[1217] 足趾把持エクササイズと圧迫エクササイズが歩行に与える影響
Keywords:足趾筋力, エクササイズ, 歩行
【はじめに,目的】
姿勢制御において足趾機能は重要な役割を果たしている。足指機能の指標としては,足趾把持力・圧迫力が挙げられ,これらのエクササイズ(以下,Ex)効果に関する報告は散見される(山本2008,吉本ら2007)。しかし,そのほとんどが静的バランスに対する効果をみた研究であり,歩行などの動作への関与は十分に調べられていない。そこで本研究は足趾筋力エクササイズが,歩行に与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は健常若年者34名(男性12名・女性22名,年齢20.8±1.1歳,身長163.6±7.3cm,体重57.6±7.3kg)とした。歩行の計測後に足趾筋力の計測,および足趾筋力Exを行い,その後再び歩行を計測した。
歩行の計測は歩行解析用フォースプレートZebrisFDM system(Zebris medical社製)を用いた。計測課題は自然歩行とし,左右各6歩分のデータを得た。出力されたデータを平均し,立脚初期の床反力鉛直成分の極大値(Max Heel Force:MHF)および立脚後期の床反力鉛直成分の極大値(Max Toe Forcxe:MTF)は体重比,立脚期のCOP移動距離(Gait Line Length:GLL)および単脚支持期のCOP移動距離(Single Support Line:SSL)は足長比を代表値とした。
足趾把持力は足指筋力計測器T.K.K3364(竹井機器工業社製)を用い,圧迫力は徒手筋力計MT-100(酒井医療社製)を自作の台に設置して計測した。計測肢位は股・膝関節屈曲90度,足関節底背屈中間位の端座位とし,最大筋力を2回計測した平均の体重比を代表値とした。足趾筋力Exは把持Ex(以下,把持Ex群)と圧迫Ex(以下,圧迫Ex群)とし,対象者を無作為に2群に分けた。Exは足趾筋力の計測と同肢位で行い,最大筋力の60~80%の収縮と休息を5秒ずつ5セット繰り返した。Ex後に再び歩行の計測を行いEx前後の歩行パラメータの変化率を求めた。
データの正規性はShapiro-Wilk検定で確認した。足趾Exによる歩行の変化は対応のあるt検定,把持Exと圧迫Exによる歩行の変化率の比較は等分散性の確認後,対応のないt検定を用いた。尚,全ての検定は危険率5%未満をもって有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,対象者全員に本研究の趣旨と方法について十分説明し,研究協力への同意を得た。
【結果】
Ex前後での歩行パラメータを比較した結果,把持ExによりMHFは有意に増大し(p<0.01),SSLは有意に短縮した(p<0.01)。また,圧迫ExによりGLLは有意に延長した(p<0.05)。
把持Exと圧迫Exによる歩行パラメータ変化率を比較した結果,MHFのEx変化率は圧迫Ex群より把持Ex群で有意に大きかった(p<0.01)。SSLのEx変化率は圧迫Ex群よりも把持Ex群で有意に小さかった(p<0.01)。
【考察】
結果より,把持Exを行うとMHFが増大し,SSLが短縮することが分かった。足趾把持は,長趾屈筋,長母趾屈筋等の外在筋収縮により生じる。これらによる足関節底屈作用に対して前脛骨筋(以下,TA)が同時収縮することで,足関節肢位を保ちつつ足趾が把持できる(相馬ら2013)。TAは,距腿関節背屈と距骨下関節回外の作用がある。距骨下関節回外は,横足根関節の可動性を減少させることで足部の剛性を高める(Neumann DA 2005)ため,歩行立脚初期および後期に大きな床反力を発生させることができると考える。また,距骨下関節回外は立脚初期のCOPを早期に前方移動させる(入谷2009)ため,両脚支持期にCOPが前方移動した状態で単脚支持が開始されることになる。これらのことから,把持ExによってTAの活動が高まり,距骨下関節が回外しやすくなったことで,MHFの増大,およびSSLの短縮が生じたと考える。
また,本研究の結果から圧迫Exを行うことによってGLLが延長することが分かった。足趾圧迫は床面を押す運動であり,足趾圧迫力と立位におけるCOP前方移動距離は正の相関関係にある(辻野ら2007)。このことから,歩行時においても圧迫ExがCOPの前方移動を促したことによりGLLが延長したと考える。
さらに今回,把持Exは圧迫ExよりもMHFを増大させ,SSLを短縮させることが分かった。このことは前述した把持Exによる効果を裏付ける結果であると共に,把持Exと圧迫Exは歩行に対して異なる作用があることを証明するものである。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果より,把持Exと圧迫Exは歩行に対し異なる作用を有することが証明された。よって,治療目的によって足趾Exを選択する必要性があることが示された。
