[O-0820] 寝たきり状態から地域での社会参加まで促すことができた化膿性脊椎炎を呈した70代男性
キーワード:地域リハビリテーション, 社会参加, 目標志向的アプローチ
【はじめに,目的】
当院では,障害者が住み慣れた地域社会で安心して質の高い生活が送れるよう,ICF(国際生活機能分類:International Classification of Functioning,Disability and Health)の概念に基づいて,個別・集団・社会リハビリテーションを提供している。今回,化膿性脊椎炎により寝たきりとなっていた症例が,理学療法の実施により,自主的に地域での社会参加するまで至ったので,ここに報告する。
【方法】
本症例(男性)は,初期評価時は72歳,要介護4であり,既往は平成18年に肺癌の摘出術が施行され,現在に至るまで再発していない。平成22年8月16日に坐骨神経痛と腰背部痛により,寝たきりとなっていた。往診により当院医師が診察した結果,化膿性脊椎炎と診断され,保存療法が選択された。平成22年9月22日から介護保険による当院の訪問リハビリテーションが週2回開始された。平成23年4月6日,閉じこもり改善のため,週2回の通所リハビリテーションへ移行し,平成25年4月1日より,地域での社会参加を促すための社会リハビリテーションへ段階的に移行し現在に至っている。
訪問リハビリテーションでは,個別リハビリテーションにて,疼痛管理やADL(日常生活活動:Activities of Daily Living)トレーニングを,通所リハビリテーションでは,個別リハビリテーションにてADL・IADL(手段的日常生活活動:Instrumental Activities of Daily Living)トレーニングに加え,集団リハビリテーションでの自主トレーニング指導や外出支援プログラムなどを実施した。社会リハビリテーションでは,一般市民に交じり農業体験や料理教室,地域イベントへの出展参加などを促した。また,訪問リハビリテーションでは,「プロセス志向的アプローチ」を,通所および社会リハビリテーションでは,「目標志向的アプローチ」を中心に実施した。アプローチの効果は,初期評価時,訪問リハビリテーション終了時(通所リハビリテーション移行時),社会リハビリテーション移行時,現在(平成26年8月15日)におけるBBS(Berg Balance Scale),FIM(Functional Independence Measure),SF-36(Medical Outcomes Study Short-Form 36-Item Health Survey),LSA(Life-Space Assessment)を用いて検証した。
【結果】
初期評価時は,BBSは8点,FIMは71点,SF-36は17.8点,LSAは4点であったが,訪問リハビリテーション終了時には,BBSは46点,FIMは124点,SF-36は36.0点,LSAは11点となり,自宅内でのADLが自立した。また,社会リハビリテーション移行時は,BBSは48点,FIMは125点,SF-36は40.0点,LSAは34点であったが,現在,BBSは51点,FIMは125点,SF-36は42.6点,LSAは60.5点となり,閉じこもりも解消され,介護度も要支援2に改善した。
【考察】
今回,寝たきり・閉じこもり状態の症例に対して,ICFの概念に基づくリハビリテーションを,理学療法アプローチを通して実施した。本症例に対しては,訪問リハビリテーションによる介入当初は,「参加」に対する目標を設定せずに,症例の日々の生活やリハビリテーションのプロセス一つ一つを大切にする「プロセス志向的アプローチ」を行い,心身機能やADLの向上に伴い,「参加」での目標を設定した「目標志向的アプローチ」へと移行し支援した。昨今,「目標志向的アプローチ」が主流となってきているが,本症例での理学療法の経験を通して,「目標」と「プロセス」の両方のバランスのとれたアプローチが重要であると考えた。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法士が関わる介護分野における介入研究は,一次予防対象者が中心であり,重度要介護認定者(要介護4又は5)に対する介入研究の報告数は少ない。今後,本症例のような重度要介護認定者に対する理学療法の介入研究を増やすことで,地域リハビリテーション分野における理学療法のエビデンス構築に寄与することが考えられる。
当院では,障害者が住み慣れた地域社会で安心して質の高い生活が送れるよう,ICF(国際生活機能分類:International Classification of Functioning,Disability and Health)の概念に基づいて,個別・集団・社会リハビリテーションを提供している。今回,化膿性脊椎炎により寝たきりとなっていた症例が,理学療法の実施により,自主的に地域での社会参加するまで至ったので,ここに報告する。
【方法】
本症例(男性)は,初期評価時は72歳,要介護4であり,既往は平成18年に肺癌の摘出術が施行され,現在に至るまで再発していない。平成22年8月16日に坐骨神経痛と腰背部痛により,寝たきりとなっていた。往診により当院医師が診察した結果,化膿性脊椎炎と診断され,保存療法が選択された。平成22年9月22日から介護保険による当院の訪問リハビリテーションが週2回開始された。平成23年4月6日,閉じこもり改善のため,週2回の通所リハビリテーションへ移行し,平成25年4月1日より,地域での社会参加を促すための社会リハビリテーションへ段階的に移行し現在に至っている。
訪問リハビリテーションでは,個別リハビリテーションにて,疼痛管理やADL(日常生活活動:Activities of Daily Living)トレーニングを,通所リハビリテーションでは,個別リハビリテーションにてADL・IADL(手段的日常生活活動:Instrumental Activities of Daily Living)トレーニングに加え,集団リハビリテーションでの自主トレーニング指導や外出支援プログラムなどを実施した。社会リハビリテーションでは,一般市民に交じり農業体験や料理教室,地域イベントへの出展参加などを促した。また,訪問リハビリテーションでは,「プロセス志向的アプローチ」を,通所および社会リハビリテーションでは,「目標志向的アプローチ」を中心に実施した。アプローチの効果は,初期評価時,訪問リハビリテーション終了時(通所リハビリテーション移行時),社会リハビリテーション移行時,現在(平成26年8月15日)におけるBBS(Berg Balance Scale),FIM(Functional Independence Measure),SF-36(Medical Outcomes Study Short-Form 36-Item Health Survey),LSA(Life-Space Assessment)を用いて検証した。
【結果】
初期評価時は,BBSは8点,FIMは71点,SF-36は17.8点,LSAは4点であったが,訪問リハビリテーション終了時には,BBSは46点,FIMは124点,SF-36は36.0点,LSAは11点となり,自宅内でのADLが自立した。また,社会リハビリテーション移行時は,BBSは48点,FIMは125点,SF-36は40.0点,LSAは34点であったが,現在,BBSは51点,FIMは125点,SF-36は42.6点,LSAは60.5点となり,閉じこもりも解消され,介護度も要支援2に改善した。
【考察】
今回,寝たきり・閉じこもり状態の症例に対して,ICFの概念に基づくリハビリテーションを,理学療法アプローチを通して実施した。本症例に対しては,訪問リハビリテーションによる介入当初は,「参加」に対する目標を設定せずに,症例の日々の生活やリハビリテーションのプロセス一つ一つを大切にする「プロセス志向的アプローチ」を行い,心身機能やADLの向上に伴い,「参加」での目標を設定した「目標志向的アプローチ」へと移行し支援した。昨今,「目標志向的アプローチ」が主流となってきているが,本症例での理学療法の経験を通して,「目標」と「プロセス」の両方のバランスのとれたアプローチが重要であると考えた。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法士が関わる介護分野における介入研究は,一次予防対象者が中心であり,重度要介護認定者(要介護4又は5)に対する介入研究の報告数は少ない。今後,本症例のような重度要介護認定者に対する理学療法の介入研究を増やすことで,地域リハビリテーション分野における理学療法のエビデンス構築に寄与することが考えられる。