[1612] 徒手的理学療法従事者がイメージする筋硬結の形と性状
キーワード:筋硬結, 触診, 評価
【はじめに,目的】
筋筋膜性疼痛を治療対象とする徒手的理学療法においては,筋内に存在する帯状あるいは結節状のしこり(筋硬結)を正確に評価する必要がある。しかし,触診による筋硬結の評価は検者間再現性に欠けるとの報告が散在する。筋硬結の実体が明らかにされておらず,触診技術が熟練者からの指導や自らの経験の積み重ねによって習得するほかない状況のなかで,徒手的理学療法従事者同士がイメージする筋硬結の形や性状が異なっていては筋硬結評価の検者間再現性の向上は望めない。そこで,徒手的理学療法従事者がイメージする筋硬結の形と性状を調査し,その結果を提示することで,徒手的理学療法従事者同士の筋硬結に対するイメージの共有を推進できる。本研究では徒手的理学療法従事者にアンケートを行い,平均的な筋硬結の形と性状についての結果を得た。また,さらなる詳細な分析を継続中であるので,その経過について報告する。
【方法】
対象は徒手的理学療法に従事する理学療法士,作業療法士,柔道整復師等63人である。平均年齢は30.8±7.6歳であり,平均臨床経験年数は6.3±5.9年であった。ほとんどの対象者がほぼ毎日徒手的理学療法に従事していた。調査方法は紙面によるアンケート調査である。具体的には,筋硬結の探索部位を臀部のうち上前腸骨棘と上後腸骨棘との中点に位置する部位(中殿筋存在部位)と規定したうえで,対象者に臨床で遭遇する機会の多い筋硬結を体表面からみたときの形を実物大で描いてもらった。その際,筋硬結の大きさを測定できるよう,筋硬結の輪郭を一筆書きで描いてもらうよう促した。また,筋硬結の厚さはどの程度か,筋硬結の硬さは周囲の正常な筋の硬さの何倍程度か,筋硬結が存在する深さは筋の厚さのうちのどのあたりか,筋硬結の性状を物に例えると何に似ているか,筋硬結の性状を擬音語・擬態語で表現すると何になるのかについて回答してもらった。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は筆頭演者が所属する研究倫理委員会の承認を受けている。対象者には研究内容に関する説明を口頭または書面にて行い,理解を得た上で同意書による承諾を得た。
【結果】
対象者が描いた筋硬結の輪郭の頭尾方向の長さと内外側方向の長さを計測した。その結果,頭尾方向の長さは平均28.9±16.1 mm,内外側方向の長さは平均17.1±8.6 mmであった。また,筋硬結の厚さに関する回答を平均すると13.2±31.5 mmであった。しかし,回答の中には極端に平均値と異なる値が含まれていたため,これらを外れ値として除外した結果,標準的な筋硬結の頭尾方向の長さは22.9 mm,内外側方向の長さは16.8 mm,厚さは7.2 mmと算出された。筋硬結の硬さは周囲の正常な筋の何倍程度と感じているかという問いに対する回答を平均すると,1.78±0.7倍であった。また,筋硬結が存在する深さに対する回答を平均すると,筋の厚さのうち筋の浅層面から約4割深部へ向かった位置であった。筋硬結の性状を物に例えた場合,「消しゴム」「石」などかなり印象の異なる回答が得られた。また,筋硬結の性状を擬音語・擬態語で表現すると,「コリコリ」が約30%と最も多く,「ゴリゴリ」「コリッ」「コロコロ」がその後に続いた。
【考察】
本調査の結果,徒手的理学療法の従事者が治療対象とする機会の多い筋硬結は,筋の厚さの中央部よりやや浅部に存在し,硬さが周囲の正常な筋の約1.78倍であるアーモンド形状のものであり,「コリコリ」とした触察感を示すものをイメージすると分かりやすいかもしれない。しかし。筋硬結のイメージには大きなばらつきが存在することも明らかとなり,得られた回答すべての平均的な結果を標準的な筋硬結のイメージとしてしまうよりは,いくつかのグループに分類することが適切である。今後,より詳細な分析を進めていく計画である。
【理学療法学研究としての意義】
徒手的理学療法従事者がイメージする筋硬結の形と性状を明らかにした。この結果を参考にして,徒手的理学療法従事者同士が探索対象のイメージを統一させることで,触診を用いた筋硬結の評価の検者間再現性の向上,ひいては徒手的理学療法の発展に寄与するものと考える。
