれも高速で極めて危険です。火砕流は高速の流れで,しかも高温です。火山のふもとまでやってくることもあります。のみこまれると,100%命はありません。雲仙普賢岳の1991年噴火では,火砕流によって43名の方がなくなりました。火砕流は高速ですので,発生する前に逃げ出しておく必要があります(事前避難)。火山泥流も同じで麓にやってくる高速の流れです。のみこまれると,津波と同じくらい危険です。
噴石は火山の爆発で石が飛んでくる現象です。小規模な噴火でおきますが,火口のまわりにいる登山者には致命的です。御嶽山2014年の噴火では,火口周辺にいた63名の方がなくなったり行方不明になったりしました。高速の噴石は鉄砲の弾丸ほど危険ですので,岩陰や小屋の中などに急いで隠れる必要があります(緊急避難)。
この3種類の災害について,火山泥流を除くとほとんどの教科書が何らかの形で書いてあります。もちろん,地理の教科書ですので,それほど詳しく説明されているわけではありません。地学基礎などで災害現象について学んで初めて十分な知識が身につくと思います。
この3種類の災害からは素早く避難する必要があります。ところが…人間って意外と逃げないんですね。危険が迫ってもなかなか逃げないのです。実際,東日本大震災の時,地震が起こって津波がくる危険性を感じているのに逃げなかった人がいることがわかっています。「正常性のバイアス」ってご存知でしょうか?災害がせまっているような緊急時でも,その状況を正常と考える心理です。そのような心理状態になると,「大丈夫」と思いこんで,なかなか避難しないということになります。「正常性のバイアス」にとらわれないためには,「正常性のバイアス」があることを知ること,そこからの抜け出し方について知ることが大事です。
「正常性のバイアス」については,おそらく地理総合には書かれていない,と思って教科書を見ると…なんと,3つの教科書に書いてあるではありませんか。これは素晴らしいことだと思います。
さて,字数が足りなくなってきました。講演では,「噴火予知」とハザードマップの「想定外」についてもお話ししたいと思います。