姿勢制御において足趾機能は重要な役割を果たしている。足指機能の指標としては,足趾把持力・圧迫力が挙げられ,これらのエクササイズ(以下,Ex)効果に関する報告は散見される(山本2008,吉本ら2007)。しかし,そのほとんどが静的バランスに対する効果をみた研究であり,歩行などの動作への関与は十分に調べられていない。そこで本研究は足趾筋力エクササイズが,歩行に与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は健常若年者34名(男性12名・女性22名,年齢20.8±1.1歳,身長163.6±7.3cm,体重57.6±7.3kg)とした。歩行の計測後に足趾筋力の計測,および足趾筋力Exを行い,その後再び歩行を計測した。
歩行の計測は歩行解析用フォースプレートZebrisFDM system(Zebris medical社製)を用いた。計測課題は自然歩行とし,左右各6歩分のデータを得た。出力されたデータを平均し,立脚初期の床反力鉛直成分の極大値(Max Heel Force:MHF)および立脚後期の床反力鉛直成分の極大値(Max Toe Forcxe:MTF)は体重比,立脚期のCOP移動距離(Gait Line Length:GLL)および単脚支持期のCOP移動距離(Single Support Line:SSL)は足長比を代表値とした。
足趾把持力は足指筋力計測器T.K.K3364(竹井機器工業社製)を用い,圧迫力は徒手筋力計MT-100(酒井医療社製)を自作の台に設置して計測した。計測肢位は股・膝関節屈曲90度,足関節底背屈中間位の端座位とし,最大筋力を2回計測した平均の体重比を代表値とした。足趾筋力Exは把持Ex(以下,把持Ex群)と圧迫Ex(以下,圧迫Ex群)とし,対象者を無作為に2群に分けた。Exは足趾筋力の計測と同肢位で行い,最大筋力の60~80%の収縮と休息を5秒ずつ5セット繰り返した。Ex後に再び歩行の計測を行いEx前後の歩行パラメータの変化率を求めた。
データの正規性はShapiro-Wilk検定で確認した。足趾Exによる歩行の変化は対応のあるt検定,把持Exと圧迫Exによる歩行の変化率の比較は等分散性の確認後,対応のないt検定を用いた。尚,全ての検定は危険率5%未満をもって有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,対象者全員に本研究の趣旨と方法について十分説明し,研究協力への同意を得た。
【結果】
Ex前後での歩行パラメータを比較した結果,把持ExによりMHFは有意に増大し(p<0.01),SSLは有意に短縮した(p<0.01)。また,圧迫ExによりGLLは有意に延長した(p<0.05)。
把持Exと圧迫Exによる歩行パラメータ変化率を比較した結果,MHFのEx変化率は圧迫Ex群より把持Ex群で有意に大きかった(p<0.01)。SSLのEx変化率は圧迫Ex群よりも把持Ex群で有意に小さかった(p<0.01)。
【考察】
結果より,把持Exを行うとMHFが増大し,SSLが短縮することが分かった。足趾把持は,長趾屈筋,長母趾屈筋等の外在筋収縮により生じる。これらによる足関節底屈作用に対して前脛骨筋(以下,TA)が同時収縮することで,足関節肢位を保ちつつ足趾が把持できる(相馬ら2013)。TAは,距腿関節背屈と距骨下関節回外の作用がある。距骨下関節回外は,横足根関節の可動性を減少させることで足部の剛性を高める(Neumann DA 2005)ため,歩行立脚初期および後期に大きな床反力を発生させることができると考える。また,距骨下関節回外は立脚初期のCOPを早期に前方移動させる(入谷2009)ため,両脚支持期にCOPが前方移動した状態で単脚支持が開始されることになる。これらのことから,把持ExによってTAの活動が高まり,距骨下関節が回外しやすくなったことで,MHFの増大,およびSSLの短縮が生じたと考える。
また,本研究の結果から圧迫Exを行うことによってGLLが延長することが分かった。足趾圧迫は床面を押す運動であり,足趾圧迫力と立位におけるCOP前方移動距離は正の相関関係にある(辻野ら2007)。このことから,歩行時においても圧迫ExがCOPの前方移動を促したことによりGLLが延長したと考える。
さらに今回,把持Exは圧迫ExよりもMHFを増大させ,SSLを短縮させることが分かった。このことは前述した把持Exによる効果を裏付ける結果であると共に,把持Exと圧迫Exは歩行に対して異なる作用があることを証明するものである。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果より,把持Exと圧迫Exは歩行に対し異なる作用を有することが証明された。よって,治療目的によって足趾Exを選択する必要性があることが示された。