第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 運動器理学療法 ポスター

骨・関節15

Sat. May 31, 2014 9:30 AM - 10:20 AM ポスター会場 (運動器)

座長:石井慎一郎(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部リハビリテーション学科)

運動器 ポスター

[0721] 変形性膝関節症のFTAと足部アライメントの関係性

斎藤優磨1, 山崎肇1, 阿久澤弘1, 倉秀治2 (1.医療法人社団悠仁会羊ヶ丘病院リハビリテーション科, 2.医療法人社団悠仁会羊ヶ丘病院整形外科)

Keywords:変形性膝関節症, FTA, 足部アライメント

【はじめに,目的】
変形性膝関節症(以下,膝OA)は生体の退行性変化に伴う代表的な慢性進行性疾患であり,整形外科外来で来院する膝の疼痛の原因疾患として大半を占めている。わが国ではそのほとんどが内側型膝OAであり,大腿脛骨角(以下,FTA)の増加による内反変形を伴うものが多い。膝OAによる下肢アライメントの変化により二次的に隣接関節である股関節や足関節,足部へのストレスの増加やアライメントが変化をすることが考えられる。膝OAによる足部への影響として,舟状骨高やLeg-heel Angleの変化など,中足部および後足部アライメントへ与える影響についての報告は散見するが,FTAが足部アライメントへ与える影響に関する報告は少ない。本研究の目的は膝OA症例のFTAが足部アライメントへ与える影響について検討することである。今回我々はFTAの増加に伴い踵骨の外反が増加し,FTAが一定値を超えた時点で踵骨は逆に内反すると仮説を立てた。
【方法】
対象は2013年6月から10月までに,当院にて人工膝関節全置換術(以下,TKA)を試行された51例51膝のうち,内側型膝OAと診断された27例27膝(男性4例,女性23例)とした。除外基準は,関節リウマチ,外側型膝OA,TKA再置換術,データ不備のものとした。対象症例の平均年齢は72.3±7.8歳,平均身長は151.0±5.8cm,平均体重は60.4±9.0kgであり,膝OA StageはStageIII:5例,StageIV15例,StageV:7例であった。
測定項目は,術前のFTA,足部アライメント(踵骨傾斜角度,舟状骨高,第1趾側角度,第5趾側角度)とした。FTAは立位正面全下肢X線像から大腿骨軸と脛骨軸を定めて計測した。足部アライメントは三次元足型自動計測器CUTE(DreamGP社製)を用い,立位荷重下での踵骨傾斜角度,舟状骨高,第1趾側角度,第5趾側角度を計測した。足部アライメントの各々の定義は,踵骨傾斜角度:踵骨隆起底部中央とアキレス腱付着部中央を結ぶ線と床への垂直軸が交わる角度。舟状骨高:床面から舟状骨粗面までの高さ。第1趾側角度:第1中足骨と第1基節骨のなす角。第5趾側角度:第5中足骨と第5基節骨のなす角とし,各々三次元足型自動計測器CUTEにて解析した。また,測定時には両下肢の荷重量が均等になる様指示を与えた。
統計学的解析にはFTAと足部アライメント(踵骨傾斜角度,舟状骨高,第1趾側角度,第5趾側角度),踵骨傾斜角度と足部アライメント(舟状骨高,第1趾側角度,第5趾側角度)との関係性にSpearmanの積率相関係数を使用した。また,FTAが踵骨傾斜角度の分類基準となり得るか検討するために,踵骨傾斜角度を2群に分類した。両群の分類基準は踵骨傾斜角度の平均値以上群(以下,高値群),平均値以下群(以下,低値群)とし,踵骨傾斜角度を従属変数,FTAを独立変数としてロジスティック回帰分析によるステップワイズ法を用いて解析した。統計処理にはIBM SPSS statistics Version21を使用し,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究の実施に際して,対象者にその趣旨を十分に説明した上で同意を得た。また,調査の際には個人情報保護に努めた。
【結果】
測定項目の各々の平均値はFTA182.5±4.7°,踵骨外反5.9±6.1°,舟状骨高34.0±7.3mm,第1趾側角度16.1±10.7°,第5趾側角度15.5±6.4°であった。FTAと足部アライメント(踵骨傾斜角度,舟状骨高,第1趾側角度,第5趾側角度)との間に相関は認められなかった。踵骨傾斜角度と足部アライメント(舟状骨高,第1趾側角度,第5趾側角度)との間には,舟状骨高:p=0.004 r=-0.53,第1趾側角度:p=0.03 r=-0.42,第5趾側角度:p=0.002 r=0.57と有意な相関が認められた。ロジスティック回帰分析によるステップワイズ法により,踵骨傾斜角度の分類に影響を及ぼす従属変数として,FTAは選定されなかった。
【考察】
本研究では,FTAと足部アライメントとの間には相関関係がみられなかった。一方,踵骨傾斜角度と足部アライメント間には相関がみられた。このことから,FTAの増大によるアライメント変化は足部に直接影響を与えず,距骨下関節で代償されると考えられる。しかし,今回使用した機器は床への垂直軸と踵骨の傾斜角度を評価しているため,距骨下関節の運動を評価していない。今後は距骨下関節を含めた足部アライメントの評価が必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
膝OA患者の膝アライメント変化が足部に及ぼす影響は,距骨下関節で代償されている可能性が示唆された。そのため,変形の強い症例では距骨下関節にかかるストレスを考慮した治療が必要になると思われる。