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[AOS14-02] 東シナ海陸棚斜面域における内部重力波の観測例と微地形発達過程に関する予察
キーワード:内部重力波、内部孤立波、内部潮汐、レイセオリー、地形ダイナミクス
内部重力波は、海嶺等の急峻な海底地形を有する海域で卓越して発生することが知られている。東シナ海でも、内部孤立波を衛星から得られたSAR画像により捉えたLi et al.(2008)や水平流速データの周波数解析から内部潮汐を観測したLozovatsky(2015)に挙げられるように、たびたび内部重力波が観測されている。本報告では、海上保安庁で行なった海象観測結果から、内部重力波の発生を示唆するデータをいくつか示すとともに、斜面上を伝播する内部重力波が陸棚斜面域に分布する特徴的な地形構造の発達に寄与した可能性について予察を行なった結果を報告する。
観測データは2022年10月に海上保安庁海洋情報部測量船「拓洋」により取得、また、2023年6月に測量船「光洋」により取得された流速プロファイル、水温塩分プロファイル、水中音響画像である。2022年10月のデータにおいて、簡易的に、順圧成分と傾圧成分を分離し、東西流速の傾圧成分を調べたところ、鉛直断面内にモード波様の鉛直構造が確認され、その構造は約7時間程度で位相が反転する様な傾向が確認された。これは内部潮汐の発生を示唆する観測結果であると考えられる。また、水中音響画像中には、内部孤立波様の音響異常が見られ、その分布水深については、二乗した浮力振動数のプロファイル中に存在するピークとおおよそ対応していた。また、2023年6月のデータにおいても水温プロファイル中に、周期約半日、振幅数℃、分布水深約300-340m程度の振動が見られた。以上の観測結果から、観測機器の制限により完全に波動の様相を追跡できているわけではないが、東シナ海陸棚斜面域は内部重力波が卓越して発生し得る海洋場を有している可能性があると考えられる。一方、東シナ海陸棚斜面域には波状ベッドフォームやチャンネル様構造等の特徴的な地形構造が顕著に分布していることが知られている(堀之内・他、2024; JpGU)、これらの地形構造の発達過程に、陸棚斜面域を伝播する内部重力波が寄与している可能性について、モザンビーク沖の陸棚斜面域を対象とした先行研究であるMiramontes et al.(2020)を参考に理論的予察を行なった。斜面上における内部重力波の伝播に関するRay theoryを2022年10月のデータに適用したところ、波状地形付近では沖側に反射するsupercritical条件、チャネル様の窪みを持つ地形周辺では海底に補足されるnear-critical条件を示し、この結果はMiramontes et al.(2020)と同様の傾向であった。予察的結果ではあるものの、東シナ海陸棚斜面域で卓越する内部重力波にが海底地形構造の発達過程に寄与している可能性が示唆された。
観測データは2022年10月に海上保安庁海洋情報部測量船「拓洋」により取得、また、2023年6月に測量船「光洋」により取得された流速プロファイル、水温塩分プロファイル、水中音響画像である。2022年10月のデータにおいて、簡易的に、順圧成分と傾圧成分を分離し、東西流速の傾圧成分を調べたところ、鉛直断面内にモード波様の鉛直構造が確認され、その構造は約7時間程度で位相が反転する様な傾向が確認された。これは内部潮汐の発生を示唆する観測結果であると考えられる。また、水中音響画像中には、内部孤立波様の音響異常が見られ、その分布水深については、二乗した浮力振動数のプロファイル中に存在するピークとおおよそ対応していた。また、2023年6月のデータにおいても水温プロファイル中に、周期約半日、振幅数℃、分布水深約300-340m程度の振動が見られた。以上の観測結果から、観測機器の制限により完全に波動の様相を追跡できているわけではないが、東シナ海陸棚斜面域は内部重力波が卓越して発生し得る海洋場を有している可能性があると考えられる。一方、東シナ海陸棚斜面域には波状ベッドフォームやチャンネル様構造等の特徴的な地形構造が顕著に分布していることが知られている(堀之内・他、2024; JpGU)、これらの地形構造の発達過程に、陸棚斜面域を伝播する内部重力波が寄与している可能性について、モザンビーク沖の陸棚斜面域を対象とした先行研究であるMiramontes et al.(2020)を参考に理論的予察を行なった。斜面上における内部重力波の伝播に関するRay theoryを2022年10月のデータに適用したところ、波状地形付近では沖側に反射するsupercritical条件、チャネル様の窪みを持つ地形周辺では海底に補足されるnear-critical条件を示し、この結果はMiramontes et al.(2020)と同様の傾向であった。予察的結果ではあるものの、東シナ海陸棚斜面域で卓越する内部重力波にが海底地形構造の発達過程に寄与している可能性が示唆された。