17:15 〜 18:45
[U15-P38] 関西地震観測研究協議会の強震観測網で観測された令和6年能登半島地震の長周期地震動特性
キーワード:令和6年能登半島地震、強震観測、長周期地震動、大阪平野
2024年1月1日に発生した令和6年(2024年)能登半島地震(Mj7.6)では,関西に展開されている関西地震観測研究協議会の全観測点で地震動が捉えられ,大阪平野内の2観測点(FKS観測点,TTT観測点)と滋賀県草津市の観測点(YMD観測点)で震度4相当の揺れが観測された。観測速度波形より,大阪平野内では,比較的振幅が大きい揺れが長時間継続したことが確認されている。疑似速度応答スペクトルを利用して各観測点の卓越周期特性に着目すると,地盤の硬軟に関わらず,周期1~3秒付近に卓越が見られる。非定常スペクトル特性によれば,この卓越はS波部の地震動に対応する。硬質地盤上観測点では,これ以外に目立った卓越は見られない。大阪府北部にある北摂地域の2観測点(TYN観測点,SRK観測点)も,卓越周期の特性は硬質地盤上観測点と同様の傾向を示す。一方,北摂地域の南部に広がる大阪平野内の観測点では,既往の大地震と同様,周期5~6秒に卓越が見られる。非定常スペクトル特性によれば,この卓越はS波部以降の表面波(Love波)に対応している。これは,本地震により,大阪平野では(やや)長周期地震動が発達したことを示唆している。各観測点の地震動波形から計算された周期5~6秒付近の非定常スペクトルを震源距離でペーストアップすることで,この周期の波群が南方向へ伝播したことが確認できる。ただし,卓越周期付近の疑似速度応答スペクトルに着目すると,東大阪市にある2観測点(TTT観測点,MRG観測点)では水平2成分でほぼ同程度の大きさである一方,その南部にあるOCU観測点,SNM観測点,TDO観測点では,南北成分の方が東西成分より大きい傾向を示している。これは,伝播の方向が西向きに変化した可能性があることを示唆している。2018年6月18日に発生した大阪府北部を震源とする地震(Mj6.1)時,ほとんどの大阪平野観測点で長周期地震動の発生は確認されていないが,上述した3観測点(OCU観測点,SNM観測点,TDO観測点)では,周期5秒付近が卓越する後続波群が発生したことが確認されている。これらは,大阪平野では,場所によって長周期地震動の発達の過程に違いがあることを示唆している。