第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述87

ICU・その他

Sun. Jun 7, 2015 8:30 AM - 9:30 AM 第9会場 (ガラス棟 G409)

座長:瀬崎学(新潟県立新発田病院 リハビリテーション科)

[O-0656] コメディカルスタッフから主治医への理学療法開始提案は人工呼吸器装着患者の早期離床につながるか?

佐々木康介1, 皿田和宏2, 對東俊介2, 河江敏広2, 関川清一1, 和田美咲3, 渡邉多恵1, 廣橋伸之4, 谷川攻一4, 伊藤義広2, 木村浩彰5, 片岡健1 (1.広島大学大学院医歯薬保健学研究科, 2.広島大学病院診療支援部リハビリテーション部門, 3.広島大学病院看護部, 4.広島大学病院高度救命救急センター・集中治療部, 5.広島大学病院リハビリテーション科)

Keywords:人工呼吸器装着患者, 早期離床, 多職種連携

【はじめに,目的】
多職種連携により集中治療病棟において早期リハビリテーションや早期離床を実現することができ,重症患者の身体機能を向上させると報告されている。当院では高度救命救急センター(以下,センター)に理学療法士が専従しており,理学療法士や看護師などのコメディカルスタッフから主治医へリハビリテーション開始提案を行い,早期リハビリテーション介入の実現を目指している。しかしコメディカルスタッフによる主治医へのリハビリテーション介入の提案が,リハビリテーション開始時期や早期離床,入室期間に及ぼす効果は不明である。本研究の目的は,理学療法士や看護師から医師へリハビリテーション開始を提案することにより,リハビリテーション開始までの日数,離床開始までの日数を短縮し,センター入室期間に影響するかを明らかにすることである。
【方法】
2011年4月1日から2014年3月31日までにセンターに入室し,24時間以上人工呼吸器を装着し,理学療法を実施した309名を対象とした。これを医師の指示のみでリハビリテーションを開始した群(対照群)と,医師の指示に加えて,理学療法士や看護師から医師へのリハビリテーション開始提案を行った群(提案群)の二群に分け,比較検討した。比較項目は,対象者の基本属性,センター入室時のAcute Physiology and Chronic Health Evaluation II(APACHE II)スコア,センター入室から理学療法開始までの日数,センター入室から離床開始までの日数,センター入室期間とし,診療記録より後方視的に調査した。離床開始は,端坐位,車椅子坐位,立位,歩行のいずれかを開始した時点と定義した。理学療法介入として,呼吸理学療法,関節可動域運動,離床;端坐位,車椅子坐位,立位,歩行を実施した。統計学的解析は対照群,提案群における各検討項目の比較を対応のないt検定もしくはMann-WhitneyのU検定を用いて行った。いずれの解析においても危険率5%未満を有意とした。
【結果】
対照群94名,提案群215名であった。センター入室時のAPACHEIIスコアに二群間で有意差を認めなかった。センター入室から理学療法開始までの日数は提案群の方で有意に短く(対照群8.5±6.6日vs.提案群3.7±2.6日:p<0.05),センター入室から離床開始までの日数も提案群の方が有意に短かった(対照群13.8±10.9日vs.提案群9.1±7.3日:p<0.05)。センター入室期間は提案群の方で有意に短かった(対照群23.2±17.1日vs.提案群14.4±10.6日:p<0.05)。
【考察】
対照群に比べて提案群の方が,理学療法開始がより早く,センター入室から離床までの日数が短くなり,センター入室期間が短かった。人工呼吸器装着患者では離床が遅延するほど,機能回復が遅くなることが報告されている。一方で,コメディカルスタッフが中心となって離床プログラムを進めることで,早期の理学療法介入が可能となり,集中治療病棟入室期間が短縮したという報告がある。早期理学療法介入により早期離床を図れたことで重症患者の身体機能回復を促進し,センター入室期間が短縮した可能性が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果より,高度救命救急センターに入室し24時間以上人工呼吸器を装着した重症患者に対して,理学療法士や看護師をはじめとするコメディカルスタッフからリハビリテーション開始提案を行うことで,理学療法開始の早期化および離床促進を図ることができ,センター入室期間の短縮に寄与する可能性が示唆された。