日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC27] 火山防災の基礎と応用

2024年5月31日(金) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

17:15 〜 18:45

[SVC27-P02] 富士山における火山防災教育教材の開発 -授業実践とその効果-

*吉本 充宏1久保 智弘1、藤巻 桂吾2亀谷 伸子1本多 亮1、林 龍樹1、武井 雅文1、三ッ井 聡美3横山 光4 (1.山梨県富士山科学研究所、2.富士河口湖町立教育センター、3.森林研究・整備機構 森林総合研究所、4.北翔大学)

キーワード:富士山、噴火、避難、教材、実験

富士山噴火に伴う避難は,火口の出現する場所や発生する火山現象によって,避難の経路やタイミングが異なる.そのため,的確な避難行動をとるためには,科学的知識に基づいた行動が重要となる.そこで,本研究では,過去の富士山の噴火で頻繁に起こっている溶岩流からの避難を理解するための授業案等を含む実験教材を開発し,授業実践をし,効果の検証を行った.
実験授業の授業案は,授業の「目標」と「ねらい」を設定し,つかむ,調べる,まとめる,の流れとし,それぞれについて「児童の行動」「指導上の留意点」「備考」に分けて具体的に記載した.また,授業で使用するパワーポイント,児童たちのワークプリント,も併せて用意した.溶岩流および噴煙実験教材を用いた授業実践を2022年11月に富士河口湖町の小学校6年生を対象に,当該校の教員と研究者のTT(Team Teaching)で実施した.その後,2023年6月に富士河口湖町の教員対象にアンケートを実施し授業案等教材の改善を行った.実験装置の取扱説明書,実験の解説動画も併せて用意し町の教員が実験前に自主研修を行えるようにした.改良した溶岩流教材を使って2023年10月と11月に富士河口湖町の2つの小学校6年生を対象に実施した.対象校は,2022年に実施した小学校と新しく1校を選定して実施した.2023年の授業は2022年と異なり,授業のほとんどを当該校の教員により実施した.
授業前後の主体的に行動する態度の育成に関する教育効果を評価するために,小学校学習指導要領の評価の3観点に即し, a)現象を理解する基礎知識(知識・技能),b)危機を予測し,避難行動を選択できる能力(思考・判断・表現),c)日常的な備えや防災活動への意欲を持つこと(主体的に学習に取り組む態度),という3つの軸を設定し,関連する内容の2択または3択のクイズを合計15問提示した. 今年度の授業は,溶岩流に特化したため,溶岩流に対する項目では学習効果が得られ,火山灰に関する項目では正答率の変化は見られなかった.また「 c.日常的な備えや防災活動への意欲」は前年度と異なり,意欲の向上が見られ,概ね学習の効果があったと言える.