17:15 〜 18:45
[U15-P02] M7.6の地震を含む2020年12月からの令和6年能登半島地震の地震活動
キーワード:令和6年能登半島地震、波形相関DD法、非定常ETASモデル、地震発生確率
はじめに
能登半島では北東部で2020年12月から活発な地震活動が約3年間継続した後、2024年1月1日に M7.6の地震が発生した。本発表では、これらの一連の地震活動の時空間分布の詳細や地震活動モデルを用いた解析結果等を報告する。
方法・データ
地震活動の詳細把握には、波形相関DD法による再決定震源を用いた。M6.5及びM7.6の地震については地震波形を用いた断層すべりモデルの解析を行った。地震活動モデル解析では、非定常ETAS(Kumazawa and Ogata, 2013)の背景地震活動度μ(t)の解析や地震発生確率の算出を行った。
地震活動
(1)2018年から2023年まで
地震活動は能登半島北東部の約30㎞四方の範囲で概ね東西南北の4領域に分かれて分布している。2020年11月末に、南領域で震源が深部へ急に移動するタイミングで、μ(t)が高くなり始めると共に地殻変動が始まった。その後、西、北、東領域でも活発化し、南東傾斜の複数のクラスター内において浅部へのゆっくりとした震源移動が見られた。
2023年5月5日M6.5発生後は、南東傾斜の震源分布が浅部(沖合)へ拡大した。M6.5の主な断層すべり域は北、東領域の浅部側に分布する。M6.5発生後も北、東領域ではμ(t)は高い状態で継続した。これらの一連の活動について、地震調査委員会(2023)は、流体の移動が関与している可能性を指摘している。μ(t)が流体による断層強度の弱化や回復等の過程を示すと考えれば、M6.5発生後もμ(t)が高い状態であることは、M6.5発生後の活動についても、引き続き流体が関与している可能性を示唆している。
詳細は岩切・他(2023、地震学会S22-04)を参照。
(2)2024年1月1日M7.6発生後
M7.6地震時断層すべりは、2023年までの地震活動域から開始してバイラテラルに広がり、約40秒間継続した。M7.6発生後は北東-南西に延びる150km程度の範囲に地震活動域が広がり(気象庁、2024年1月地震・火山月報)、震源分布は主に南東傾斜であるが、活動域北東部では北西傾斜であった。これらの配置や形状は「日本海地震・津波調査プロジェクト」の令和2年度成果報告書の断層モデルと概ね整合する。能登半島北東部におけるM7.6発生後の南東傾斜の震源分布は、2023年までの震源分布と同じ深さまたはより浅いところに分布する。活動域南西部の震源分布は、様々な傾斜方向のクラスターがみられる。
一方、M7.6発生後の活動域から約40㎞以上離れた3か所で、M7.6発生後に最大M3~4の地震活動が一時的に活発になり、そのうち1か所は従来から微小地震活動がある跡津川断層帯付近である。M7.6の断層すべりモデルをソースとして、レシーバ断層面をM7.6のCMT解の節面と仮定した深さ10㎞におけるΔCFFの空間分布を見ると、活動域周辺の北東と南西で10kPa以上の促進センスである。活動域周辺における過去地震のメカニズムをレシーバとしたΔCFFは、横ずれ成分を主体とする跡津川断層帯のように、メカニズムや発生場所によっては促進センスが分布する。
確率に基づく地震活動の見通し
気象庁ではM7.6発生直後から、地震本部報告書(2016)に従って、過去事例や地震発生確率(3日間の発生確率)に基づく地震活動の見通しを踏まえた防災上の留意事項を呼びかけた。M7.6発生から1週間は過去事例に基づき最初の大きな地震と同程度の地震発生について呼びかけ、1週間以降はM7.6発生以降の確率及びM7.6発生前の平常時の確率に基づき呼びかけた。
確率の算出では、大森・宇津公式とGR則を組み合わせた評価方法を使用した。呼びかけ対象の震度に対応する確率を計算するためのMと震度の対応関係は、震源域とその周辺で発生した地震のMと観測震度の回帰式を用いた。平常時の確率の算出では、1919年~2023年の地震発生回数を用いてポアソン過程により計算した。
確率に基づく呼びかけは、震度5弱以上の地震発生が1か月間に1回程度に相当する確率値10%を超える期間では約1週間毎に行った。例えば2月9日時点の呼びかけは,「最大震度5弱程度以上の地震の発生する可能性は依然として高い状態です。発生する可能性が高い期間は今後1~2週間程度です。地震発生確率は1月1日のM7.6の地震発生当初に比べて1/8程度、平常時の40倍程度となっています。」である。確率値10%を下回った2月末には、定期的な呼びかけを終了した。また、上記に加えて、地震活動は3年以上続いていることから、一連の地震活動は当分の間続くという見通しも呼びかけた。
謝辞
