[1216] 足趾筋力と立位および歩行の関係
Keywords:足趾把持力, 足趾圧迫力, 歩行
【はじめに】
足趾機能が姿勢制御に重要な役割を果たしていることは多くの報告がなされている(木藤ら2001,村田ら2003,福田ら2008)。足趾機能の指標としては,足趾を握る把持力,床を押す圧迫力などが挙げられる。これらの足趾筋力と静的バランスに関する報告は散見されているが,歩行などの動作への関与が十分に調べられていない。
したがって,本研究は足趾把持力・圧迫力と立位のみでなく歩行の関係を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は健常な若年者34名68肢とし足趾筋力(把持・圧迫)および立位と歩行の計測を行った。対象者の内訳は男性12名・女性22名,年齢20.8±1.1歳,身長163.6±7.3cm,体重57.6±7.3kgであった。
立位と歩行の計測は歩行解析用フォースプレートZebrisFDM system(Zebris medical社製)を用いた。立位は足角,足幅などを規定し,30秒間計測した。そして,第5中足骨底を基準に分けた前足部と後足部の荷重比(前足部荷重量/後足部荷重量)を算出した。歩行は自然歩行とし,左右各6歩分のデータを得た。出力されたデータを平均し,ステップ長およびストライド長は身長比,立脚初期の床反力鉛直成分の極大値(Max Heel Force:MHF),および立脚後期の床反力鉛直成分の極大値(Max Toe Forcxe:MTF)は体重比,立脚期COP移動距離(Gait Line Length:GLL),および単脚支持期COP移動距離(Single Support Line:SSL)は足長比を代表値とした。
足趾把持力は足指筋力計測器T.K.K3364(竹井機器工業社製)を用い,圧迫力は徒手筋力計MT-100(酒井医療社製)と自作した台を用いて計測した。計測肢位は股・膝関節屈曲90度,足関節底背屈中間位の端座位とし,最大筋力を2回計測した平均の体重比を代表値とした。
データの正規性はShapiro-Wilk検定で確認した。足趾筋力と立位,歩行パラメータの関係はPearsonの積率相関係数を用いて検討した。尚,全ての検定は危険率5%未満をもって有意とした。
【説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づいて,対象者全員に本研究の趣旨と方法を十分説明し,研究協力への同意を得た。
【結果】
足趾把持力は平均26.6±10.7%BW,足趾圧迫力は平均8.0±3.5%BWであった。
足趾筋力と立位パラメータの関係は,把持力と前足部荷重率に有意な正の相関を認めた(r=0.37)。足趾筋力と歩行パラメータの関係は,把持力とMHF(r=0.36),およびMTF(r=0.35)に有意な相関を認めた。足趾圧迫力と立位・歩行パラメータは,有意な相関を認めなかった。
【考察】
本研究の結果より,足趾把持力が強いと立位において前足部荷重率が増加し,歩行においては立脚初期・後期の床反力が増大することが分かった。足趾圧迫力は立位,歩行に明確な関与を認めなかった。
前足部での荷重量の増大は,足関節底屈モーメントの増大,すなわち足関節底屈筋の活動の増大を意味している(江原ら2002)。足趾把持力は足部外在筋である長趾屈筋,長母趾屈筋などの足関節底屈作用を有する筋の収縮によって生じるため,把持力が強い者は足関節底屈モーメントも大きいと推察される。これにより,本研究では足趾把持力と立位における前足部荷重比に関連が認められたと考える。
また,足趾把持力の計測に際して,前述した足部外在筋の収縮による足関節底屈作用に対して前脛骨筋(以下,TA)が同時収縮することで,足関節肢位を保ちつつ足趾が把持できる(相馬ら2013)。したがって,足趾把持力の発揮にはTAの収縮が必要である。TAは,距腿関節背屈と距骨下関節回外の作用がある。距腿関節の背屈により,距骨滑車の前方は凹状の脛腓構成部に楔としてはまり込む。また,距骨下関節回外により横足根関節の可動性は減少する。これによって,日常的にTAの活動が強いと足部の剛性が高まり,歩行立脚初期および後期に大きな床反力を発生させることができると考える。以上より,足趾把持力とMHF,MTFは,TAを背景因子として正の相関がみられたと考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究において認められた足趾把持力と歩行の関係は,TAの作用を介するものと考察した。今後,荷重時,非荷重時のTAの筋活動を計測することによってTAと足趾筋力の関係性,さらには足趾筋力と歩行の関係性を追求することが可能となりうると考える。
