[0481] 脳卒中専門病院における女性看護師の腰痛実態調査
キーワード:女性看護師, 腰痛, Roland-Morris Disability Questionnaire
【はじめに,目的】
腰痛は,全業務上疾病発生件数の内61.8%を占め,労働衛生分野における重要な課題となっている。また業種別での統計では,保健衛生業におけるその割合は,78.5%と最も高率であると報告されている。そのため厚生労働省では,平成25年6月に「職場における腰痛予防対策指針」を改訂し,その適用対象を福祉・医療分野等における介護・看護作業全般に拡げ,腰痛予防対策を推進する動きがある。しかし現状では,医療現場では腰痛を抱え業務に従事する看護師が多く,腰痛予防対策は不足していると考えられる。そこで本調査では,看護師を対象とした腰痛予防対策を検討するために,腰痛に関するアンケート調査を実施し,当センターの看護師の腰痛有訴率とそれに関連する看護作業の把握と,腰痛予防対策において理学療法士が期待されていることを明らかにすることとした。
【方法】
当センターに所属する看護師全職員110名に対し,独自に作成した調査票を配布し,分析対象は回答の得られた30歳代から50歳代までの女性看護師67名とした(有効回答率60.9%)。方法は,腰痛に関する調査票によるアンケート調査とし,調査項目は年齢などの個人属性に加え,①現在の職務中における腰痛の有無,②腰痛が起こる看護作業(対象:腰痛有訴者),③腰痛の恐怖を感じる看護作業(対象:非腰痛有訴者),④理学療法士に期待する腰痛対策,⑤腰痛関連QOL評価:Roland-Morris Disability Questionnaire(以下,RDQ)日本語版とした。解析は,設問別に単純集計し,回答内容を分析した。また,対象群を30歳代,40歳代,50歳代と年代毎に群分けを行い,各年代別での回答内容の比較にはχ2乗検定,Kruskal-Wallis検定を使用した。RDQの解析では,腰痛有訴者と非腰痛有訴者の比較には,Mann-WhitneyのU検定を使用し,日本人の年代別基準値との比較には1標本t検定を使用した。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本調査の目的などを記載した依頼文を調査票とともに配布し,調査票への回答をもち,参加同意をしたものとみなした。なお匿名性を保証するため,本調査は無記名にて実施した。
【結果】
現在職務中に腰痛を有するものは43名(64.2%),腰痛が無いものは29名(35.8%)であった。腰痛が起こる看護作業は,「移乗介助」(69.8%),「体位交換」(60.5%),「排泄介助」(39.5%)の順で多かった。また腰痛の恐怖を感じる看護作業も,「移乗介助」(79.2%),「体位交換」(66.7%),「排泄介助」(45.8%)の順で多く,腰痛が起こる看護作業の結果と同様であった。理学療法士に期待する腰痛対策としては,「車椅子移乗方法の指導」(53.7%),「職員を対象にした腰痛体操の指導」(50.8%),「ベッド,車椅子などの作業環境の整備」(46.3%)の順に高かった。一方,「特に期待しない」(7.5%)は非常に低い結果であった。これらの結果において,各年代間での差は認めなかった。RDQの結果では,腰痛有訴者3.2±3.8点,非腰痛有訴者2.1±4.4点と腰痛有訴者が有意に高い得点であった。各年代間での検討では,30歳代2.54±3.91点,40歳代3.40±4.77点,50歳代2.25±3.29点と,40歳代で高くなる傾向がみられたが,有意差は認めなかった。年代別基準値との比較では,40歳代で基準値(1.38±3.43点)より有意に高く(p<0.05),その他の年代では各年代の基準値を上回っているが有意差は認めなかった。
【考察】
本調査の結果から,当センター看護師の腰痛有訴率は64.2%と高率であり,先行研究と同様の結果となった。また,特に40歳代の看護師では,年代別基準値よりも高値であり,腰痛がQOLを低下させている傾向が示され,改めて腰痛対策の必要性が認識された。同時に,腰痛対策には理学療法士の関わりが期待されていることも判明した。特に,「移乗介助」,「体位交換」が腰痛発生に関連し,看護師には理学療法士に対して,介助方法の見直し,作業前のストレッチ体操の導入,ベッド・車椅子などの作業環境の改善などの要望があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究では,看護師の腰痛有訴率と合わせて腰痛関連QOLを調査したことで,看護師を対象とした腰痛対策の重要性を示すことができたと考える。また,その対策に理学療法士の関わりを期待されていることも判明し,腰痛対策への関わりの意義を深めたと考える。
