[1057] 極低出生体重児における修正33週前後の行動・筋緊張・ポジショニングの関係
キーワード:極低出生体重児, 行動, 筋緊張
【目的】
新生児集中治療室(NICU)から早産・低出生体重児に介入する理学療法士が増えている。当院では,児の入院直後から安静保持および屈筋緊張促進のために児をやや圧迫するSwaddlingを行い,急性期治療が終える修正33週前後に,理学療法士がポジショニング評価を実施している。ポジショニング評価では,新生児個別発達ケア評価プログラム(NIDCAP)(Als H,et al.1986)の行動観察シートから行動評価(ストレス・安定行動),新生児神経評価(Dubowitz評価)(Dubowitz LM,et al.1999)から筋緊張評価を実施し,ポジショニング用具の仕様変更を検討している。今回,極低出生体重児での,修正33週頃の行動,筋緊張,ポジショニングとの関係を検討した。
【方法】
対象は2010年4月から2013年3月入院した極低出生体重児194例中,急性期治療を終え,修正32週0日から修正34週6日にポジショニング評価を実施した69名とした。対象児の性別は男児37名・女児32名,平均在胎週数は28週5±18日(22週2日~32週6日),平均出生体重は1123±291g(486~1498g)であった。ポジショニング評価では,NIDCAPの行動観察シートから,ストレス行動と安定行動を観察した。1-2分間の観察中に各行動が2回以上見られた場合を行動有とした。さらにDubowitz評価から,筋緊張評価として姿勢,上肢リコイル,上肢牽引,下肢リコイル,下肢牽引の5項目を評価した。評価は理学療法士2名で実施した。行動評価からストレス行動が安定行動より優位に観察される(振戦痙攣様・驚愕を除き,種類や量で判断),筋緊張評価から屈筋緊張が成熟していないcolumn2以下が3項目以上ある,自己鎮静困難な場合,やや圧迫するSwaddlingを継続した。本研究では,スピアマンの順位相関係数,ロジスティック回帰分析,クラスカル・ワーリスの順位を用い,危険率5%以下を統計学的有意とし検定した。
【倫理的配慮】
本研究は当院の倫理規定のもと実施した。対象児の保護者には,発達フォローアップシステム実施により得た情報の取り扱いについて,紙面および口頭にて説明し同意を得た。
【結果】
対象児の評価時の平均修正週数は33週4±5日,体重は1420±200gであった。行動評価の結果,ストレス行動として網状の皮膚色7例,振戦痙攣様65例,驚愕39例,ぎこちない動き27例,四肢・体幹の伸展位46例,手掌をかざす14例,手指を開く16例,握り拳1例,弛緩8例,下肢の伸展位拳上41例,後弓反張0例,自己鎮静困難7例,安定行動としてピンク色の皮膚色26例,良好な筋緊張15例,スムースな動き11例,手を頭へ25例,手を顔へ50例,手を口へ32例,手と手を合わせる6例,足を組む4例,四肢・体幹の屈曲位22例,自己鎮静可能36例に見られた。筋緊張評価の結果,column1/2/3/4/5の順で姿勢0/7/49/12/1例,上肢リコイル0/5/43/21/0例,上肢牽引0/34/314/0例,下肢リコイル0/7/26/36/0例,下肢牽引0/19/43/7/0例であった。評価結果から29例でやや圧迫するSwaddlingを継続した。在胎週数が長いもしくは出生体重が大きいほど安定行動の種類が多く見られた(r=0.25・p=0.038)。出生体重が大きいほど安定行動の種類が多く見られた(r=0.27・p=0.025)。在胎週数が短いほどストレス行動の種類が多く見られた(r=0.25・p=0.036)。在胎週数および出生体重と筋緊張に有意な相関関係は認めなかった。ストレス行動の自己鎮静困難と手指を開く(p=0.002・OR:5.556・95%CI:1.095-28.189),安定行動の自己鎮静可能とピンク色の皮膚色(p=0.002・OR:5.625・95%CI:1.868-16.934),良好な筋緊張(p=0.005・OR:20.364・95%CI:2.493-166.313),スムースな動き(p=0.020・OR:12.308・95%CI:1.478-102.513),四肢・体幹の屈曲位(p=0.039・OR:7.250・95%CI:2.113-24.872)で有意な関係があった。四肢・体幹の屈曲位では,筋緊張評価の5項目間で有意差(p<0.001)があり,平均順位は下肢リコイル(AR:77.000),上肢リコイル(AR:64.455),姿勢(AR:60.273)の順に高かった。他の行動も同様の傾向であった。
【考察】
極低出生体重児における修正33週前後の行動・筋緊張・ポジショニングでは,在胎週数および出生体重と行動に関係性が認められた。在胎週数および出生体重と筋緊張に関係性は認められず,早く生まれた児もポジショニングにより屈筋緊張が促進されている可能性が示唆された。自己鎮静可能な児は四肢・体幹の屈曲位行動との関係性が認められ,特にポジショニングにより下肢リコイルが高めることが効果的と考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
極低出生体重児の急性期治療を終える頃の発達(行動・筋緊張)とポジショニングの傾向を理解することで,理学療法士の早期介入目的が明確になると考えられた。
