第50回日本理学療法学術大会

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口述

参加型症例研究ディスカッション 口述9

高次脳機能障害

Sat. Jun 6, 2015 5:30 PM - 6:30 PM 第6会場 (ホールD7)

座長:杉本諭(東京医療学院大学), 土山裕之(神奈川リハビリテーション病院 リハビリテーション局理学療法科)

[O-0569] Pusher現象に対して認知課題を通した体性感覚情報処理へのアプローチによって身体垂直性の改善が得られた症例

後藤圭介1, 鈴木隼人1, 秋月三奈1, 長谷川三希子1, 池田由美2, 猪飼哲夫3 (1.東京女子医科大学病院リハビリテーション部, 2.首都大学東京大学院人間健康科学研究科, 3.東京女子医科大学病院リハビリテーション科)

Keywords:脳梗塞, 注意障害, 姿勢制御

【目的】今回,脳梗塞左片麻痺に随伴してPusher現象を呈した患者に対して,座位姿勢の垂直性を保つために必要な体性感覚情報の処理過程に着目して治療を行った結果,座位安定性の改善がみられたので報告する。
【症例提示】70歳代,男性。脳梗塞左片麻痺(右被殻~放線冠)。介入期間は第7病日からPT・OT・ST介入し,第47病日に転院するまでの期間実施した。初期評価時のBrunnstrom Recovery Stage(BRS)は,上肢I手指I下肢II。表在・深部感覚ともに中等度鈍麻。高次脳機能障害は注意障害,左半側空間無視を示した。筋緊張は麻痺側の体幹・上下肢ともに低緊張を示した。動作は非麻痺側上下肢を過剰に使用し,非麻痺側への重心移動は難しく,端座位は軽介助,移乗動作,立位動作は重度介助を要した。Scale of Contraversive Pushing(SCP)は5.25点であった。
座位姿勢の評価として三次元動作解析装置ローカス3D MA-3000(ANIMA社製)と体圧分布測定システムBody Pressure Measurement System(ニッタ株式会社製)を用いた。
【経過と考察】本症例は,麻痺側へ傾斜した姿勢を自己修正することは困難で,他動的に修正しても姿勢に対する注意が持続せず,麻痺側に崩れる傾向にあった。治療介入は身体で認知される体性感覚情報から垂直性を学習し,座位姿勢の安定化を目標に,身体各部位の空間的な位置関係の認識や認知課題を通して左右の身体の比較課題などを実施した。最終評価時にはBRS上肢III手指III下肢IIIに改善。座位姿勢の崩れは自己にて修正が可能となり,座位での活動性は向上した。三次元動作解析による座位姿勢の評価では,垂直軸に対する体幹の傾きは麻痺側に0.85±0.27°であり初期と比較して改善した。また,座位での体圧は非麻痺側の過剰な活動が抑制され,左右差の減少が認められた。SCPは3.00点に改善した。しかし,立位・歩行などの身体活動ではPushingが残存し,更なる機能回復には治療の再検討が必要であった。