第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 生活環境支援理学療法 口述

福祉用具・地域在宅3

Sat. May 31, 2014 1:55 PM - 2:45 PM 第6会場 (3F 304)

座長:桜木康広(青森県立保健大学健康科学部理学療法学科)

生活環境支援 口述

[0992] 屋外活動が困難な地域在住高齢者における床からの立ち上がり動作能力の低下が屋内生活空間の活動に及ぼす影響

澤田圭祐1, 橋立博幸2, 大沼剛3, 浅野克俊4, 嶋崎聡美4, 千葉美幸1, 笹本憲男5 (1.医療法人笹本会おおくに訪問リハビリテーション, 2.杏林大学保健学部理学療法学科, 3.板橋リハビリ訪問看護ステーション, 4.医療法人笹本会おおくにいきいき通所介護, 5.医療法人笹本会やまなしケアアカデミー)

Keywords:地域在住高齢者, 生活空間, 立ち上がり

【はじめに,目的】
屋外活動が制約されている地域在住高齢者において生活機能低下の予防を図るためには,自宅屋外だけでなく自宅屋内の生活空間における活動の維持・向上が重要であり,移動動作や起立動作が重要な役割を担うが,床からの立ち上がり動作能力の変化が屋内生活空間での活動状況に及ぼす影響については明らかとされていない。本研究では,屋外活動が困難な地域在住高齢者における床からの立ち上がり動作能力と自宅屋内または屋外の生活空間での活動の縦断的変化の関連について検証することを目的とした。
【方法】
対象は訪問リハビリテーションを利用した地域在住高齢者68人のうち,床からの立ち上がり動作を独力で遂行可能で,初回調査から6か月後の追跡調査を実施できた65歳以上の19人(平均年齢77.9歳)とした。初回調査および追跡調査時に,屋内生活空間(home-based life space assessment(Hb-LSA)),屋外生活空間(life-space assessment(LSA)),床からの立ち上がり動作のパフォーマンス(TSF)を調査した。Hb-LSAは過去1か月間において自宅内を中心とした生活空間を移動または活動した範囲と,その頻度および自立度を調べた結果を得点化する指標である。Hb-LSAにおける屋内生活空間は,基点を寝室のベッドとして規定し,自宅屋内の生活空間をレベル1:ベッド上,レベル2:寝室内,レベル3:自宅住居内,レベル4:自宅居住空間のごく近くの空間(庭やアパートの敷地内),レベル5:自宅屋外(敷地外)の5段階に設定し,各生活空間レベルにおける移動の有無,頻度(生活空間レベル1・2(1:1回未満/日,2:1~3回/日,3:4~6回/日,4:日中ほとんど),レベル3~5(1:1回未満/週,2:1~3回/週,3:4~6回/週,4:毎日)),自立度(1:介助者の人的介助が必要,1.5:補助具の使用または介助者による見守りが必要,2:補助具の使用および人的介助が不要)を調べ,各生活空間レベルにおける移動の有無,頻度,自立度の得点を積算し,各生活空間レベルの積算値の合計をHb-LSAの代表値とした(得点範囲0-120点)。TSFは,物的介助の有無を問わず,長座位から人的介助を伴わずに立位に至るまでの最速の所要時間を計測した。初回調査と追跡調査のTSFを比較した結果から,対象者をTSF維持・改善群(n=11)とTSF低下群(n=8)の2群に分け,各指標を比較した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究の実施に際して,対象者または家族介護者に対して研究概要を事前に説明し同意を得た。本研究は杏林大学保健学部倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
初回調査時におけるHb-LSA,LSA,TSFを群間比較した結果,各指標に有意差は認められなかった。各群において初回調査時と追跡調査時の各指標を比較した結果,TSF維持・改善群ではTSFの成績が有意な向上を示すとともに(平均4.3s),Hb-LSAが有意に向上した(平均10.4点)。一方,TSF低下群ではTSFの成績が有意な低下を示すとともに(平均23.7s),Hb-LSAが有意に低下した(平均16.6点)。各群ともにLSAに有意な縦断的変化はみられなかった。さらに,初回調査時と比べた追跡調査時におけるTSFの変化量とHb-LSAの変化量のSpearman順位相関係数を算出した結果,TSFの変化量と有意に相関した項目は,Hb-LSAの変化量(rs=-0.490)およびHb-LSA生活空間レベル3の積算値の変化量(rs=-0.634)であった。
【考察】
TSF維持・改善群ではHb-LSAが有意に向上したのに対してTSF低下群ではHb-LSAの有意な低下が認められたことから,床からの立ち上がり動作能力の変化が屋内生活空間の活動状況と密接に関連すると考えられた。床からの立ち上がり動作は,自宅内における移動の開始や自宅内の様々な環境下での起立と着座を可能にする動作であるとともに,身体機能の高さを反映する動作であり,その変化が屋内生活空間における活動状況へ影響を及ぼしていたと推察された。また,TSFの変化量とHb-LSAの変化量とHb-LSAにおける各生活空間レベルのうちレベル3の積算値との間に有意な正の相関を示したことから,床からの立ち上がり動作能力の低下は,とくに寝室以外の自宅住居内の移動の機会の確保や実際の遂行を困難にする要因になると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
屋外活動の遂行が困難な在宅高齢者において,床からの立ち上がり動作能力の低下・改善が自宅住居の屋内生活空間での活動状況に影響を及ぼす可能性を示唆した。