[1607] 成長期腰椎分離症者におけるフォワードランジ動作について
キーワード:腰椎分離症, 成長期, 体幹伸展
【はじめに,目的】
腰椎分離症は体幹伸展と回旋の反復動作による疲労骨折とされており,成長期スポーツ障害の代表的疾患である。腰椎分離症に関して筋タイトネスなどの身体的要因に関する報告はされているが,動作に関する報告はみられない。また腰椎分離症の臨床所見として,スポーツ中の動作により腰痛が出現すると報告されている。スポーツ中の動作は切り返しや大きく前に踏み込む動作が多く,臨床ではフォワードランジ(以下;FL)で評価する場面が多い。そこで本研究では,成長期腰椎分離症者のフォワードランジ動作における体幹伸展角度の特徴と身体機能評価との関連について明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は運動部に所属している13-15歳の男子17名とし,腰椎分離症群(以下;分離群)とコントロール群に群分けした。分離群は11名(分離高位は第4腰椎3名,第5腰椎8名,分離側は右側4名,左側5名,両側2名),コントロール群は6名であった。対象者に対し,静止立位,FLを行ってもらった。静止立位は両上肢を前方で組ませ,両踵中央部を10cm離し,足角10度の両脚立位とした。FLは静止立位の状態から右側下肢を1m先へ踏み出し,その後右側下肢をもとの位置に戻し,静止立位の状態に戻るまでを1回とし,続けて5回試行した。ハイスピードカメラを対象者から右側へ2m,高さ1mのところに設定し,静止立位,FLを撮影した。得られた画像から画像解析ソフトImageJを使用し,体幹伸展角度を測定した。FL中の体幹伸展角度は1回のFL中の最大体幹伸展角度を測定し,5回の平均値を代表値とした。また静止立位とFLの体幹伸展角度の差を変化量と定義し,算出した。
身体機能評価として下肢関節・筋柔軟性と体幹機能を評価した。下肢関節・筋柔軟性は,関節可動域(股関節屈曲・伸展・足関節背屈),Finger-Floor Distance,Heal-Buttock Distance,Straight Leg Raisingを測定した。体幹機能はフロントブリッジでの最大保持時間を測定した。
統計処理にはSPSS ver.21.0 for Windowsを使用し,群間比較にはMann-WhitneyのU検定,群内比較にはWilcoxon順位付符号検定,体幹伸展角度と身体機能の相関関係にはSpearmanの順位相関係数を用いた。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者及び保護者に目的及び内容,対象者の有する権利について口頭にて十分説明を行い,書面にて同意を得た。
【結果】
分離群の静止立位の体幹伸展角度は24.04±7.66度,FLの体幹伸展角度は31.92±7.97度,FLと静止立位の体幹伸展角度の変化量は7.89±8.98度であり,FLと静止立位の間に有意差を認めた(p<0.05)。コントロール群の静止立位の体幹伸展角度は31.76±10.57度,FLの体幹伸展角度は23.11±10.53度,FLと静止立位の体幹伸展角度の変化量は-8.65±11.47度であった。FLと静止立位の体幹伸展角度の変化量はコントロール群に比べ分離群において有意に高値であった(p<0.05)。静止立位・FLの体幹伸展角度と身体機能の間には有意な相関関係は認められなかった。
【考察】
分離群では静止立位と比べてFL時に体幹伸展角度が大きかった。また,分離群ではコントロール群と比べてFLの体幹伸展方向の変化量が高値を示した。これより腰椎分離症者はFLの際に体幹伸展を大きくする特徴があることが考えられた。腰椎分離症に対する理学療法では体幹筋トレーニングや下肢筋へのストレッチングが一般的である。しかし,腰椎分離症が腰椎伸展・回旋の反復による疲労骨折である点や臨床所見として腰椎伸展時痛や動作時に疼痛が出現する点を考慮すると,腰椎分離症の理学療法において,動作時の体幹伸展の増大に対する介入を行う重要性が考えられた。
体幹伸展角度と身体機能の関連について本研究では,身体機能について分離群とコントロール群の間の有意差はなく,静止立位・FLの体幹伸展角度と身体機能の間に有意な相関関係は認められなかった。しかし,朝倉ら(2009)は一側下肢挙上でのフロントブリッジにて腰椎分離症者の体幹安定性の低下を認めたとしている。本研究では体幹機能を両側下肢接地でのフロントブリッジで評価し,体幹伸展角度と相関はなかったことから,腰椎分離症者では一側下肢挙上での体幹機能が低下していることが強く疑われる。また動作時における体幹伸展角度の増大がみられたことから,これらの結果を踏まえ,腰椎分離症者において動的な体幹機能が動作時の体幹伸展角度に及ぼす影響を今後検討することが重要であることが考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
腰椎分離症に対する理学療法を考える上で,動作時に生じる体幹伸展の増大を考慮して理学療法を展開していく必要性を示唆するものとして意義があると考える。
