日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS09] 防災リテラシー

2025年5月26日(月) 09:00 〜 10:30 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:高橋 誠(名古屋大学大学院環境学研究科)、木村 玲欧(兵庫県立大学)、座長:高橋 誠(名古屋大学大学院環境学研究科)、木村 玲欧(兵庫県立大学)

10:00 〜 10:15

[HDS09-05] 避難先情報の提示による避難率変化の考察
−富山市中心部におけるマルチエージェントシミュレーションの適用−

*田中 利幸1井ノ口 宗成1 (1.富山大学)

キーワード:マルチエージェントシミュレーション、避難率、避難先情報、富山市

富山県は2015年の北陸新幹線開通を契機に観光客が増加してきた。しかし、コロナ禍によって観光客が減少した実態もある。追い打ちをかけるように、令和6年能登半島地震が発生し、富山市において史上初となる最大震度5強を観測した。富山市内にも住家被害、液状化被害が発生し、今後の観光客減少が危惧されている。
 あわせて、富山県にはインバウンド需要も高まっており、外国人観光客の来訪数が増加傾向にある。しかし、外国人観光客にとって、未知の土地での被災した際、避難先を把握できないために効果的、効率的な避難行動をとることができないと考えられる。避難情報を掲示することで確実な避難につながると考えると、どのように掲示する必要があるかについて言及しなければならない。
 そこで、本研究では、富山市内中心部においてマルチエージェントシミュレーションの適用により、情報掲示によって避難率の変化可能性を追求することとした。マルチエージェントシミュレーションでは、市販ソフトであるS4を援用した。また、道路ネットワークはOpenStreetMapを活用した。これは、全国で同様な課題が発生した際に、どの地域であっても適用できるようにするためである。
 マルチエージェントシミュレーションの実施においては、エージェントを富山の外国人宿泊者と位置づけ、近年の実際の宿泊者数に応じてエージェントを生成した。避難先としては、「稲荷公園・城址公園・県庁前公園・牛島公園」の4か所を選定した。エージェントは、富山市内でランダムな場所から生成されるが、無目的に移動させると目的地にたどり着かない可能性が極めて高くなるため、海から離れる程度の避難意識はあることを前提とした。これを、シミュレーションに反映させるため、富山市内中心部を4行8列の32ブロックに分割し、各ブロックから隣接するブロックへの移動確率を設定した。この移動確率は、山側(内陸部側)に移動する場合の確率を高く設定した。また、情報掲示板は1ブロックに1つを設置することを条件とした。この条件の下で、掲示板を設置しない場合のモデルに加え、8つのブロックまで設置した場合のモデルを設定し、合計9つのモデルを準備した。各モデルに対して10ケースのシミュレーションを実行し、一定時間経過後の避難達成率の平均を各モデルの結果とした。
 このシミュレーション結果を比較したところ、情報掲示板を増加させれば避難率も向上することが確認された。しかし、情報掲示板を1つ増加させた場合の避難率の向上度は均一ではなく、3つの情報掲示板を設置した場合が、もっとも効率的であることが確認された。逆に5つおよび6つの情報掲示板の設置は非効率であった。
 本研究では、ブロック単位で情報掲示板を設置する条件や、設置場所の選定をランダムで実施しているなど、十分な条件設定とは言いがたい点も含まれている。今後、これらの条件をより精緻化していくことで事象の再現率が高まると考えている。また、現地調査により実際に設置できる場所を選定した上でシミュレーションすることが望ましいと考えている。これにより、より現実的な解を見いだすことができると考えている。