[0300] 回復期病棟入院の中枢神経疾患患者の初期評価が階段昇降の可否に及ぼす影響
キーワード:中枢神経疾患, 階段昇降自立, 予後予測
【はじめに,目的】階段は多くの公共施設や公共交通機関,一般の住宅やそのエントランス部分にも存在することから日常生活上さけて通ることができない。このことから,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)入院患者の退院の条件に階段昇降自立が挙げられる。退院時の歩行自立に関する予後予測の研究は多数あるが,階段昇降の自立に関する先行研究は少ない。特に入院当初から退院時の階段昇降の可否を判断する因子を明らかにした研究はなされていない。入院時点で階段昇降の可否の予測が可能であれば理学療法の展開や退院後の住環境の設定にも大きな影響を与える。そこで本研究では,回復期リハ病棟に入院した中枢神経疾患患者の発症あるいは手術後から1か月半以内の運動機能評価から退院時の階段昇降自立獲得の可否を予測することを目的とした。
【方法】対象は,当院の回復期リハ病棟に入院した中枢神経疾患患者(脳梗塞38名,脳出血23名,くも膜下出血7名,その他5名,男性37名,女性36名)とした。評価項目に欠損値があるもの,当病院入院時に階段昇降自立あるいは見守りであるものは除外し,以上の条件に満たした73名を対象者とした。発症から検査日までの日数は,平均43.9±12.4日であった。調査項目は,医療診療録より年齢,性別,診断名,発症日,退院先,病前の階段昇降可否であった。評価項目はBody Mass Index(以下,BMI),下肢Brunnstrom Recovery stage(以下,下肢BRS)下肢関節可動域(以下,ROM),握力,Functional Balance Scale(以下,FBS),Functional Independence Measure(以下,FIM運動)とした。階段昇降の可否の定義としては,当院病棟間の階段の5段を基準とし,自立群は自立・補助具等の利用での自立と近位見守りまでとした。介助が必要な場合と5段以下が昇降不可の者は非自立群とした。
分析方法は,階段昇降の自立群と非自立群の2群間で各評価項目における比較を行った後,有意差を認めた項目を独立変数とし,退院時の階段昇降の可否を従属変数としたロジスティック回帰分析を行なった。次にReceiver Operating Characteristic(以下,ROC)曲線を求め,曲線下面積によって検討した。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,国際医療福祉大学倫理委員会の承認を得た。対象者には研究の趣旨と方法に関しての説明を十分に行い,書面にて同意を得た対象者にのみ実施した。
【結果】全対象者73名のうち,自立群は44例,非自立群は29例であった。2群間の比較において,有意差がみられた評価項目は,退院先,病前の階段昇降(病前階段)の可否,非麻痺側股関節伸展のROM,非麻痺側握力,FBS,FIMのトイレ動作,移乗ベッド,移乗トイレ,移乗移動浴室,移動であった。これらの10項目を独立変数とし,階段昇降の可否を従属変数としたロジスティック回帰分析を適合させた結果,階段昇降自立に影響を与える因子としては,病前階段の可否とFIMの移乗ベッドが選択された。ROC曲線からFIM移乗ベッドのカットオフ値は4.50以上となった。
【考察】
回復期リハ病棟退院時の階段昇降自立の獲得を予測する因子として,病前階段可否とFIMの移乗ベッドの入院初期の評価が選択された。入院時の情報である病前から階段昇降自立している者が全体の69.8%をしめており,そのうちの72.5%が退院時に階段昇降自立をしていたことやROC曲線からFIM移乗ベッドのカットオフ値が4.50以上すなわち,入院早期より監視や指示により移乗動作ができることの重要性が示唆された。階段昇降は重心の上下運動が大きい運動様式であり,自立には麻痺側の膝伸展筋力や荷重能力の発揮や立位バランス能力が必要と言われているが,入院早期からこれらの測定を行うことが困難なことが多い。ベッドからの移乗動作の中には,立ち上がり時に重心を前方に移すことや膝の伸展筋力や横移動時のバランス能力の発揮が必要であり,退院時の昇降動作の可否の予測を簡易に評価する指標となる可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】回復期リハ病棟入院時において,病前階段の可否の聴取とFIM移乗動作の評価は比較的早期から可能であり,その結果により患者本人,およびその家族に対して具体的かつ実現可能な目標の提示が可能となる。また,入院早期からの退院目標や方針を立案することが可能となり,理学療法介入だけでなく多職種への有用な情報提供ができると考える。
