17:15 〜 18:45
[MZZ46-P05] ジオパークにおける探究学習活動とその効果(その2)―鳥海山・飛島ジオパーク内の遊佐中学校の例―
キーワード:探究学習活動、鳥海山・飛島ジオパーク、遊佐町立遊佐中学校
ジオパークエリア内では、ジオパークのサイトを活用した学習活動が精力的に実施されており、少しずつその教育効果を検証する事例も増えてきている。昨年度、発表者は鳥海山・飛島ジオパークの構成自治体の一つである山形県飽海郡遊佐町の町立遊佐中学校(以降、遊佐中)で実施された、ジオパークのサイトを活用した探究学習活動の事例とその効果を検証した事例を発表した(JpGU2023 ジオパークセッション)。今回は、昨年度に引き続いて実施された同校での探究学習の事例とその効果を紹介する。また、昨年度の実施例を踏まえ、より効果的な探究学習活動を行うための方策を議論する。
2023年度、遊佐中では、4月から12月まで1年生の総合の時間をほぼ毎回「ジオパークのサイトを用いた地域探究」に充てた。4月から5月にかけては、(一社)鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会(以下、ジオ協)の研究員やジオ協が認定する学習支援員およびジオガイドが、鳥海山・飛島ジオパークのサイトに関する講話を提供した。6月1日と2日にはスクールバスを用いてフィールドワークを行い、学習支援員や認定ジオガイドが現地でサイトの見どころを紹介した。座学とフィールドワークで得た情報をもとに、7月には生徒たちは班を作り、探究活動を行うサイトとテーマの選定を始めた。9月からテーマを解き明かすための仮説とそれを検証する方法を決定し、10月末には2度目のフィールドワークを行った。11月のクラス発表で全体から選出した3つの発表班が、12月にジオ協が主催した「学習研究発表会」の場で、一般市民や他地域の小学生に成果を発表した。昨年度との主な違いは、見学するサイトを遊佐町内に限定した点、10月末に2度目のフィールドワークを実施した点、そして、クラスの垣根を取り払い、課題ごとに生徒たちを班に振り分ける方法で探究活動に取り組んだ点である。
昨年度と同様、探究学習活動を始める前の4月と終了後の12月に、生徒たちに同じアンケート(藤岡・他(2023)を一部改変)を課し、それらを比較することで、探究学習活動が生徒に与えた効果や影響を検証した。予察的な結果では、「ジオパーク学習に興味がある」「ジオパークプログラムが何かを(何とか)説明できる」「価値がある」「ジオパーク学習に満足している」「ジオパーク学習は楽しい」と回答する生徒は増加した。その一方で、「ジオパーク学習は難しい」と感じた生徒も増加したが、「鳥海山・飛島ジオパークについてもっと知りたい」という生徒の数は減少した。「ジオパーク学習に興味がある」と「価値がある」と回答した生徒の数が増加したのは、昨年度とは異なる結果である。特に「価値がある」「ジオパーク学習は楽しい」という生徒の割合の増加率は昨年度よりも有意に高くなった。その一方で、「ジオパーク学習は難しい」と回答した生徒の増加率も、昨年度に比べて有意に高くなったが、「鳥海山・飛島ジオパークについてもっと知りたい」という生徒の減少率は、昨年度よりも低くなった。
アンケート結果を比較した限りでは、今年度の生徒の方が、探究学習活動を通じて地域への関心を高め、楽しみながら探究活動に取り組んだこと、そしてその結果、学習活動に満足し、地域を学ぶことに価値を見出したと言える。この理由は、フィールドワークを2回実施することで、生徒たちの探究学習への関心を継続させた点や、生徒たちが自らが取ったデータを用いて課題を考察できた点、さらには、クラスの垣根を取り払ったことで、気の合うグループで活動に取り組むことができた点が考えられる。その一方で、探究学習の授業は「難しい」にもかかわらず「楽しい」「満足した」と生徒が回答した理由については、生徒が「難しい」と感じる要因と「楽しい」と感じる要因が全く独立のものであり、「難しいからつまらない」「難しいから不満」という判断に至っていないことが予想される。