腰椎分離症は体幹伸展と回旋の反復動作による疲労骨折とされており,成長期スポーツ障害の代表的疾患である。腰椎分離症に関して筋タイトネスなどの身体的要因に関する報告はされているが,動作に関する報告はみられない。また腰椎分離症の臨床所見として,スポーツ中の動作により腰痛が出現すると報告されている。スポーツ中の動作は切り返しや大きく前に踏み込む動作が多く,臨床ではフォワードランジ(以下;FL)で評価する場面が多い。そこで本研究では,成長期腰椎分離症者のフォワードランジ動作における体幹伸展角度の特徴と身体機能評価との関連について明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は運動部に所属している13-15歳の男子17名とし,腰椎分離症群(以下;分離群)とコントロール群に群分けした。分離群は11名(分離高位は第4腰椎3名,第5腰椎8名,分離側は右側4名,左側5名,両側2名),コントロール群は6名であった。対象者に対し,静止立位,FLを行ってもらった。静止立位は両上肢を前方で組ませ,両踵中央部を10cm離し,足角10度の両脚立位とした。FLは静止立位の状態から右側下肢を1m先へ踏み出し,その後右側下肢をもとの位置に戻し,静止立位の状態に戻るまでを1回とし,続けて5回試行した。ハイスピードカメラを対象者から右側へ2m,高さ1mのところに設定し,静止立位,FLを撮影した。得られた画像から画像解析ソフトImageJを使用し,体幹伸展角度を測定した。FL中の体幹伸展角度は1回のFL中の最大体幹伸展角度を測定し,5回の平均値を代表値とした。また静止立位とFLの体幹伸展角度の差を変化量と定義し,算出した。
身体機能評価として下肢関節・筋柔軟性と体幹機能を評価した。下肢関節・筋柔軟性は,関節可動域(股関節屈曲・伸展・足関節背屈),Finger-Floor Distance,Heal-Buttock Distance,Straight Leg Raisingを測定した。体幹機能はフロントブリッジでの最大保持時間を測定した。
統計処理にはSPSS ver.21.0 for Windowsを使用し,群間比較にはMann-WhitneyのU検定,群内比較にはWilcoxon順位付符号検定,体幹伸展角度と身体機能の相関関係にはSpearmanの順位相関係数を用いた。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者及び保護者に目的及び内容,対象者の有する権利について口頭にて十分説明を行い,書面にて同意を得た。
【結果】
分離群の静止立位の体幹伸展角度は24.04±7.66度,FLの体幹伸展角度は31.92±7.97度,FLと静止立位の体幹伸展角度の変化量は7.89±8.98度であり,FLと静止立位の間に有意差を認めた(p<0.05)。コントロール群の静止立位の体幹伸展角度は31.76±10.57度,FLの体幹伸展角度は23.11±10.53度,FLと静止立位の体幹伸展角度の変化量は-8.65±11.47度であった。FLと静止立位の体幹伸展角度の変化量はコントロール群に比べ分離群において有意に高値であった(p<0.05)。静止立位・FLの体幹伸展角度と身体機能の間には有意な相関関係は認められなかった。
【考察】
分離群では静止立位と比べてFL時に体幹伸展角度が大きかった。また,分離群ではコントロール群と比べてFLの体幹伸展方向の変化量が高値を示した。これより腰椎分離症者はFLの際に体幹伸展を大きくする特徴があることが考えられた。腰椎分離症に対する理学療法では体幹筋トレーニングや下肢筋へのストレッチングが一般的である。しかし,腰椎分離症が腰椎伸展・回旋の反復による疲労骨折である点や臨床所見として腰椎伸展時痛や動作時に疼痛が出現する点を考慮すると,腰椎分離症の理学療法において,動作時の体幹伸展の増大に対する介入を行う重要性が考えられた。
体幹伸展角度と身体機能の関連について本研究では,身体機能について分離群とコントロール群の間の有意差はなく,静止立位・FLの体幹伸展角度と身体機能の間に有意な相関関係は認められなかった。しかし,朝倉ら(2009)は一側下肢挙上でのフロントブリッジにて腰椎分離症者の体幹安定性の低下を認めたとしている。本研究では体幹機能を両側下肢接地でのフロントブリッジで評価し,体幹伸展角度と相関はなかったことから,腰椎分離症者では一側下肢挙上での体幹機能が低下していることが強く疑われる。また動作時における体幹伸展角度の増大がみられたことから,これらの結果を踏まえ,腰椎分離症者において動的な体幹機能が動作時の体幹伸展角度に及ぼす影響を今後検討することが重要であることが考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
腰椎分離症に対する理学療法を考える上で,動作時に生じる体幹伸展の増大を考慮して理学療法を展開していく必要性を示唆するものとして意義があると考える。