14:30 〜 14:45
[MIS15-16] 東南極表層海底堆積物のBe同位体分布を基にしたCDWプロキシの評価と確立

キーワード:プロキシ、周極深層水、東南極、古海洋
南極氷床で生じている急速な氷床質量損失が,全球海面を上昇させる可能性があるとして問題視されている.海洋観測により,その原因は,南極表層水(Antarctic Surface Water:AASW)下に流れる温暖な周極深層水(Circumpolar Deep Water:CDW)が棚氷下にまで到達することによって生じる底面融解であると,明らかになりつつある.しかし,過去数十年間の観測データのみでは,より長い時間スケールにおけるCDWや氷床・棚氷の変動を捉えきれていない可能性がある.従って,CDWと氷床・棚氷変動の関係を理解するためには,地質記録による長期的な氷床変動とそれに伴う環境変動の復元データ,さらに,変動の復元手段である代理指標(プロキシ)が必要である.そのプロキシとして南極沿岸堆積物中の10Beと9Beが注目を集めている.しかし,Be同位体は大気からのフラックス,氷床融解,海流による輸送の影響を受けて分布するため,Be同位体分布の解釈に関しては議論が収束していない.そこで本研究では,東南極に位置するトッテン氷河沖とリュツォ・ホルム湾で採取された表層海底堆積物からBe同位体分布を求め,海洋・衛星観測データと比較することで,Be同位体分布に影響を与える主因子を明らかにしようと試みた.用いた試料は,第47次と61次南極地域観測隊によりトッテン氷河沖11地点,リュツォ・ホルム湾8地点から採取された表層海底堆積物である.そして,海流による輸送の影響を評価するため,堆積物の直上で測定された水深・水温・塩分データを基にAASW環境下,CDW流入経路下,両海流の遷移帯と各地点の海洋環境を推定し,異なる海洋環境間で比較した.また,大気からのフラックスの影響を評価するため,衛星観測データを用いて算出した海氷被覆率と比較した.
Be同位体測定の結果,10Be濃度は両領域においてCDW流入経路下の地点で高く,かつCDW流入口の大陸棚外縁に近い地点から棚氷縁近傍の地点にかけて減少した.一方,9Be濃度は棚氷縁近傍と底面融解後の融解水と混合したCDW流入経路下の地点で高かった.また,衛星観測から推定した過去8年間の12〜3月の海氷被覆率は,トッテン氷河沖で10%以上,リュツォ・ホルム湾で80%以上であり,Be同位体と有意な関係は見られなかった.以上の結果より,10BeはCDWによる輸送が主要な供給源である可能性が高く,CDW流入のプロキシとして有用である可能性が高い.一方,9Beは棚氷縁近傍で高濃度を示したことから,南極大陸からの砕屑物供給,すなわち氷床底面の融解と関連したプロキシである可能性が高い.本研究結果は,近年の温暖化傾向と南極氷床の融解傾向の関係を理解する上で基盤となるデータである.今後は,10Beをさらに高精度なCDWプロキシにするため,海水中のBe同位体にも焦点を当て,堆積物と海水のBe同位体組成を比較し,両者のインタラクションを明らかにする予定である.
Be同位体測定の結果,10Be濃度は両領域においてCDW流入経路下の地点で高く,かつCDW流入口の大陸棚外縁に近い地点から棚氷縁近傍の地点にかけて減少した.一方,9Be濃度は棚氷縁近傍と底面融解後の融解水と混合したCDW流入経路下の地点で高かった.また,衛星観測から推定した過去8年間の12〜3月の海氷被覆率は,トッテン氷河沖で10%以上,リュツォ・ホルム湾で80%以上であり,Be同位体と有意な関係は見られなかった.以上の結果より,10BeはCDWによる輸送が主要な供給源である可能性が高く,CDW流入のプロキシとして有用である可能性が高い.一方,9Beは棚氷縁近傍で高濃度を示したことから,南極大陸からの砕屑物供給,すなわち氷床底面の融解と関連したプロキシである可能性が高い.本研究結果は,近年の温暖化傾向と南極氷床の融解傾向の関係を理解する上で基盤となるデータである.今後は,10Beをさらに高精度なCDWプロキシにするため,海水中のBe同位体にも焦点を当て,堆積物と海水のBe同位体組成を比較し,両者のインタラクションを明らかにする予定である.
