口腔機能

[P-107] 顎義歯装着患者の最大咬合力に関する臨床的検討

*河崎 雅弘¹、荻野 洋一郎¹、萱野 公生¹、諸井 亮司¹、鮎川 保則¹ (1. 九州大学 大学院歯学研究院 口腔機能修復学講座　クラウンブリッジ補綴学分野)

[Abstract]
【目的】
　顎欠損患者の顎義歯装着による口腔機能の評価については，咀嚼能力をアウトカムとした研究¹⁾が多い．咀嚼能力に影響を与える因子のひとつに最大咬合力が報告されているが，顎義歯装着患者の最大咬合力をアウトカムにした報告は少ない．そこで本研究では，顎義歯装着患者の最大咬合力に影響を与える因子の検証を目的とした．
【方法】
　研究対象者は，2014年4月から2022年10月までに九州大学病院補綴科で，デンタルプレスケールⅡ(株式会社ジーシー)による最大咬合力の測定を行った顎義歯装着患者とした．(九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会　許可番号：22163-01)．診療録より患者プロファイル(年齢，性別，腫瘍や手術に関する情報，残存歯数，機能的咬合支持数)，口腔機能検査値(最大咬合力，口腔内湿潤度，舌口唇運動機能:ODK，最大舌圧，咀嚼機能，嚥下機能)を抽出した．各項目の中央値の算出，上顎と下顎の二群比較，最大咬合力を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った．
【結果と考察】
　対象患者は98名(上顎55名，下顎43名)であった．口腔機能低下症診断の基準値を中央値で超えた項目は上下顎ともに，口腔内湿潤度，咀嚼機能，嚥下機能であった．上顎群と下顎群の比較では，上顎では最大舌圧が，下顎では最大咬合力，ODK/pa//ta//ka/が有意に高かった．ロジスティック回帰分析の結果，上顎では咬合支持数，ODK/ka/，最大舌圧が，下顎では，閉口筋の切除，頸部郭清が有意な予測因子であった．これらの結果により，上顎では，咬合支持数と舌の動きや筋力に関連する因子が，下顎では，筋肉などの因子が咬合力に影響を及ぼすことが示唆された．
【参考文献】
1) Tsuji M, Kosaka T, Kida M, et al. Factors related to masticatory performance in patients with removable dentures for jaw defects following oral tumor surgery. J Prosthodont Res 2023;67(4):583-587