[0089] 片麻痺者の歩行練習における長下肢装具の使用状況
キーワード:片麻痺, 歩行, 長下肢装具
【はじめに,目的】
片麻痺者の理学療法において,廃用症候群を予防し早期から積極的なリハビリテーションを行うことや,装具を利用して歩行練習を行うことは強く勧められている(脳卒中ガイドライン2009)。当院では備品である装具(長下肢装具(KAFO)・短下肢装具(AFO),底屈制動機構付きなど)を,症例の体格や身体機能,目的などに合わせて適宜使用し歩行練習を行っている。歩行については,身体のアライメントの維持やスムーズな体重移動,荷重時の筋活動のタイミングの促通などを目的にKAFOを活用している。また,積極的な歩行練習の準備として,立位などの動作における身体のアライメントの維持やバランスの強化を行うためにも活用している(萩原章由ほか:JSPO29,2003)。今回,当院におけるKAFOの対象などを明らかにすることを目的に,使用状況の調査を行った。
【方法】
<対象>2010年6月1日~2012年3月31日に当院に救急入院し,入院時・退院時の評価が行えた片麻痺者(186例)のうち,KAFOを使用した症例。(再発例と両側片麻痺例は除外した。)
<方法>基本情報,装具の使用状況,入院時・退院時・KAFO使用開始時(KAFO時)の下肢随意性(Br.Stage),歩行能力,最大連続歩行距離,Berg Balance Scale(BBS)を診療録より後方視的に調査した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究である。症例に対し十分な説明と同意の上評価を実施し,当院の倫理規定に則って報告を行う。
【結果】
KAFOを使用した症例は40例であった。年齢は64.6±7.7歳。性別は男性29,女性11例。診断名は脳梗塞15,脳出血24,くも膜下出血1例。障害側は右22,左18例。発症~PT開始は1.8±1.1日。入院期間は149.3±50.9日。転帰は自宅退院20,施設入所15,リハ転院3,治療転院2例であった。発症~KAFO使用開始34.7±37.5(中央値28,7-249)日。KAFO使用期間44.1±29.0(中央値39,5-156)日。退院時に使用した装具はKAFO10,金属支柱付AFO18,プラスチックAFO5,装具なし7例(AFOカットダウン率57.5%,装具なし含む75%)。本人用装具を作製した症例は22例55%であった。下肢Br.StageはKAFO時II5,III27,IV5,V1,精査不可2。全例が歩行練習を実施していた。歩行能力はKAFO時全例が介助,退院時は自立が11,監視が8,介助が21例,退院時に実用歩行を獲得した症例は22例であった。退院時に歩行自立・監視だった例の最大連続歩行距離はKAFO時17.4±16.7m→退院時552.6±401.3m,BBS平均値(中央値)はKAFO時12.9(11)点→退院時41.4(43)点。退院時に歩行介助だった例の最大連続歩行距離はKAFO時6.2±4.1m→退院時31.3±39.8m,BBS平均値(中央値)はKAFO時4.0(4)点→退院時12.9(10)点であった。
【考察】
発症~KAFO処方(当院では発症~KAFO使用開始)までの時期,KAFOからAFOへカットダウンまでの期間(当院ではKAFO使用期間)の平均は先行文献とほぼ同様であったが,標準偏差が大きい傾向にあった。また,カットダウン率やBr.Stage,退院時の歩行能力から,幅広い対象にKAFOを使用していたことがわかった。このことから,当院では備品としてKAFOを多数所有しているため,理学療法士が個々の症例ごとに,必要な時期に治療用としてKAFOを導入していたことが示唆された。また,実用歩行に至らなかった例が約半数であったが,立位・バランス能力を反映するBBSの得点には改善がみられており,実用歩行に至らなかったような重症例でも,KAFOを用いて立位・歩行練習を行っていたことにより一定の効果が得られていたと考える。
【理学療法学研究としての意義】
施設備品として装具を所有するメリットは,理学療法士が症例の機能や運動の目的に応じて装具を導入し,立位・歩行練習を行うことができる点で意義があると考える。