気象庁一元化震源、国土地理院GNSS観測データを使用しました。非定常ETAS解析プログラムを熊澤貴雄博士より提供いただきました。
能登半島では北東部で2020年12月から活発な地震活動が約3年間継続した後、2024年1月1日に M7.6の地震が発生した。本発表では、これらの一連の地震活動の時空間分布の詳細や地震活動モデルを用いた解析結果等を報告する。
方法・データ
地震活動の詳細把握には、波形相関DD法による再決定震源を用いた。M6.5及びM7.6の地震については地震波形を用いた断層すべりモデルの解析を行った。地震活動モデル解析では、非定常ETAS(Kumazawa and Ogata, 2013)の背景地震活動度μ(t)の解析や地震発生確率の算出を行った。
地震活動
(1)2018年から2023年まで
地震活動は能登半島北東部の約30㎞四方の範囲で概ね東西南北の4領域に分かれて分布している。2020年11月末に、南領域で震源が深部へ急に移動するタイミングで、μ(t)が高くなり始めると共に地殻変動が始まった。その後、西、北、東領域でも活発化し、南東傾斜の複数のクラスター内において浅部へのゆっくりとした震源移動が見られた。
2023年5月5日M6.5発生後は、南東傾斜の震源分布が浅部(沖合)へ拡大した。M6.5の主な断層すべり域は北、東領域の浅部側に分布する。M6.5発生後も北、東領域ではμ(t)は高い状態で継続した。これらの一連の活動について、地震調査委員会(2023)は、流体の移動が関与している可能性を指摘している。μ(t)が流体による断層強度の弱化や回復等の過程を示すと考えれば、M6.5発生後もμ(t)が高い状態であることは、M6.5発生後の活動についても、引き続き流体が関与している可能性を示唆している。
詳細は岩切・他(2023、地震学会S22-04)を参照。
(2)2024年1月1日M7.6発生後
M7.6地震時断層すべりは、2023年までの地震活動域から開始してバイラテラルに広がり、約40秒間継続した。M7.6発生後は北東-南西に延びる150km程度の範囲に地震活動域が広がり(気象庁、2024年1月地震・火山月報)、震源分布は主に南東傾斜であるが、活動域北東部では北西傾斜であった。これらの配置や形状は「日本海地震・津波調査プロジェクト」の令和2年度成果報告書の断層モデルと概ね整合する。能登半島北東部におけるM7.6発生後の南東傾斜の震源分布は、2023年までの震源分布と同じ深さまたはより浅いところに分布する。活動域南西部の震源分布は、様々な傾斜方向のクラスターがみられる。
一方、M7.6発生後の活動域から約40㎞以上離れた3か所で、M7.6発生後に最大M3~4の地震活動が一時的に活発になり、そのうち1か所は従来から微小地震活動がある跡津川断層帯付近である。M7.6の断層すべりモデルをソースとして、レシーバ断層面をM7.6のCMT解の節面と仮定した深さ10㎞におけるΔCFFの空間分布を見ると、活動域周辺の北東と南西で10kPa以上の促進センスである。活動域周辺における過去地震のメカニズムをレシーバとしたΔCFFは、横ずれ成分を主体とする跡津川断層帯のように、メカニズムや発生場所によっては促進センスが分布する。
確率に基づく地震活動の見通し
気象庁ではM7.6発生直後から、地震本部報告書(2016)に従って、過去事例や地震発生確率(3日間の発生確率)に基づく地震活動の見通しを踏まえた防災上の留意事項を呼びかけた。M7.6発生から1週間は過去事例に基づき最初の大きな地震と同程度の地震発生について呼びかけ、1週間以降はM7.6発生以降の確率及びM7.6発生前の平常時の確率に基づき呼びかけた。
確率の算出では、大森・宇津公式とGR則を組み合わせた評価方法を使用した。呼びかけ対象の震度に対応する確率を計算するためのMと震度の対応関係は、震源域とその周辺で発生した地震のMと観測震度の回帰式を用いた。平常時の確率の算出では、1919年~2023年の地震発生回数を用いてポアソン過程により計算した。
確率に基づく呼びかけは、震度5弱以上の地震発生が1か月間に1回程度に相当する確率値10%を超える期間では約1週間毎に行った。例えば2月9日時点の呼びかけは,「最大震度5弱程度以上の地震の発生する可能性は依然として高い状態です。発生する可能性が高い期間は今後1~2週間程度です。地震発生確率は1月1日のM7.6の地震発生当初に比べて1/8程度、平常時の40倍程度となっています。」である。確率値10%を下回った2月末には、定期的な呼びかけを終了した。また、上記に加えて、地震活動は3年以上続いていることから、一連の地震活動は当分の間続くという見通しも呼びかけた。
謝辞
気象庁一元化震源、国土地理院GNSS観測データを使用しました。非定常ETAS解析プログラムを熊澤貴雄博士より提供いただきました。