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[U15-P104] 令和6年能登半島地震における液状化地点分布と特徴
キーワード:液状化、強震動、微地形区分
1.はじめに
2024年1月1日に発生した能登半島地震では、北陸地方(福井・石川・富山・新潟)の広範囲で液状化が発生した。液状化は同一地点・地域で繰り返し発生する災害であり、液状化発生地点を調査・把握することは、将来の液状化被害を予測および軽減する上で極めて重要である。筆者は、液状化被害の即時推定の高精度化を目指し、これまでに平成23年東北地方太平洋沖地震をはじめとして、液状化発生地点の情報を可能な限り収集し、その地点の地盤・地形情報と、推定される揺れの強さ(震度等)との関係を検討した上で、液状化発生確率の検討を行なってきている。今回の能登半島地震においても、液状化被害地点のデータアーカイブの作成、液状化ハザードマップおよび液状化発生確率の高度化の検討を行うことを目的として、液状化被害調査を実施した。
2.液状化被害地点の調査
調査は、2024年1月6日~3月22日のうちの19日間(令和6年3月末時点)で、上記4県において実施した。今回の調査において現時点における液状化が発生した一番震源から遠い地点は、西(南西)側は福井県坂井市の福井港、東(北東)側は新潟市中央区新潟西港周辺である。両地点とも震央から約170~180km程度離れており、約350kmにおよぶ広範囲で確認されている。現地調査を効率的に実施するための準備として、自治体の地震被害情報やWEBおよびSNSに掲載された液状化関連情報等を集約し、過去の液状化履歴情報や防災科研の地震ハザードステーション(J-SHIS)で公開されている微地形区分、国土地理院の航空写真等から読み取ることができる噴砂等の液状化が疑われる地点、および、その他参考となる情報を、調査用ツール(未公開)にこれらの統合情報を構築した上で、現地調査を行った。
3.液状化地点の分布の特徴
液状化被害地点の調査結果を約250mメッシュ(4分の1地域メッシュ)に反映した結果の一部(石川・富山)を微地形区分および推計震度分布と比較した図を図1に示す。現時点では、4県32市町村で被害が確認され、総計2013箇所(メッシュ数)となっている。県別では、石川県が最も多く1423箇所、富山県356箇所、新潟県219箇所、福井県15箇所となっている。各地域の特徴を簡潔に以下に示す。
・金沢市・内灘町・かほく市(石川県加賀地方)
主に海岸部の埋立地(港湾)と砂丘の後背低地部(砂丘や砂丘に隣接する河北潟周辺の干拓地・三角州・海岸低地等)で被害が確認されている。特に砂丘の後背低地部においては噴砂量も多く、住宅が大きく傾いたり沈下したりする等の甚大な被害となっている。その中でも、側方流動を伴った大規模な被害は、内灘町の西荒屋地区やかほく市大崎地区で顕著であることが確認できる。
・新潟市(主に西区)
信濃川の河口近くにあるこの地域では、旧河道(旧池沼)や自然堤防が発達しており、この地域の被害の半数を占める。また、①の地域と同様に海岸部には砂丘が発達しており、砂丘の後背低地部においては側方流動を伴った液状化被害が、寺尾・坂井輪・大野地区等で確認できる。
・氷見市・高岡市・射水市(富山県西部地域)
富山湾沿岸のこれらの地域では、港湾部に大規模な埋立地(富山新港・伏木港等)が存在しており、そのほとんどで液状化被害が確認できる。また、高岡・射水地区の間には庄川・小矢部川があり、その旧河道・自然堤防に液状化被害地点が確認できる。氷見市は海岸部の埋立地や砂州で被害が確認されているが、市内中心部を流れる上庄川流域の住宅地や田畑にも顕著な被害が確認できる。
・輪島市・珠洲市・志賀町・七尾市(石川県能登地域)
能登半島北部は山地が多く、液状化が発生しやすい低地は少ないが、低地のほぼ全域において震度が6弱~7と大きく、液状化しやすい埋立地や砂丘、砂州、三角州・海岸低地だけでなく、後背湿地や谷底低地等の微地形区分の多くで液状化被害が見られる地域である。なお、この4市町に能都町・穴水町の6市町で1000箇所以上の被害を確認できる。
また、石川県加賀地域、新潟市、富山県西部の震度は、そのほとんどが5弱~5強程度であり、これまでの地震の液状化被害と比べると比較的小さな震度で大規模な液状化が発生したといえる。また、これらの地域で発生した液状化地点は、1964年の新潟地震や、1993年および2007年能登半島地震、1893年濃尾地震等の既往の液状化被害が確認された地震の液状化地点と概ね同じ場所で確認されていることから、そのほとんどが再液状化したものと考えられる。
4.まとめ
今回の能登半島地震の液状化被害の大きな特徴として、砂丘の陸側の後背低地部において推計震度5弱~5強程度で大規模な側方流動を伴う液状化現象が確認されたことである。特に金沢市、内灘町、かほく市および新潟市西区(寺尾・坂井輪・大野地区)にかけての砂丘の後背低地部においては、噴砂量も多く住宅が大きく傾いたり沈下したりする等の甚大な被害を確認した。震度が比較的小さくても被害が大きかった理由としては、例えば、熊本地震(M7.3)や兵庫県南部地震(M7.3)と比べると、マグニチュードが大きな地震(M7.6)であったため、地震動の継続時間の長さが影響した可能性が考えられる。今後、液状化地点情報をまとめ、液状化ハザードマップおよび液状化発生率の高度化の検討を進めるとともに、可能な限り早い時期に液状化被害地点情報(250mメッシュ)を公開する予定である。
