17:15 〜 18:45
[HSC07-P13] 屋外曝露実験における苦鉄質岩・超苦鉄質岩の風化過程の観測
キーワード:岩石風化促進、苦鉄質岩、CO2固定、炭酸塩鉱物、酸化マグネシウム
カーボンニュートラルの実現へ向け,CO2回収・貯留(CCS)が事業化として本格始動しつつある中,新たなオプションとして岩石風化促進による大気からのCO2の吸収と固定化への期待が高まっている。近年の玄武岩CCSの実証試験(アイスランド,米国)でも報告があるように,苦鉄質岩はCO2固定化のポテンシャルを秘めているため,岩石風化促進において苦鉄質岩や超苦鉄質岩を粉砕し地表(耕作地等)に散布することによるCO2の吸収と固定化の実現性を評価することが目下必要とされている。
そこで本報告では,岩石を屋外に暴露し,その風化過程のモニタリングを実施している結果を議論する。玄武岩(壱岐島,見島,佐渡島,北海道),かんらん岩(北海道),蛇紋岩(北海道)を入手し,粒径1 mm以上2 mm以下に粉砕・ふるい振とうしたものを出発物質とした。苦鉄質岩や超苦鉄質岩はマグネシウム(Mg)の含有量が多くそれがCO2鉱物固定化に寄与することも考えられるため,Mgの挙動をより明確に理解する目的で,酸化マグネシウム(MgO)も併せて用意した。以上の固体試料を2022年9月1日から産総研つくばセンター内の実験棟屋上に設置している。
12か月間のモニタリング結果からは岩石の風化反応を実際に観測することができた。降雨が観測された日の数日以内に,雨水と,岩石およびMgOと接触した溶液を採取したところ,固体試料と接触することでpHが雨水よりも上昇する傾向があり,CO2が溶存種として大気中からトラップされていることが示唆された。pHは特にMgOの通水液で最も高く(~9),次いで蛇紋岩(~8),かんらん岩と佐渡の玄武岩(~7)であり,溶解反応によって通水液の溶存Mg濃度が高くなったことが要因のひとつであると考えられる。一方,岩石およびMgOは1,6,12か月後に回収し,固体分析を実施した。MgOの実験においては,粉末X線回折によって含水マグネシウム炭酸塩鉱物(dypingite)が同定され,赤外顕微鏡および走査電子顕微鏡ではMgO粒子表面の一部にdypingiteが生成している様子が観察できた。
このように本研究では地表における岩石の風化とCO2の吸収や固定に関して,屋外における長期間のデータを取得することに成功したが,12か月後に回収した固体試料中には未反応物質が多く残存しているため,引き続きモニタリングを継続するとともに,今後は岩石の風化反応やCO2鉱物化反応をより促進する実験を検討していく予定である。
そこで本報告では,岩石を屋外に暴露し,その風化過程のモニタリングを実施している結果を議論する。玄武岩(壱岐島,見島,佐渡島,北海道),かんらん岩(北海道),蛇紋岩(北海道)を入手し,粒径1 mm以上2 mm以下に粉砕・ふるい振とうしたものを出発物質とした。苦鉄質岩や超苦鉄質岩はマグネシウム(Mg)の含有量が多くそれがCO2鉱物固定化に寄与することも考えられるため,Mgの挙動をより明確に理解する目的で,酸化マグネシウム(MgO)も併せて用意した。以上の固体試料を2022年9月1日から産総研つくばセンター内の実験棟屋上に設置している。
12か月間のモニタリング結果からは岩石の風化反応を実際に観測することができた。降雨が観測された日の数日以内に,雨水と,岩石およびMgOと接触した溶液を採取したところ,固体試料と接触することでpHが雨水よりも上昇する傾向があり,CO2が溶存種として大気中からトラップされていることが示唆された。pHは特にMgOの通水液で最も高く(~9),次いで蛇紋岩(~8),かんらん岩と佐渡の玄武岩(~7)であり,溶解反応によって通水液の溶存Mg濃度が高くなったことが要因のひとつであると考えられる。一方,岩石およびMgOは1,6,12か月後に回収し,固体分析を実施した。MgOの実験においては,粉末X線回折によって含水マグネシウム炭酸塩鉱物(dypingite)が同定され,赤外顕微鏡および走査電子顕微鏡ではMgO粒子表面の一部にdypingiteが生成している様子が観察できた。
このように本研究では地表における岩石の風化とCO2の吸収や固定に関して,屋外における長期間のデータを取得することに成功したが,12か月後に回収した固体試料中には未反応物質が多く残存しているため,引き続きモニタリングを継続するとともに,今後は岩石の風化反応やCO2鉱物化反応をより促進する実験を検討していく予定である。
