第50回日本理学療法学術大会

講演情報

ポスター

症例研究 ポスター4

神経/脳損傷4

2015年6月5日(金) 11:20 〜 12:20 ポスター会場 (展示ホール)

[P1-A-0057] 社会復帰に向けて取り組みを行った神経型Wilson病に対するリハビリテーションアプローチの一症例

畑原誠1, 田中有美1, 高群美和2, 遠近美和子1, 増田利佳1, 木村祥子1, 内海司1, 出村和彦1, 白銀隆宏1, 江頭誠1, 田中一成1 (1.箕面市立病院リハビリテーションセンター, 2.箕面市立病院神経内科)

キーワード:ウィルソン病, 学際的チームアプローチ, 治療的電気刺激療法

【目的】wilson病は極めて稀な疾患であり,本邦におけるリハビリテーション(以下,リハ)に関する報告もほとんど無い。特にリハの具体的な介入方法や機能予後,日常生活動作(以下ADL)自立獲得に向けた支援方策等に言及した報告も認めない。そこで我々は,2014年7月に第50回日本理学療法学術大会プレ・コングレスミーティングにて支援方策,介入方法,多職種が連携を行い学際的な取り組みを報告した。今回,前回の報告に加え,その後の社会復帰に向けた取り組みを報告する。
【症例提示】22歳女性。2011年12月20日神経型Wilson病を診断され当院入院。入院時,ジストニア,左下肢不全麻痺(屈曲パターン),知的退行等を認めた。入院時,歩行不能で基本動作全介助。バーセルインデックス(以下,BI)は10/100(排便,排尿管理介助)。知的精神機能は,発語困難で文字盤にて行い,母親への依存心が強く拒否あり評価や治療は難渋した。
【経過と考察】入院4病日目よりリハ開始。144病日に当院回復期リハへ転棟。181病日に自宅退院。退院時は会話による意志疎通可能。移動は車椅子。退院時BIは25/100(摂食部分介助,排尿自立,排便介助,移乗介助)。また,自立歩行目標に通院リハ継続。装具療法や治療的電気刺激療法等を実施。退院後1年4ヵ月後には自立歩行獲得(独歩・装具離脱)。BIは100/100。現在,2年10か月後ADL自立の活動範囲拡大を認める。屋外歩行自立や公共交通機関を利用した移動も可能。さらに社会復帰に向け小規模作業所から社会交流への関わりを持ち始める準備等の支援を継続している。wilson病は,特に肝型は早期診断・治療により機能予後は良い。しかし,神経型は,錐体外路症状を生じ精神症状も合併しADLやQOLの低下を著しくきたす。その為,リハによる中枢神経障害に対する残存機能の維持・改善や精神症状を考慮し,リハ算定基準の標準日数を超え長期に及ぶ支援方策等はADLやQOL向上に重要であった。