[1139] 地域校で教育を受けている肢体不自由児の支援について
キーワード:特別支援学校, 小児理学療法, 地域支援
【はじめに,目的】
2007年に始まった特別支援教育制度により,様々な形で理学療法士が特別支援学校に関わるようになった。その成果は,地域支援体制の構築や意識調査など支援のハード面や量的側面で検討されているが,事例検討から得た質的側面での検討は少ない。また理学療法士による支援については,特別支援学校内での取り組みが報告されているが,地域校に在籍している児童生徒への支援についての報告は少ない。地域校在籍児への支援では,それぞれの教育環境や個々の障害特性を理解し,医学的ケアを要しながら学習支援を行うという高度な専門性と指導力が求められるとともに,児の主治医や担当セラピストとの連携も必須となる。三重県では,肢体不自由児の特別支援学校に理学療法士が配置され,校内の支援だけでなく,特別支援教育のセンター的役割として地域の幼保小中高及び関係者のニーズに応えるため,巡回相談,来校相談,研修会等を行い,大きな役割を担っている。今回は事例検討を通じ,地域支援での教育-医療の連携における特別支援学校での校内専門家としての理学療法士の役割について報告する。
【方法】
対象は,地域校特別支援学級に在籍する小学校一年生の女児。教育委員会からの依頼で,年間3回(1回/学期)の巡回相談を行った。アテトーゼ型脳性麻痺児,GMFCS level 4。教科の授業は協力学級で実施し,書き取りなどは介助をしてもらい参加している。登下校や校内ではSRC-Wで移動しているが,方向転換には介助が必要で歩行に時間がかるため,移動は介助されている事が多い。車いすは親の希望で持たず,授業の際は座位保持椅子を使用していた。担任からの支援ニーズは,①SRC-Wでは移動に時間がかかりそれで休み時間が終わってしまうので,移動支援の方法を見直したい,②保護者から使ってほしいと言われた箸がうまく使えない,③座位保持椅子の設定があっているか,の三点であった。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象児とそのご家族には本発表の主旨を説明し,同意を得た。本発表にあたり,学校長ならびに学内委員会で発表主旨,内容について了承を得た。
【結果】
巡回相談前に本児の療育センターでの担当理学療法士に連絡をとり,巡回相談時のポイントを書面で確認するとともに,相談後には以下の結果を書面にて報告し連携を図った。支援内容は,移動は,歩く量と授業時間を調整し,足に雑巾をつけ掃除をするという役割を与えることで本児の意欲を向上させ,歩行速度をあげることができた。また,歩行器は県内で毎年開催している子どもの福祉機器展を紹介,当日の試乗時に療育センター担当理学療法士と意見交換し,本児の現時点での能力に合わせた物に変更でき,さらに歩行能力が向上した。箸は,療育センターでも練習段階であったため,学校では現在できている技能を確実に向上させるようスプーンでの摂食を促し,箸は自立活動などでの指導を提案した。座位保持椅子は,その場でベルトなどの微調整を来校毎に行った。巡回相談時には保護者にも来校してもらい,当日の状況を確認した。
【考察】
2013年9月より学校教育法施行令が一部改正され,障害を有する児童生徒の就学に関して,例外的に地域の小中学校への就学を可能としていた規定を改め,総合的な観点から就学先を決定する仕組みに変更になった。それに伴い,地域校で教育を受ける肢体不自由児の数は今後増加すると考えられる。地域校での特別支援教育の実施者は殆どが医学的な知識はなく,しかも初めて肢体不自由児を担当する教員も多い。「病院のリハの見学に行ったがわからない・できない」「保護者からの要望を負担に感じる」といった声が地域支援の中ではよく聞かれ,医療機関での指導内容が教育機関に十分に伝わっていないと感じることが多い。地域校への支援は,学校生活や授業を理解し,教員が実施可能な支援方法を具体的に提示し,定期的な支援方法の見直しが大切であると考える。特別支援学校のセンター的役割の中には,子どもへの支援だけでなく,教員の相談や研修指導,福祉・医療などの関係機関との連絡・調整が含まれている。教育機関に所属する理学療法士だからこそ,校内での実践を地域支援にも活用し,医療機関との連携の窓口としての役割を果たすことができたと今回の事例を通じて考えている。
【理学療法学研究としての意義】
特別支援学校内に校内専門家として理学療法士が勤務することで,校内での特別支援教育「自立活動」の専門性を担うだけでなく,その専門性を校外の地域支援にも活かしていけることが示せた。今後の特別支援学校における理学療法士の職域拡大に繋がる意義があるものと考える。
