日本地球惑星科学連合2024年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球惑星科学系 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(文部科学省)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O08-P106] えっ、島が浮いている!?
~浮島現象の発生・観測条件と科学的原理~

*本田 琢磨1、徳丸 亮汰1、小林 瑞1、新宅 草太1、*米田 直人1、村上 聖真1、吉田 大暉1、西川 幸輝1、橋本 直大1、堀田 舞衣1 (1.熊本県立宇土高等学校)

キーワード:下位蜃気楼、屈折、気温差、再現装置、観測点の高さ

1 背景・目的
蜃気楼の一種とされる不知火現象の研究を進める中で、浮島現象も蜃気楼であることを知った。そこで不知火より見やすい浮島を観測し、より浮いてみる浮島の発生・観測条件を知りたいと思い研究を始めた。すでに部活の先輩方が観測により浮島の発生と観測条件について考察されていた。よって今回は、以下の三つを目的とする。①自分たちも観測によってより浮いて見える浮島の発生・観測条件の確認を行う②再現実験からも浮島の条件を確認する③シミュレーションにより野外で観測される浮島現象の光路を可視化し、科学的に浮島現象がみえる仕組みを説明する
2 研究内容
A 野外観測
宇城市不知火町永尾から大島を対象に海岸と観望所で観測を行った。観測では①夏と冬の違い、②朝と昼の違い、③海岸と観望所の違い、④距離による違い、この4つを比較した。今回観測から浮島の発生・観測条件は①冬(12、1月)の早朝、②海面に近い場所(満潮時の海岸)、③対象まで10km程度ということが分かった。
B 浮島の発生・観測条件
シリコンラバーヒーターやカメラ温度調節器などを用いて浮島再現装置を作成し、室内で浮島現象を再現する。実験は①ヒーターの温度、②観測点の高さこの2つを変えて行った。実験から①ヒーターの温度が高いほど浮いて見える、②観測点の高さが低いほど浮いて見えるということが分かった。しかし、ヒーターの温度が高くても観測点の高さが高かったらあまり浮いて見えなかった。このことから、観測点の高さが大きく影響していることがわかり、実際の観測でもこのことを確認することができた。
C 浮島の発生原理
ヒーターの温度によるヒーター上の気温の鉛直分布を高さ1mまで計測した。すると、ヒーターの温度が高くなると気温変化する空気層の厚さが厚くなった。温度変化による密度差で光は屈折するため、蜃気楼が発生する。
D シミュレーションによる説明
実際に観測した状況を再現するために温度プロファイルを作成し、独自のシミュレーションを用いて光路計算を行った。すると、見るものの高さによって見え方が異なることわかり、また、観測点の高さが低いほど消失部・反転部が拡大し、より島が浮いて見えることが分かった。
E 光が屈折する範囲
浮島の再現実験において、ヒーターは長ければより浮いて見えるのか、それとも一部だけで十分なのか。そこで、装置でヒーターの位置、観測点の高さを変えて浮き具合を調べた。実験から①下位蜃気楼の観測には対象付近の気温差が重要であること、②観測点の高さが高くなると光が屈折する場所が対象側に近づくということが分かった。
3 まとめ
野外観測や再現実験、シミュレーションにより、先輩方が考えた浮島の発生・観測の条件が正しいことを確かめることができた。室内で再現実験を行い、野外観測では排除が難しい地球の丸い効果を除くことで、光の屈折だけでの浮き具合を調べることができた。また、下位蜃気楼の観測には対象付近の気温差が重要であることが分かった。
浮島の発生条件(浮島の観測と今回のモデル実験より):①気温と海水温の温度差がある…12~1月の早朝、②観測点の高さが低い…満潮時の海岸、③適当な距離がある…10km程度
[主な参考文献]
川合秀明、北村裕二,柴田清孝.下位蜃気楼の光路計算-マダガスカルで見た蜃気楼-,2020
日本蜃気楼協議会 蜃気楼のすべて! 草思社, 2016