日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 測地学・GGOS

2025年5月25日(日) 10:45 〜 12:15 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:松尾 功二(国土地理院)、横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、三井 雄太(静岡大学理学部地球科学科)、座長:渡邉 俊一(海上保安庁海洋情報部)、川元 智司(国土交通省国土地理院)

11:00 〜 11:15

[SGD02-08] 小型・低価格・多目的 SLR システム Omni-SLR (2) 2局間光パルス伝送による時刻比較

*中村 優介1横田 裕輔1、河野 賢司1大坪 俊通2小林 美穂子2荒木 博志3、古居 晴菜4 (1.東京大学、2.一橋大学、3.国立天文台、4.国土地理院)

キーワード:SLR、時刻比較

SLR(Satellite Laser Ranging,人工衛星レーザー測距)とは,地表から人工衛星にレーザーパルスを照射し,レーザーが衛星に取り付けられたコーナーキューブリフレクターで反射して地表へ戻ってくるまでの往復時間から地表と衛星の間の距離を測定する,測地技術の一つである.現在石岡測地観測局では,その小型化と低価格化を目標としたOmni-SLRの運用に向けたテストが繰り返されている.

本講演では,Omni-SLRのSLR以外の応用の一つである2地点の時計の比較について紹介する.現在,日本標準時の決定にも用いられている水素メーザー原子時計やセシウム原子時計,さらには光格子時計まで,様々な高精度の時計が世界中に存在している.しかし,GNSS技術による比較では精度が足らず,光ファイバーもしくはVLBIなどの特殊な設備がないと,遠距離にある時計同士のサブナノ秒精度の比較は難しかった.われわれは,小型低価格のOmni-SLRを用いることでも時刻比較を可能にすることを計画し,SLR 目的に使っている第1局(A局)に加えて,サブセット版ながら時刻比較用途には同等の機能持つ第2局(B 局)を立ち上げた.

2局のSLRから同一のターゲットに対して同時にレーザー測距を行った.近距離に設置する場合には,光学系の変更が必要となり,送信鏡と受信鏡の指向方向をずらして,送信ビームがターゲットに当たるようにした.そして,SLRではA→A や B→B の自局への折り返しを基本とするが,さらに他局から発せられたパルス,すなわち A→B やB→Aも観測できるようにした.これらの時系列データに対して統計値を計算し,数 ps の比較能力を持つことが確認でき,さらにGNSS基準信号発生器どうしの比較では暫定値ながら2~3 x 10^-10 @1秒 のアラン分散を得ている.

また,2地点の時計の比較に際して,光パルス伝送をせずに2種類のGNSS基準信号発生器の1 Pulse Per Second(PPS)の信号同士の直接比較も行った.この時系列データに対しても光パルス伝送の場合と同様に統計値を計算し,光パルス伝送のアラン分散のふるまいと直接比較のアラン分散のふるまいを比較した.これにより,光パルス伝送の時計比較でも精度が劣化しないことを確かめた.

さらに,異種のGNSS基準信号発生器や,国土地理院のVLBI用水素メーザーとの比較も進めている.