腰痛は,全業務上疾病発生件数の内61.8%を占め,労働衛生分野における重要な課題となっている。また業種別での統計では,保健衛生業におけるその割合は,78.5%と最も高率であると報告されている。そのため厚生労働省では,平成25年6月に「職場における腰痛予防対策指針」を改訂し,その適用対象を福祉・医療分野等における介護・看護作業全般に拡げ,腰痛予防対策を推進する動きがある。しかし現状では,医療現場では腰痛を抱え業務に従事する看護師が多く,腰痛予防対策は不足していると考えられる。そこで本調査では,看護師を対象とした腰痛予防対策を検討するために,腰痛に関するアンケート調査を実施し,当センターの看護師の腰痛有訴率とそれに関連する看護作業の把握と,腰痛予防対策において理学療法士が期待されていることを明らかにすることとした。
【方法】
当センターに所属する看護師全職員110名に対し,独自に作成した調査票を配布し,分析対象は回答の得られた30歳代から50歳代までの女性看護師67名とした(有効回答率60.9%)。方法は,腰痛に関する調査票によるアンケート調査とし,調査項目は年齢などの個人属性に加え,①現在の職務中における腰痛の有無,②腰痛が起こる看護作業(対象:腰痛有訴者),③腰痛の恐怖を感じる看護作業(対象:非腰痛有訴者),④理学療法士に期待する腰痛対策,⑤腰痛関連QOL評価:Roland-Morris Disability Questionnaire(以下,RDQ)日本語版とした。解析は,設問別に単純集計し,回答内容を分析した。また,対象群を30歳代,40歳代,50歳代と年代毎に群分けを行い,各年代別での回答内容の比較にはχ2乗検定,Kruskal-Wallis検定を使用した。RDQの解析では,腰痛有訴者と非腰痛有訴者の比較には,Mann-WhitneyのU検定を使用し,日本人の年代別基準値との比較には1標本t検定を使用した。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本調査の目的などを記載した依頼文を調査票とともに配布し,調査票への回答をもち,参加同意をしたものとみなした。なお匿名性を保証するため,本調査は無記名にて実施した。
【結果】
現在職務中に腰痛を有するものは43名(64.2%),腰痛が無いものは29名(35.8%)であった。腰痛が起こる看護作業は,「移乗介助」(69.8%),「体位交換」(60.5%),「排泄介助」(39.5%)の順で多かった。また腰痛の恐怖を感じる看護作業も,「移乗介助」(79.2%),「体位交換」(66.7%),「排泄介助」(45.8%)の順で多く,腰痛が起こる看護作業の結果と同様であった。理学療法士に期待する腰痛対策としては,「車椅子移乗方法の指導」(53.7%),「職員を対象にした腰痛体操の指導」(50.8%),「ベッド,車椅子などの作業環境の整備」(46.3%)の順に高かった。一方,「特に期待しない」(7.5%)は非常に低い結果であった。これらの結果において,各年代間での差は認めなかった。RDQの結果では,腰痛有訴者3.2±3.8点,非腰痛有訴者2.1±4.4点と腰痛有訴者が有意に高い得点であった。各年代間での検討では,30歳代2.54±3.91点,40歳代3.40±4.77点,50歳代2.25±3.29点と,40歳代で高くなる傾向がみられたが,有意差は認めなかった。年代別基準値との比較では,40歳代で基準値(1.38±3.43点)より有意に高く(p<0.05),その他の年代では各年代の基準値を上回っているが有意差は認めなかった。
【考察】
本調査の結果から,当センター看護師の腰痛有訴率は64.2%と高率であり,先行研究と同様の結果となった。また,特に40歳代の看護師では,年代別基準値よりも高値であり,腰痛がQOLを低下させている傾向が示され,改めて腰痛対策の必要性が認識された。同時に,腰痛対策には理学療法士の関わりが期待されていることも判明した。特に,「移乗介助」,「体位交換」が腰痛発生に関連し,看護師には理学療法士に対して,介助方法の見直し,作業前のストレッチ体操の導入,ベッド・車椅子などの作業環境の改善などの要望があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究では,看護師の腰痛有訴率と合わせて腰痛関連QOLを調査したことで,看護師を対象とした腰痛対策の重要性を示すことができたと考える。また,その対策に理学療法士の関わりを期待されていることも判明し,腰痛対策への関わりの意義を深めたと考える。