自らが課題を見つけ、その課題の解決に向けて立てた仮説を検証していくプロセスは、中学1年生には難しすぎる可能性が高い。本格的な探究活動に入る前に、生徒たちが思いつきそうな疑問を解き明かす問題解決型学習を複数回実施することで、探究テーマの選び方や課題解決の方法を学ぶ機会を提供することが大切である。
2023年度、遊佐中では、4月から12月まで1年生の総合の時間をほぼ毎回「ジオパークのサイトを用いた地域探究」に充てた。4月から5月にかけては、(一社)鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会(以下、ジオ協)の研究員やジオ協が認定する学習支援員およびジオガイドが、鳥海山・飛島ジオパークのサイトに関する講話を提供した。6月1日と2日にはスクールバスを用いてフィールドワークを行い、学習支援員や認定ジオガイドが現地でサイトの見どころを紹介した。座学とフィールドワークで得た情報をもとに、7月には生徒たちは班を作り、探究活動を行うサイトとテーマの選定を始めた。9月からテーマを解き明かすための仮説とそれを検証する方法を決定し、10月末には2度目のフィールドワークを行った。11月のクラス発表で全体から選出した3つの発表班が、12月にジオ協が主催した「学習研究発表会」の場で、一般市民や他地域の小学生に成果を発表した。昨年度との主な違いは、見学するサイトを遊佐町内に限定した点、10月末に2度目のフィールドワークを実施した点、そして、クラスの垣根を取り払い、課題ごとに生徒たちを班に振り分ける方法で探究活動に取り組んだ点である。
昨年度と同様、探究学習活動を始める前の4月と終了後の12月に、生徒たちに同じアンケート(藤岡・他(2023)を一部改変)を課し、それらを比較することで、探究学習活動が生徒に与えた効果や影響を検証した。予察的な結果では、「ジオパーク学習に興味がある」「ジオパークプログラムが何かを(何とか)説明できる」「価値がある」「ジオパーク学習に満足している」「ジオパーク学習は楽しい」と回答する生徒は増加した。その一方で、「ジオパーク学習は難しい」と感じた生徒も増加したが、「鳥海山・飛島ジオパークについてもっと知りたい」という生徒の数は減少した。「ジオパーク学習に興味がある」と「価値がある」と回答した生徒の数が増加したのは、昨年度とは異なる結果である。特に「価値がある」「ジオパーク学習は楽しい」という生徒の割合の増加率は昨年度よりも有意に高くなった。その一方で、「ジオパーク学習は難しい」と回答した生徒の増加率も、昨年度に比べて有意に高くなったが、「鳥海山・飛島ジオパークについてもっと知りたい」という生徒の減少率は、昨年度よりも低くなった。
アンケート結果を比較した限りでは、今年度の生徒の方が、探究学習活動を通じて地域への関心を高め、楽しみながら探究活動に取り組んだこと、そしてその結果、学習活動に満足し、地域を学ぶことに価値を見出したと言える。この理由は、フィールドワークを2回実施することで、生徒たちの探究学習への関心を継続させた点や、生徒たちが自らが取ったデータを用いて課題を考察できた点、さらには、クラスの垣根を取り払ったことで、気の合うグループで活動に取り組むことができた点が考えられる。その一方で、探究学習の授業は「難しい」にもかかわらず「楽しい」「満足した」と生徒が回答した理由については、生徒が「難しい」と感じる要因と「楽しい」と感じる要因が全く独立のものであり、「難しいからつまらない」「難しいから不満」という判断に至っていないことが予想される。
自らが課題を見つけ、その課題の解決に向けて立てた仮説を検証していくプロセスは、中学1年生には難しすぎる可能性が高い。本格的な探究活動に入る前に、生徒たちが思いつきそうな疑問を解き明かす問題解決型学習を複数回実施することで、探究テーマの選び方や課題解決の方法を学ぶ機会を提供することが大切である。