日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG25] 文化水文学

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:中村 高志(山梨大学大学院・国際流域環境研究センター)、近藤 康久(総合地球環境学研究所)、高橋 そよ(琉球大学)、安原 正也(立正大学地球環境科学部)

17:15 〜 18:45

[HCG25-P06] 食料システム産業の高度化に伴う窒素汚染プロセスの変化
−山梨県を事例に–

*加藤 晃汰1武田 浩志1、齋木 真琴2西田 継3 (1.山梨大学大学院医工農学総合教育部、2.総合地球環境研究所、3.山梨大学国際流域環境研究センター)

キーワード:食料システム、窒素汚染、産業連関分析

緑の革命以来、反応性窒素の人為的な生産は食料生産を拡大させ、世界人口の半分の食料需要を満たしている。一方で、食料生産から消費、廃棄に至るまでの食料システムから一部の反応性窒素が流出し、温暖化や富栄養化、地下水の硝酸性窒素汚染が世界各地で引き起こされている。特に地下水については、食料生産による窒素汚染により居住地の変更を余儀なくされた事例も存在する。このように窒素汚染はライフラインを断ってしまうこともあるため、汚染の原因を把握するとともに適切な管理方針を示すことが急務である。
窒素汚染の原因を探るため、窒素フロー解析手法により食料システムにおける反応性窒素の排出プロセスの特定が行われてきた。先行研究では、特に県レベルのスケールで窒素フローを解析することにより、食料システムにおける地域の特徴を考慮した具体的な汚染対策を提案している。このようなローカルなスケールで窒素フロー解析を行なっている先行研究では、農業をはじめとした一次産業が盛んな地域を対象にしている。その一方で、一次産業が衰退している日本でも、食の外部化に伴い窒素汚染のプロセスが変化していると考えられる。食品加工業を筆頭に二次・三次産業が発達している日本では、人為的な生産活動に伴い発生する1人当たりの廃棄窒素量が世界平均の2倍である。このことから、食産業の高次化により食品廃棄に由来する窒素汚染のプロセスが強まっている可能性がある。しかしながら、既存の窒素フロー解析では、手法の都合上、解析対象の産業が食料生産と消費に限られるため、高次産業(食品製造業:食品加工業、流通業、飲食業)における窒素フローおよび窒素汚染プロセスの特定ができていない。
そこで既存の窒素フロー解析に産業連関分析手法を組み込むことにより、食品製造業の窒素フローを再現できると考えた。本研究では、これまでに窒素汚染の報告がされている山梨県を対象地域とし、公開データの存在する2005、2011、2015年を対象年に食料システムの窒素フロー解析を行なった。具体的には以下2点を目的に、産業連関分析を組み込んだ窒素フロー解析手法を開発した。1つ目に、これまで特定できなかった食品廃棄に由来する窒素汚染プロセスを特定する。2つ目に、産業の拡大(ここでは各産業への反応性窒素投入量)による廃棄窒素量への影響を解析する。