17:15 〜 18:45
[HGM03-P02] 段丘面投影縦断に基づく由良川・土師川・竹田川の地形発達史
ー由良川の流路変更と3河川の規模の違いがもたらす影響ー
★招待講演
キーワード:段丘面投影縦断、福知山湖、由良川の流路変更、段丘面形成プロセス、長田野堆積段丘面
はじめに
由良川は京都府北部を流れる一級河川である.中流域の福知山盆地には河成・湖沼堆積物からなる比高50 mの段丘面(長田野面模式地,東西約4.0 km,南北約3.5 km)が広く分布する.岡田・高橋(1969)によると由良川はかつて竹田川の谷を通り,氷上回廊より加古川の谷へと流れ,瀬戸内海に南流していた.その後,何らかの原因で福知山湖が形成され,溢水が北西側で生じたために,由良川の流路は日本海へ注ぐ現流路に変わった.長田野面は堆積段丘面,下位の段丘面群は侵食段丘面である.加藤ほか(2006)によると,長田野面の堆積年代はテフラ分析等により約27万年前以前~約19万年前である.本研究の目的は,段丘面投影縦断に基づいて段丘面を再区分し,段丘面分布の差異の要因を河谷形成史や河川規模の観点から考察することである.
調査方法
空中写真の判読・地形計測から段丘面投影縦断図を作成し,現地で段丘堆積物を調査した.また長田野面模式地においては段丘礫の礫径や岩種構成を調べた.
結果および考察
1)各河川の河谷幅
福知山盆地や旧由良川の流れた谷では、河谷幅1km以上の広い谷が形成されていた.いっぽう,由良川や土師川の山間部では1km未満と狭い谷が形成されていた.竹田川の広い河谷は,かつて南流していた旧由良川が形成したためで,現在の竹田川の規模と不釣り合いに広い河谷となっていると理解される.
2)段丘面投影縦断と段丘の分布
由良川・土師川・竹田川流域ではfill-top terraceである長田野面が広く分布する.本調査では,支谷に入り込む段丘面の平面形態や段丘面の縦断的連続性,現地調査における埋積段丘堆積物の確認に基づいて,長田野面を認定した.
由良川の土師川合流点~9km区間,竹田川の最下流部,土師川の由良川合流点から9~10km区間では,長田野面は標高70~75m付近にほぼ水平に分布していた.これは,福知山湖の水面に規定されたためであると考えられる.いっぽう,これらより上流区間では,現河床とほぼ同じ勾配か,あるいは緩い勾配で長田野面が分布した.これは,河谷の埋積による堆積段丘(fill-top terrace)であることを反映している.竹田川流域の長田野面は,支谷からの扇状地が福知山湖に張り出し,湖水位の低下に伴い段丘化したものであった.
由良川・土師川・竹田川流域には,数段の段丘が発達する.本調査では長田野面よりも下位の侵食段丘面を7段に分類した.つまり上位より,千束面・芦渕面・上野面・上松面・才田面・前田面,そして寺町面と命名した.
3)長田野面模式地の段丘堆積物調査
長田野面模式地において砂岩礫の含有率および礫径が,南東から北西方向に向かって減少傾向を示した.砂岩礫はもろく砕けやすいことから,減少が掃流方向を示し,長田野面模式地への堆積物の供給源は南東方向にある.つまり土師川である.
段丘地形の発達史
1)由良川南流期
竹田川の河谷は,旧由良川が流れていたため,竹田川の河川規模に不釣り合いな広く深い谷が形成されていた.
2)湖沼期(長田野面形成期)
旧由良川では,何らか原因で福知山盆地を中心に湖面水位75m前後の湖沼(福知山湖)が形成された.由良川と土師川の山間部区間では,福知山湖に伴い侵食基準面が上昇し,河谷の埋積が進んだ.いっぽう,竹田川の黒井川合流点より下流側では,河谷の規模に比べ,竹田川の運搬土砂量がはるかに少ないために埋積が進まず,支谷からの扇状地が湖に張り出した.いっぽう由良川および土師川では,ファンデルタによる福知山湖の埋積が進行し,この堆積面が長田野面に相当する.
3)開析期(侵食段丘面群形成期)
日本海へ流出する由良川へと流路変更が生じた.由良川や土師川の山間部では,各河川に適した規模の河谷を流れていたため,河谷内に長田野面を開析した複数の下位段丘面群が形成された.綾部より下流の由良川は,砂がちなファンデルタ堆積物を侵食し,段丘面をほとんど残さなかった.由良川が高い土砂運搬能力を発揮したためである.いっぽう土師川は土砂運搬能力が相対的に小さく,ファンデルタの大部分が保存され,長田野面模式地が残された.
福知山湖の形成と水位低下,その後の3つの河川の振る舞いの違いが,対象地域の段丘面分布を決定づけた.従って福知山湖の成因を知ることは,この地域の地形発達の鍵であり今後の課題である.
結論
段丘面投影縦断から,長田野面と7段の下位段丘面群に分類し,地形発達史を古地理の変遷図として新たに提案した.旧由良川によりもたらされた河谷幅の適合性と各河川の規模の違いが,それぞれの流域に現在のような段丘面の分布の差異をもたらした.
文献
岡田篤正・高橋健一(1969):由良川の大規模な流路変更.地学雑誌,78,19-37.