【方法】対象は,当院の回復期リハ病棟に入院した中枢神経疾患患者(脳梗塞38名,脳出血23名,くも膜下出血7名,その他5名,男性37名,女性36名)とした。評価項目に欠損値があるもの,当病院入院時に階段昇降自立あるいは見守りであるものは除外し,以上の条件に満たした73名を対象者とした。発症から検査日までの日数は,平均43.9±12.4日であった。調査項目は,医療診療録より年齢,性別,診断名,発症日,退院先,病前の階段昇降可否であった。評価項目はBody Mass Index(以下,BMI),下肢Brunnstrom Recovery stage(以下,下肢BRS)下肢関節可動域(以下,ROM),握力,Functional Balance Scale(以下,FBS),Functional Independence Measure(以下,FIM運動)とした。階段昇降の可否の定義としては,当院病棟間の階段の5段を基準とし,自立群は自立・補助具等の利用での自立と近位見守りまでとした。介助が必要な場合と5段以下が昇降不可の者は非自立群とした。
分析方法は,階段昇降の自立群と非自立群の2群間で各評価項目における比較を行った後,有意差を認めた項目を独立変数とし,退院時の階段昇降の可否を従属変数としたロジスティック回帰分析を行なった。次にReceiver Operating Characteristic(以下,ROC)曲線を求め,曲線下面積によって検討した。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,国際医療福祉大学倫理委員会の承認を得た。対象者には研究の趣旨と方法に関しての説明を十分に行い,書面にて同意を得た対象者にのみ実施した。
【結果】全対象者73名のうち,自立群は44例,非自立群は29例であった。2群間の比較において,有意差がみられた評価項目は,退院先,病前の階段昇降(病前階段)の可否,非麻痺側股関節伸展のROM,非麻痺側握力,FBS,FIMのトイレ動作,移乗ベッド,移乗トイレ,移乗移動浴室,移動であった。これらの10項目を独立変数とし,階段昇降の可否を従属変数としたロジスティック回帰分析を適合させた結果,階段昇降自立に影響を与える因子としては,病前階段の可否とFIMの移乗ベッドが選択された。ROC曲線からFIM移乗ベッドのカットオフ値は4.50以上となった。
【考察】
回復期リハ病棟退院時の階段昇降自立の獲得を予測する因子として,病前階段可否とFIMの移乗ベッドの入院初期の評価が選択された。入院時の情報である病前から階段昇降自立している者が全体の69.8%をしめており,そのうちの72.5%が退院時に階段昇降自立をしていたことやROC曲線からFIM移乗ベッドのカットオフ値が4.50以上すなわち,入院早期より監視や指示により移乗動作ができることの重要性が示唆された。階段昇降は重心の上下運動が大きい運動様式であり,自立には麻痺側の膝伸展筋力や荷重能力の発揮や立位バランス能力が必要と言われているが,入院早期からこれらの測定を行うことが困難なことが多い。ベッドからの移乗動作の中には,立ち上がり時に重心を前方に移すことや膝の伸展筋力や横移動時のバランス能力の発揮が必要であり,退院時の昇降動作の可否の予測を簡易に評価する指標となる可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】回復期リハ病棟入院時において,病前階段の可否の聴取とFIM移乗動作の評価は比較的早期から可能であり,その結果により患者本人,およびその家族に対して具体的かつ実現可能な目標の提示が可能となる。また,入院早期からの退院目標や方針を立案することが可能となり,理学療法介入だけでなく多職種への有用な情報提供ができると考える。