足趾機能が姿勢制御に重要な役割を果たしていることは多くの報告がなされている(木藤ら2001,村田ら2003,福田ら2008)。足趾機能の指標としては,足趾を握る把持力,床を押す圧迫力などが挙げられる。これらの足趾筋力と静的バランスに関する報告は散見されているが,歩行などの動作への関与が十分に調べられていない。
したがって,本研究は足趾把持力・圧迫力と立位のみでなく歩行の関係を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は健常な若年者34名68肢とし足趾筋力(把持・圧迫)および立位と歩行の計測を行った。対象者の内訳は男性12名・女性22名,年齢20.8±1.1歳,身長163.6±7.3cm,体重57.6±7.3kgであった。
立位と歩行の計測は歩行解析用フォースプレートZebrisFDM system(Zebris medical社製)を用いた。立位は足角,足幅などを規定し,30秒間計測した。そして,第5中足骨底を基準に分けた前足部と後足部の荷重比(前足部荷重量/後足部荷重量)を算出した。歩行は自然歩行とし,左右各6歩分のデータを得た。出力されたデータを平均し,ステップ長およびストライド長は身長比,立脚初期の床反力鉛直成分の極大値(Max Heel Force:MHF),および立脚後期の床反力鉛直成分の極大値(Max Toe Forcxe:MTF)は体重比,立脚期COP移動距離(Gait Line Length:GLL),および単脚支持期COP移動距離(Single Support Line:SSL)は足長比を代表値とした。
足趾把持力は足指筋力計測器T.K.K3364(竹井機器工業社製)を用い,圧迫力は徒手筋力計MT-100(酒井医療社製)と自作した台を用いて計測した。計測肢位は股・膝関節屈曲90度,足関節底背屈中間位の端座位とし,最大筋力を2回計測した平均の体重比を代表値とした。
データの正規性はShapiro-Wilk検定で確認した。足趾筋力と立位,歩行パラメータの関係はPearsonの積率相関係数を用いて検討した。尚,全ての検定は危険率5%未満をもって有意とした。
【説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づいて,対象者全員に本研究の趣旨と方法を十分説明し,研究協力への同意を得た。
【結果】
足趾把持力は平均26.6±10.7%BW,足趾圧迫力は平均8.0±3.5%BWであった。
足趾筋力と立位パラメータの関係は,把持力と前足部荷重率に有意な正の相関を認めた(r=0.37)。足趾筋力と歩行パラメータの関係は,把持力とMHF(r=0.36),およびMTF(r=0.35)に有意な相関を認めた。足趾圧迫力と立位・歩行パラメータは,有意な相関を認めなかった。
【考察】
本研究の結果より,足趾把持力が強いと立位において前足部荷重率が増加し,歩行においては立脚初期・後期の床反力が増大することが分かった。足趾圧迫力は立位,歩行に明確な関与を認めなかった。
前足部での荷重量の増大は,足関節底屈モーメントの増大,すなわち足関節底屈筋の活動の増大を意味している(江原ら2002)。足趾把持力は足部外在筋である長趾屈筋,長母趾屈筋などの足関節底屈作用を有する筋の収縮によって生じるため,把持力が強い者は足関節底屈モーメントも大きいと推察される。これにより,本研究では足趾把持力と立位における前足部荷重比に関連が認められたと考える。
また,足趾把持力の計測に際して,前述した足部外在筋の収縮による足関節底屈作用に対して前脛骨筋(以下,TA)が同時収縮することで,足関節肢位を保ちつつ足趾が把持できる(相馬ら2013)。したがって,足趾把持力の発揮にはTAの収縮が必要である。TAは,距腿関節背屈と距骨下関節回外の作用がある。距腿関節の背屈により,距骨滑車の前方は凹状の脛腓構成部に楔としてはまり込む。また,距骨下関節回外により横足根関節の可動性は減少する。これによって,日常的にTAの活動が強いと足部の剛性が高まり,歩行立脚初期および後期に大きな床反力を発生させることができると考える。以上より,足趾把持力とMHF,MTFは,TAを背景因子として正の相関がみられたと考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究において認められた足趾把持力と歩行の関係は,TAの作用を介するものと考察した。今後,荷重時,非荷重時のTAの筋活動を計測することによってTAと足趾筋力の関係性,さらには足趾筋力と歩行の関係性を追求することが可能となりうると考える。