2024年1月1日に発生した能登半島地震では、北陸地方(福井・石川・富山・新潟)の広範囲で液状化が発生した。液状化は同一地点・地域で繰り返し発生する災害であり、液状化発生地点を調査・把握することは、将来の液状化被害を予測および軽減する上で極めて重要である。筆者は、液状化被害の即時推定の高精度化を目指し、これまでに平成23年東北地方太平洋沖地震をはじめとして、液状化発生地点の情報を可能な限り収集し、その地点の地盤・地形情報と、推定される揺れの強さ(震度等)との関係を検討した上で、液状化発生確率の検討を行なってきている。今回の能登半島地震においても、液状化被害地点のデータアーカイブの作成、液状化ハザードマップおよび液状化発生確率の高度化の検討を行うことを目的として、液状化被害調査を実施した。
2.液状化被害地点の調査
調査は、2024年1月6日~3月22日のうちの19日間(令和6年3月末時点)で、上記4県において実施した。今回の調査において現時点における液状化が発生した一番震源から遠い地点は、西(南西)側は福井県坂井市の福井港、東(北東)側は新潟市中央区新潟西港周辺である。両地点とも震央から約170~180km程度離れており、約350kmにおよぶ広範囲で確認されている。現地調査を効率的に実施するための準備として、自治体の地震被害情報やWEBおよびSNSに掲載された液状化関連情報等を集約し、過去の液状化履歴情報や防災科研の地震ハザードステーション(J-SHIS)で公開されている微地形区分、国土地理院の航空写真等から読み取ることができる噴砂等の液状化が疑われる地点、および、その他参考となる情報を、調査用ツール(未公開)にこれらの統合情報を構築した上で、現地調査を行った。
3.液状化地点の分布の特徴
液状化被害地点の調査結果を約250mメッシュ(4分の1地域メッシュ)に反映した結果の一部(石川・富山)を微地形区分および推計震度分布と比較した図を図1に示す。現時点では、4県32市町村で被害が確認され、総計2013箇所(メッシュ数)となっている。県別では、石川県が最も多く1423箇所、富山県356箇所、新潟県219箇所、福井県15箇所となっている。各地域の特徴を簡潔に以下に示す。
・金沢市・内灘町・かほく市(石川県加賀地方)
主に海岸部の埋立地(港湾)と砂丘の後背低地部(砂丘や砂丘に隣接する河北潟周辺の干拓地・三角州・海岸低地等)で被害が確認されている。特に砂丘の後背低地部においては噴砂量も多く、住宅が大きく傾いたり沈下したりする等の甚大な被害となっている。その中でも、側方流動を伴った大規模な被害は、内灘町の西荒屋地区やかほく市大崎地区で顕著であることが確認できる。
・新潟市(主に西区)
信濃川の河口近くにあるこの地域では、旧河道(旧池沼)や自然堤防が発達しており、この地域の被害の半数を占める。また、①の地域と同様に海岸部には砂丘が発達しており、砂丘の後背低地部においては側方流動を伴った液状化被害が、寺尾・坂井輪・大野地区等で確認できる。
・氷見市・高岡市・射水市(富山県西部地域)
富山湾沿岸のこれらの地域では、港湾部に大規模な埋立地(富山新港・伏木港等)が存在しており、そのほとんどで液状化被害が確認できる。また、高岡・射水地区の間には庄川・小矢部川があり、その旧河道・自然堤防に液状化被害地点が確認できる。氷見市は海岸部の埋立地や砂州で被害が確認されているが、市内中心部を流れる上庄川流域の住宅地や田畑にも顕著な被害が確認できる。
・輪島市・珠洲市・志賀町・七尾市(石川県能登地域)
能登半島北部は山地が多く、液状化が発生しやすい低地は少ないが、低地のほぼ全域において震度が6弱~7と大きく、液状化しやすい埋立地や砂丘、砂州、三角州・海岸低地だけでなく、後背湿地や谷底低地等の微地形区分の多くで液状化被害が見られる地域である。なお、この4市町に能都町・穴水町の6市町で1000箇所以上の被害を確認できる。
また、石川県加賀地域、新潟市、富山県西部の震度は、そのほとんどが5弱~5強程度であり、これまでの地震の液状化被害と比べると比較的小さな震度で大規模な液状化が発生したといえる。また、これらの地域で発生した液状化地点は、1964年の新潟地震や、1993年および2007年能登半島地震、1893年濃尾地震等の既往の液状化被害が確認された地震の液状化地点と概ね同じ場所で確認されていることから、そのほとんどが再液状化したものと考えられる。
4.まとめ
今回の能登半島地震の液状化被害の大きな特徴として、砂丘の陸側の後背低地部において推計震度5弱~5強程度で大規模な側方流動を伴う液状化現象が確認されたことである。特に金沢市、内灘町、かほく市および新潟市西区(寺尾・坂井輪・大野地区)にかけての砂丘の後背低地部においては、噴砂量も多く住宅が大きく傾いたり沈下したりする等の甚大な被害を確認した。震度が比較的小さくても被害が大きかった理由としては、例えば、熊本地震(M7.3)や兵庫県南部地震(M7.3)と比べると、マグニチュードが大きな地震(M7.6)であったため、地震動の継続時間の長さが影響した可能性が考えられる。今後、液状化地点情報をまとめ、液状化ハザードマップおよび液状化発生率の高度化の検討を進めるとともに、可能な限り早い時期に液状化被害地点情報(250mメッシュ)を公開する予定である。