日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] 歴史学×地球惑星科学

2024年5月30日(木) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:加納 靖之(東京大学地震研究所)、芳村 圭(東京大学生産技術研究所)、岩橋 清美(國學院大學)、玉澤 春史(東京大学生産技術研究所)

17:15 〜 18:45

[MIS17-P12] 「詳細率」と「重複率」を用いた日記天気記録と日照時間との対応関係の検討

*庄 建治朗1、池田 由實2市野 美夏3平野 淳平4増田 耕一5北本 朝展3,6 (1.名古屋工業大学、2.池田学園池田⾼等学校、3.⼈⽂学オープンデータ共同利⽤センター、4.帝京大学、5.⽴正大学、6.国⽴情報学研究所)

キーワード:日記天気記録、古気候代替資料、定量化、詳細率、重複率、日照時間

古日記の天気記録は、京都周辺地域では11世紀頃まで遡ることができ、18世紀以降になると日本各地で多数の連続した記録を得ることができる。日単位ないしそれ以上の古気候プロキシとしては格段に⾼い時間分解能を持ち、とりわけ近世日本の気候復元に広く⽤いられている。しかし、その記述内容は定性的かつ主観的で、そこから降水量等の客観的数値を推定することには課題がある。本研究では、明治・大正期の測器による気象観測データと照合可能な時代の古日記記録を⽤いて、日記天気記録の持つ気象・気候に関する情報を最大限に引き出し、定性的な天気記述を定量的な気象・気候変数に変換する手法の開発に取り組んでいる。
これまで、日記天気記録の客観性を高め、定量的な情報を取り出すための指標として、「詳細率」と「重複率」を定義し、その有用性について検討してきた。「詳細率」は、対象期間における天気記録の総日数に占める、詳細な天気記録(すなわち、1日の天気を 「晴」「雨」など1語で表すのではなく、日内の天気変化や現象の規模・強度などに関する情報を含む天気記録)の日数の割合であり、日記に降水が記録される閾値と⾼い負相関を有することが確かめられている(庄ほか,2017)。この関係を⽤いることにより、日記による降水記録の閾値の違いを補正し、例えば閾値を1mmに変換した降水日数を異なる日記間で比較することも可能となる。また「重複率」は、例えば「降水あり」と「降水なし」、「晴」と「曇」など、日単位の天気記録から何らかの基準により2つの天気カテゴリーを抽出し、気象観測データと対応させた場合、それぞれの天気カテゴリーに対する気象要素の相対度数分布が重なり合う部分の面積で定義され、この数値が小さい(0に近い)ほど天気カテゴリーと気象要素との対応が良く、大きい(1に近い)ほど対応が悪いことを表す。この指標を用い、時間帯別の降水量および雲量のデータと比較することにより、日記の「降水あり」と「降水なし」の記録は主に昼間の状況を反映しているが夜間の状況も一定程度反映していることや、「晴」と「曇」の記録は昼間の雲量との対応が良く夜間の雲量はほとんど反映していないこと等が明らかとなった。
本発表では、主に日照時間(あるいは日照率)との対応関係に着目し、「晴」「曇」「雨」等の天気記録との対応の程度やその季節・日記による違い、日照時間を推定した場合の精度や時間分解能について、近畿および東京周辺で収集した10程度の日記天気記録を用いて検討する。