新生児集中治療室(NICU)から早産・低出生体重児に介入する理学療法士が増えている。当院では,児の入院直後から安静保持および屈筋緊張促進のために児をやや圧迫するSwaddlingを行い,急性期治療が終える修正33週前後に,理学療法士がポジショニング評価を実施している。ポジショニング評価では,新生児個別発達ケア評価プログラム(NIDCAP)(Als H,et al.1986)の行動観察シートから行動評価(ストレス・安定行動),新生児神経評価(Dubowitz評価)(Dubowitz LM,et al.1999)から筋緊張評価を実施し,ポジショニング用具の仕様変更を検討している。今回,極低出生体重児での,修正33週頃の行動,筋緊張,ポジショニングとの関係を検討した。
【方法】
対象は2010年4月から2013年3月入院した極低出生体重児194例中,急性期治療を終え,修正32週0日から修正34週6日にポジショニング評価を実施した69名とした。対象児の性別は男児37名・女児32名,平均在胎週数は28週5±18日(22週2日~32週6日),平均出生体重は1123±291g(486~1498g)であった。ポジショニング評価では,NIDCAPの行動観察シートから,ストレス行動と安定行動を観察した。1-2分間の観察中に各行動が2回以上見られた場合を行動有とした。さらにDubowitz評価から,筋緊張評価として姿勢,上肢リコイル,上肢牽引,下肢リコイル,下肢牽引の5項目を評価した。評価は理学療法士2名で実施した。行動評価からストレス行動が安定行動より優位に観察される(振戦痙攣様・驚愕を除き,種類や量で判断),筋緊張評価から屈筋緊張が成熟していないcolumn2以下が3項目以上ある,自己鎮静困難な場合,やや圧迫するSwaddlingを継続した。本研究では,スピアマンの順位相関係数,ロジスティック回帰分析,クラスカル・ワーリスの順位を用い,危険率5%以下を統計学的有意とし検定した。
【倫理的配慮】
本研究は当院の倫理規定のもと実施した。対象児の保護者には,発達フォローアップシステム実施により得た情報の取り扱いについて,紙面および口頭にて説明し同意を得た。
【結果】
対象児の評価時の平均修正週数は33週4±5日,体重は1420±200gであった。行動評価の結果,ストレス行動として網状の皮膚色7例,振戦痙攣様65例,驚愕39例,ぎこちない動き27例,四肢・体幹の伸展位46例,手掌をかざす14例,手指を開く16例,握り拳1例,弛緩8例,下肢の伸展位拳上41例,後弓反張0例,自己鎮静困難7例,安定行動としてピンク色の皮膚色26例,良好な筋緊張15例,スムースな動き11例,手を頭へ25例,手を顔へ50例,手を口へ32例,手と手を合わせる6例,足を組む4例,四肢・体幹の屈曲位22例,自己鎮静可能36例に見られた。筋緊張評価の結果,column1/2/3/4/5の順で姿勢0/7/49/12/1例,上肢リコイル0/5/43/21/0例,上肢牽引0/34/314/0例,下肢リコイル0/7/26/36/0例,下肢牽引0/19/43/7/0例であった。評価結果から29例でやや圧迫するSwaddlingを継続した。在胎週数が長いもしくは出生体重が大きいほど安定行動の種類が多く見られた(r=0.25・p=0.038)。出生体重が大きいほど安定行動の種類が多く見られた(r=0.27・p=0.025)。在胎週数が短いほどストレス行動の種類が多く見られた(r=0.25・p=0.036)。在胎週数および出生体重と筋緊張に有意な相関関係は認めなかった。ストレス行動の自己鎮静困難と手指を開く(p=0.002・OR:5.556・95%CI:1.095-28.189),安定行動の自己鎮静可能とピンク色の皮膚色(p=0.002・OR:5.625・95%CI:1.868-16.934),良好な筋緊張(p=0.005・OR:20.364・95%CI:2.493-166.313),スムースな動き(p=0.020・OR:12.308・95%CI:1.478-102.513),四肢・体幹の屈曲位(p=0.039・OR:7.250・95%CI:2.113-24.872)で有意な関係があった。四肢・体幹の屈曲位では,筋緊張評価の5項目間で有意差(p<0.001)があり,平均順位は下肢リコイル(AR:77.000),上肢リコイル(AR:64.455),姿勢(AR:60.273)の順に高かった。他の行動も同様の傾向であった。
【考察】
極低出生体重児における修正33週前後の行動・筋緊張・ポジショニングでは,在胎週数および出生体重と行動に関係性が認められた。在胎週数および出生体重と筋緊張に関係性は認められず,早く生まれた児もポジショニングにより屈筋緊張が促進されている可能性が示唆された。自己鎮静可能な児は四肢・体幹の屈曲位行動との関係性が認められ,特にポジショニングにより下肢リコイルが高めることが効果的と考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
極低出生体重児の急性期治療を終える頃の発達(行動・筋緊張)とポジショニングの傾向を理解することで,理学療法士の早期介入目的が明確になると考えられた。