加藤茂弘・山下 透・檀原 徹(2006):近畿地方北部の中部更新統・福知山層のテフラの対比.人と自然 Humans and Nature,16,35-42.
由良川は京都府北部を流れる一級河川である.中流域の福知山盆地には河成・湖沼堆積物からなる比高50 mの段丘面(長田野面模式地,東西約4.0 km,南北約3.5 km)が広く分布する.岡田・高橋(1969)によると由良川はかつて竹田川の谷を通り,氷上回廊より加古川の谷へと流れ,瀬戸内海に南流していた.その後,何らかの原因で福知山湖が形成され,溢水が北西側で生じたために,由良川の流路は日本海へ注ぐ現流路に変わった.長田野面は堆積段丘面,下位の段丘面群は侵食段丘面である.加藤ほか(2006)によると,長田野面の堆積年代はテフラ分析等により約27万年前以前~約19万年前である.本研究の目的は,段丘面投影縦断に基づいて段丘面を再区分し,段丘面分布の差異の要因を河谷形成史や河川規模の観点から考察することである.
調査方法
空中写真の判読・地形計測から段丘面投影縦断図を作成し,現地で段丘堆積物を調査した.また長田野面模式地においては段丘礫の礫径や岩種構成を調べた.
結果および考察
1)各河川の河谷幅
福知山盆地や旧由良川の流れた谷では、河谷幅1km以上の広い谷が形成されていた.いっぽう,由良川や土師川の山間部では1km未満と狭い谷が形成されていた.竹田川の広い河谷は,かつて南流していた旧由良川が形成したためで,現在の竹田川の規模と不釣り合いに広い河谷となっていると理解される.
2)段丘面投影縦断と段丘の分布
由良川・土師川・竹田川流域ではfill-top terraceである長田野面が広く分布する.本調査では,支谷に入り込む段丘面の平面形態や段丘面の縦断的連続性,現地調査における埋積段丘堆積物の確認に基づいて,長田野面を認定した.
由良川の土師川合流点~9km区間,竹田川の最下流部,土師川の由良川合流点から9~10km区間では,長田野面は標高70~75m付近にほぼ水平に分布していた.これは,福知山湖の水面に規定されたためであると考えられる.いっぽう,これらより上流区間では,現河床とほぼ同じ勾配か,あるいは緩い勾配で長田野面が分布した.これは,河谷の埋積による堆積段丘(fill-top terrace)であることを反映している.竹田川流域の長田野面は,支谷からの扇状地が福知山湖に張り出し,湖水位の低下に伴い段丘化したものであった.
由良川・土師川・竹田川流域には,数段の段丘が発達する.本調査では長田野面よりも下位の侵食段丘面を7段に分類した.つまり上位より,千束面・芦渕面・上野面・上松面・才田面・前田面,そして寺町面と命名した.
3)長田野面模式地の段丘堆積物調査
長田野面模式地において砂岩礫の含有率および礫径が,南東から北西方向に向かって減少傾向を示した.砂岩礫はもろく砕けやすいことから,減少が掃流方向を示し,長田野面模式地への堆積物の供給源は南東方向にある.つまり土師川である.
段丘地形の発達史
1)由良川南流期
竹田川の河谷は,旧由良川が流れていたため,竹田川の河川規模に不釣り合いな広く深い谷が形成されていた.
2)湖沼期(長田野面形成期)
旧由良川では,何らか原因で福知山盆地を中心に湖面水位75m前後の湖沼(福知山湖)が形成された.由良川と土師川の山間部区間では,福知山湖に伴い侵食基準面が上昇し,河谷の埋積が進んだ.いっぽう,竹田川の黒井川合流点より下流側では,河谷の規模に比べ,竹田川の運搬土砂量がはるかに少ないために埋積が進まず,支谷からの扇状地が湖に張り出した.いっぽう由良川および土師川では,ファンデルタによる福知山湖の埋積が進行し,この堆積面が長田野面に相当する.
3)開析期(侵食段丘面群形成期)
日本海へ流出する由良川へと流路変更が生じた.由良川や土師川の山間部では,各河川に適した規模の河谷を流れていたため,河谷内に長田野面を開析した複数の下位段丘面群が形成された.綾部より下流の由良川は,砂がちなファンデルタ堆積物を侵食し,段丘面をほとんど残さなかった.由良川が高い土砂運搬能力を発揮したためである.いっぽう土師川は土砂運搬能力が相対的に小さく,ファンデルタの大部分が保存され,長田野面模式地が残された.
福知山湖の形成と水位低下,その後の3つの河川の振る舞いの違いが,対象地域の段丘面分布を決定づけた.従って福知山湖の成因を知ることは,この地域の地形発達の鍵であり今後の課題である.
結論
段丘面投影縦断から,長田野面と7段の下位段丘面群に分類し,地形発達史を古地理の変遷図として新たに提案した.旧由良川によりもたらされた河谷幅の適合性と各河川の規模の違いが,それぞれの流域に現在のような段丘面の分布の差異をもたらした.
文献
岡田篤正・高橋健一(1969):由良川の大規模な流路変更.地学雑誌,78,19-37.
加藤茂弘・山下 透・檀原 徹(2006):近畿地方北部の中部更新統・福知山層のテフラの対比.人と自然 Humans and Nature,16,35-42.