片麻痺者の理学療法において,廃用症候群を予防し早期から積極的なリハビリテーションを行うことや,装具を利用して歩行練習を行うことは強く勧められている(脳卒中ガイドライン2009)。当院では備品である装具(長下肢装具(KAFO)・短下肢装具(AFO),底屈制動機構付きなど)を,症例の体格や身体機能,目的などに合わせて適宜使用し歩行練習を行っている。歩行については,身体のアライメントの維持やスムーズな体重移動,荷重時の筋活動のタイミングの促通などを目的にKAFOを活用している。また,積極的な歩行練習の準備として,立位などの動作における身体のアライメントの維持やバランスの強化を行うためにも活用している(萩原章由ほか:JSPO29,2003)。今回,当院におけるKAFOの対象などを明らかにすることを目的に,使用状況の調査を行った。
【方法】
<対象>2010年6月1日~2012年3月31日に当院に救急入院し,入院時・退院時の評価が行えた片麻痺者(186例)のうち,KAFOを使用した症例。(再発例と両側片麻痺例は除外した。)
<方法>基本情報,装具の使用状況,入院時・退院時・KAFO使用開始時(KAFO時)の下肢随意性(Br.Stage),歩行能力,最大連続歩行距離,Berg Balance Scale(BBS)を診療録より後方視的に調査した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究である。症例に対し十分な説明と同意の上評価を実施し,当院の倫理規定に則って報告を行う。
【結果】
KAFOを使用した症例は40例であった。年齢は64.6±7.7歳。性別は男性29,女性11例。診断名は脳梗塞15,脳出血24,くも膜下出血1例。障害側は右22,左18例。発症~PT開始は1.8±1.1日。入院期間は149.3±50.9日。転帰は自宅退院20,施設入所15,リハ転院3,治療転院2例であった。発症~KAFO使用開始34.7±37.5(中央値28,7-249)日。KAFO使用期間44.1±29.0(中央値39,5-156)日。退院時に使用した装具はKAFO10,金属支柱付AFO18,プラスチックAFO5,装具なし7例(AFOカットダウン率57.5%,装具なし含む75%)。本人用装具を作製した症例は22例55%であった。下肢Br.StageはKAFO時II5,III27,IV5,V1,精査不可2。全例が歩行練習を実施していた。歩行能力はKAFO時全例が介助,退院時は自立が11,監視が8,介助が21例,退院時に実用歩行を獲得した症例は22例であった。退院時に歩行自立・監視だった例の最大連続歩行距離はKAFO時17.4±16.7m→退院時552.6±401.3m,BBS平均値(中央値)はKAFO時12.9(11)点→退院時41.4(43)点。退院時に歩行介助だった例の最大連続歩行距離はKAFO時6.2±4.1m→退院時31.3±39.8m,BBS平均値(中央値)はKAFO時4.0(4)点→退院時12.9(10)点であった。
【考察】
発症~KAFO処方(当院では発症~KAFO使用開始)までの時期,KAFOからAFOへカットダウンまでの期間(当院ではKAFO使用期間)の平均は先行文献とほぼ同様であったが,標準偏差が大きい傾向にあった。また,カットダウン率やBr.Stage,退院時の歩行能力から,幅広い対象にKAFOを使用していたことがわかった。このことから,当院では備品としてKAFOを多数所有しているため,理学療法士が個々の症例ごとに,必要な時期に治療用としてKAFOを導入していたことが示唆された。また,実用歩行に至らなかった例が約半数であったが,立位・バランス能力を反映するBBSの得点には改善がみられており,実用歩行に至らなかったような重症例でも,KAFOを用いて立位・歩行練習を行っていたことにより一定の効果が得られていたと考える。
【理学療法学研究としての意義】
施設備品として装具を所有するメリットは,理学療法士が症例の機能や運動の目的に応じて装具を導入し,立位・歩行練習を行うことができる点で意義があると考える。