日本地球惑星科学連合2024年大会

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[J] ポスター発表

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[O-08] 高校生ポスター発表

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球惑星科学系 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(文部科学省)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O08-P55] 段差を浸食から守るためには

*相曾 雄斗1、呉 暁峰1、長谷川 天哉1、水谷 茉白1、伊勢 惟人1、勝谷 恵伍1 (1.浜松学芸高等学校)

キーワード:侵食、堆積、地理

静岡県立森林公園内では、流路上に豪雨にともなう滝状の段差形成や表土のリル浸食が確認でき、浸食と段差の著しい後退がみられるようになった。それにより、下流部にあるうぐいす谷親水池に侵食された土砂が大量に堆積し、貴重な両生類の生息場所が失われたり、外来種ナガバオモダカなどが繁茂したりするなど環境攪乱が問題となっている。3つの調査・実験・シミュレーションにより土砂流出メカニズムや土砂流出量の推定することで、段差後退および土砂流出量の減少を防止する方策の立案を目指した。1つめに野外調査では、5月14日時点での段差口を基準として、杭を5m×10mの範囲で設置して目印とした。段差上部の形状および流速を2023年5月14日から2024年4月7日まで1か月に1回計測した。調査期間をとおして、はじめに深さ(鉛直)方向へ侵食が進み、次に幅(水平)方向へ侵食が進む順番が確認できた。さらに、調査期間中にステップは約2.5m後退し、川幅も約1m広がった。2つめの水路実験で、は現地調査をもとに作製した180cm× 15cmの段差模型内に、粘土を打設した。次に、下流端から33cmの区間に高低差5cm勾配角45°のステップを施し、上流端から1回当たり15Lの流量の給水、毎分60gの給砂を行った。実験Ⅰでは勾配角15°、実験Ⅱでは勾配角30°、実験Ⅲでは、勾配角15°で模型下端から45cmの地点に治山ダムを模した爪楊枝(太さ約2mm)を間隔3mm、高さ2.5cmで並べた。また、実験Ⅳでは勾配角15°で実験Ⅲに追加で模型下端から60cmの地点に高さ1.0cmの爪楊枝を並べた。実験Ⅰでは、上部に生じた窪みが新たなステップとなり、後退による崩壊で1つの滝となった。ステップは54cm後退し、滝つぼは11.7cmと最も深くなった。実験Ⅱでは、実験Ⅰ同様窪みが1つの滝となった。45cm後退し、滝つぼは6.50cmとなった。滝つぼでの鉛直方向の浸食速度は低下したのは、斜面の勾配角の増大により、ステップでの水や珪砂の飛距離が大きくなり、斜面に平行な速度成分が増加し、斜面に垂直な速度成分が減少したことによるものであると考えられる。実験Ⅲでは、ステップの後退はなく、滝つぼは10.1cmであった。なお、治山ダムによって、遡上方向に侵食する速度は著しく低下した。治山ダムに堆積した珪砂下の伏流による水流の衝撃軽減や、治山ダムによる珪砂の拡散のよる衝撃分散が考えられる。実験Ⅳでは、ステップの後退はなく、滝つぼは8.3cmであった。3つめに、河川シミュレーションソフトウェアiRICを用いて、シミュレーションによる数値計算を行った。砂利が流れる部分のマニング租度を大きくして、下流へ向かうほど粗度が小さくなるようにした場合と、一般的な値のものとで比較した。段差上部の粗度が下部の粗度よりも大きいものが、一般的なダムの粗度である。また、マニング粗度係数とは、河川の底面の流れに対する抵抗値である。シミュレーションでは、滝壺が形成されるようすが確認できた。マニング粗度を小さくした場合、ほとんど地面が削られず、大きくした場合、はじめに深さ方向へ侵食が進み、次に幅方向へ侵食が進むという順番を再現できていた。