筋筋膜性疼痛を治療対象とする徒手的理学療法においては,筋内に存在する帯状あるいは結節状のしこり(筋硬結)を正確に評価する必要がある。しかし,触診による筋硬結の評価は検者間再現性に欠けるとの報告が散在する。筋硬結の実体が明らかにされておらず,触診技術が熟練者からの指導や自らの経験の積み重ねによって習得するほかない状況のなかで,徒手的理学療法従事者同士がイメージする筋硬結の形や性状が異なっていては筋硬結評価の検者間再現性の向上は望めない。そこで,徒手的理学療法従事者がイメージする筋硬結の形と性状を調査し,その結果を提示することで,徒手的理学療法従事者同士の筋硬結に対するイメージの共有を推進できる。本研究では徒手的理学療法従事者にアンケートを行い,平均的な筋硬結の形と性状についての結果を得た。また,さらなる詳細な分析を継続中であるので,その経過について報告する。
【方法】
対象は徒手的理学療法に従事する理学療法士,作業療法士,柔道整復師等63人である。平均年齢は30.8±7.6歳であり,平均臨床経験年数は6.3±5.9年であった。ほとんどの対象者がほぼ毎日徒手的理学療法に従事していた。調査方法は紙面によるアンケート調査である。具体的には,筋硬結の探索部位を臀部のうち上前腸骨棘と上後腸骨棘との中点に位置する部位(中殿筋存在部位)と規定したうえで,対象者に臨床で遭遇する機会の多い筋硬結を体表面からみたときの形を実物大で描いてもらった。その際,筋硬結の大きさを測定できるよう,筋硬結の輪郭を一筆書きで描いてもらうよう促した。また,筋硬結の厚さはどの程度か,筋硬結の硬さは周囲の正常な筋の硬さの何倍程度か,筋硬結が存在する深さは筋の厚さのうちのどのあたりか,筋硬結の性状を物に例えると何に似ているか,筋硬結の性状を擬音語・擬態語で表現すると何になるのかについて回答してもらった。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は筆頭演者が所属する研究倫理委員会の承認を受けている。対象者には研究内容に関する説明を口頭または書面にて行い,理解を得た上で同意書による承諾を得た。
【結果】
対象者が描いた筋硬結の輪郭の頭尾方向の長さと内外側方向の長さを計測した。その結果,頭尾方向の長さは平均28.9±16.1 mm,内外側方向の長さは平均17.1±8.6 mmであった。また,筋硬結の厚さに関する回答を平均すると13.2±31.5 mmであった。しかし,回答の中には極端に平均値と異なる値が含まれていたため,これらを外れ値として除外した結果,標準的な筋硬結の頭尾方向の長さは22.9 mm,内外側方向の長さは16.8 mm,厚さは7.2 mmと算出された。筋硬結の硬さは周囲の正常な筋の何倍程度と感じているかという問いに対する回答を平均すると,1.78±0.7倍であった。また,筋硬結が存在する深さに対する回答を平均すると,筋の厚さのうち筋の浅層面から約4割深部へ向かった位置であった。筋硬結の性状を物に例えた場合,「消しゴム」「石」などかなり印象の異なる回答が得られた。また,筋硬結の性状を擬音語・擬態語で表現すると,「コリコリ」が約30%と最も多く,「ゴリゴリ」「コリッ」「コロコロ」がその後に続いた。
【考察】
本調査の結果,徒手的理学療法の従事者が治療対象とする機会の多い筋硬結は,筋の厚さの中央部よりやや浅部に存在し,硬さが周囲の正常な筋の約1.78倍であるアーモンド形状のものであり,「コリコリ」とした触察感を示すものをイメージすると分かりやすいかもしれない。しかし。筋硬結のイメージには大きなばらつきが存在することも明らかとなり,得られた回答すべての平均的な結果を標準的な筋硬結のイメージとしてしまうよりは,いくつかのグループに分類することが適切である。今後,より詳細な分析を進めていく計画である。
【理学療法学研究としての意義】
徒手的理学療法従事者がイメージする筋硬結の形と性状を明らかにした。この結果を参考にして,徒手的理学療法従事者同士が探索対象のイメージを統一させることで,触診を用いた筋硬結の評価の検者間再現性の向上,ひいては徒手的理学療法の発展に寄与するものと考える。