2007年に始まった特別支援教育制度により,様々な形で理学療法士が特別支援学校に関わるようになった。その成果は,地域支援体制の構築や意識調査など支援のハード面や量的側面で検討されているが,事例検討から得た質的側面での検討は少ない。また理学療法士による支援については,特別支援学校内での取り組みが報告されているが,地域校に在籍している児童生徒への支援についての報告は少ない。地域校在籍児への支援では,それぞれの教育環境や個々の障害特性を理解し,医学的ケアを要しながら学習支援を行うという高度な専門性と指導力が求められるとともに,児の主治医や担当セラピストとの連携も必須となる。三重県では,肢体不自由児の特別支援学校に理学療法士が配置され,校内の支援だけでなく,特別支援教育のセンター的役割として地域の幼保小中高及び関係者のニーズに応えるため,巡回相談,来校相談,研修会等を行い,大きな役割を担っている。今回は事例検討を通じ,地域支援での教育-医療の連携における特別支援学校での校内専門家としての理学療法士の役割について報告する。
【方法】
対象は,地域校特別支援学級に在籍する小学校一年生の女児。教育委員会からの依頼で,年間3回(1回/学期)の巡回相談を行った。アテトーゼ型脳性麻痺児,GMFCS level 4。教科の授業は協力学級で実施し,書き取りなどは介助をしてもらい参加している。登下校や校内ではSRC-Wで移動しているが,方向転換には介助が必要で歩行に時間がかるため,移動は介助されている事が多い。車いすは親の希望で持たず,授業の際は座位保持椅子を使用していた。担任からの支援ニーズは,①SRC-Wでは移動に時間がかかりそれで休み時間が終わってしまうので,移動支援の方法を見直したい,②保護者から使ってほしいと言われた箸がうまく使えない,③座位保持椅子の設定があっているか,の三点であった。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象児とそのご家族には本発表の主旨を説明し,同意を得た。本発表にあたり,学校長ならびに学内委員会で発表主旨,内容について了承を得た。
【結果】
巡回相談前に本児の療育センターでの担当理学療法士に連絡をとり,巡回相談時のポイントを書面で確認するとともに,相談後には以下の結果を書面にて報告し連携を図った。支援内容は,移動は,歩く量と授業時間を調整し,足に雑巾をつけ掃除をするという役割を与えることで本児の意欲を向上させ,歩行速度をあげることができた。また,歩行器は県内で毎年開催している子どもの福祉機器展を紹介,当日の試乗時に療育センター担当理学療法士と意見交換し,本児の現時点での能力に合わせた物に変更でき,さらに歩行能力が向上した。箸は,療育センターでも練習段階であったため,学校では現在できている技能を確実に向上させるようスプーンでの摂食を促し,箸は自立活動などでの指導を提案した。座位保持椅子は,その場でベルトなどの微調整を来校毎に行った。巡回相談時には保護者にも来校してもらい,当日の状況を確認した。
【考察】
2013年9月より学校教育法施行令が一部改正され,障害を有する児童生徒の就学に関して,例外的に地域の小中学校への就学を可能としていた規定を改め,総合的な観点から就学先を決定する仕組みに変更になった。それに伴い,地域校で教育を受ける肢体不自由児の数は今後増加すると考えられる。地域校での特別支援教育の実施者は殆どが医学的な知識はなく,しかも初めて肢体不自由児を担当する教員も多い。「病院のリハの見学に行ったがわからない・できない」「保護者からの要望を負担に感じる」といった声が地域支援の中ではよく聞かれ,医療機関での指導内容が教育機関に十分に伝わっていないと感じることが多い。地域校への支援は,学校生活や授業を理解し,教員が実施可能な支援方法を具体的に提示し,定期的な支援方法の見直しが大切であると考える。特別支援学校のセンター的役割の中には,子どもへの支援だけでなく,教員の相談や研修指導,福祉・医療などの関係機関との連絡・調整が含まれている。教育機関に所属する理学療法士だからこそ,校内での実践を地域支援にも活用し,医療機関との連携の窓口としての役割を果たすことができたと今回の事例を通じて考えている。
【理学療法学研究としての意義】
特別支援学校内に校内専門家として理学療法士が勤務することで,校内での特別支援教育「自立活動」の専門性を担うだけでなく,その専門性を校外の地域支援にも活かしていけることが示せた。今後の特別支援学校における理学療法士の職域拡大に繋がる意義があるものと考える。