[P3-A-0917] 虚血モデルマウスにおけるビタミンC摂取が血管新生や酸化ストレスにおよぼす影響
キーワード:血管新生因子, 酸化ストレス, ビタミンC
【目的】閉塞性動脈硬化症(PAD)は,動脈閉塞により血管新生や酸化ストレスなどへの影響を引き起こす。また,ビタミンC(VC)などの摂取は血管新生を抑制する。本研究は,PADの生理的な病態に近いとされる下肢虚血モデルマウスを用い,VC摂取が酸化ストレスや血管新生因子におよぼす影響について検討する。【方法】対象はVCノックアウトマウス(SMP30/GNL,雄,以下VCマウス)9匹と野生マウス(C57BL/6NCr,雄,以下野生)12匹とし,週齢11週の時点で外科的処置(右大腿動脈結紮,切開のみを行うsham)を実施し,無作為にA群:VCマウス・大腿動脈結紮(n=5),B群:VCマウス・sham(n=4),C群:野生・大腿動脈結紮(n=6),D群:野生・sham(n=6)の4群に区分した。処置10日後にはと殺を行い,右ヒラメ筋を採取しリアルタイムPCR法にて血管内皮成長因子(VEGF)と線維芽細胞増殖因子(bFGF)を分析した。酸化ストレス防御系は,活性酸素・フリーラジカル分析装置(H&D社製FRAS4,FREE)を使用し,酸化ストレス度(d-ROM)と抗酸化力(BAP)を測定し,BAP/d-ROM比(潜在的抗酸化能)を算出した。d-ROMなどの測定には尾静脈を一部切開の上,採血を行い遠心分離後の血漿を用い,開始時(処置前)と処置24時間後(処置後),処置10日後(と殺時)の計3回実施した。処置前後にはサーモグラフィ(FLIR社製E60)による下肢の表面皮膚温の測定,と殺時には血漿より酸化ストレスマーカである8-OHdGとヘキサノイルリジン(HEL),プロパノイルリジン(PRL),LP Cholox test(LP)を測定した。全てのマウスは室温20±1℃,12時間(7-19時)の明暗周期の環境下で飼育し,固形飼料を自由摂取させ,行動に制限を設けなかった。なお,VCマウスは処置当日までVC 100%含有水を摂取させ,処置後にVC 0%含有水へと変更した。統計ソフトはSPSS(Ver21.0 for win)を用い,有意差の検定は分散分析やKruskal Wallis検定,多重比較,Mann-Whitney U検定を用いて行った。
【結果】表面皮膚温の処置前後の比較ではA群とB群,およびC群とD群をそれぞれ比較すると,A群とC群が有意な低下を認めた(共にp<0.05)。d-ROM値などの酸化ストレス防御系の推移は,処置後のBAP値と潜在的抗酸化能,と殺時のd-ROM値と潜在的抗酸化能において4群間に有意差を認めた(p<0.01~0.05)。なお,処置前においては4群間に有意差を認めなかった。と殺時において8-OHdGとLP,VEGF,bFGFの比較は,8-OHdGとbFGFのみ4群間に有意差を認め(p<0.01~0.05),B群とD群を比較するとD群が有意な低値を認めた(p<0.05)。ただし,A群とB群,およびC群とD群を比較すると,両群間に有意差を認めなかった。
【考察】今回,表面皮膚温においてA群とC群が有意な低下を認めたことから,大腿動脈の結紮により下肢虚血モデルの作製が考えられた。一般的に動脈閉塞は,骨格筋組織の酸素不足や虚血が惹起され,酸化ストレス防御系などに影響をおよぼす。今回,と殺時と処置後の潜在的抗酸化能においては4群間に有意差を認めたことから,動脈結紮による虚血やVC摂取が酸化ストレス度などに影響をおよぼした可能性が考えられた。また,処置前においてd-ROM値などは4群間において有意差を認めなかった。これは,対象とした異なったマウスにおいて酸化ストレス防御系に相違がないことが示された。野生マウスは生体内でVCを合成することができるが,VCマウスではVCの合成ができないため,経口摂取によりVCを摂取することで生体の恒常性を保つことが可能であると考えられた。今回,と殺時には8-OHdGとbFGFのみ4群間に有意差を認めた。つまり,B群は生体内のVC量に変化を生じ,DNAが酸化ストレスにより障害を受けて生成される8-OHdGに影響をおよぼした可能性が考えられた。しかし,体内のVCのwash-outには4週間程度の期間が必要であることから,A群とB群などの比較において変化を認めなかった可能性が推察された。また,血管の形成には多くの促進因子と抑制因子が関与し,段階的に調整をされていることから,酸化ストレスマーカと共に経時的な分析を検討する必要が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】本研究は,動脈閉塞に対する介入を検討するための基礎データとなる。
【結果】表面皮膚温の処置前後の比較ではA群とB群,およびC群とD群をそれぞれ比較すると,A群とC群が有意な低下を認めた(共にp<0.05)。d-ROM値などの酸化ストレス防御系の推移は,処置後のBAP値と潜在的抗酸化能,と殺時のd-ROM値と潜在的抗酸化能において4群間に有意差を認めた(p<0.01~0.05)。なお,処置前においては4群間に有意差を認めなかった。と殺時において8-OHdGとLP,VEGF,bFGFの比較は,8-OHdGとbFGFのみ4群間に有意差を認め(p<0.01~0.05),B群とD群を比較するとD群が有意な低値を認めた(p<0.05)。ただし,A群とB群,およびC群とD群を比較すると,両群間に有意差を認めなかった。
【考察】今回,表面皮膚温においてA群とC群が有意な低下を認めたことから,大腿動脈の結紮により下肢虚血モデルの作製が考えられた。一般的に動脈閉塞は,骨格筋組織の酸素不足や虚血が惹起され,酸化ストレス防御系などに影響をおよぼす。今回,と殺時と処置後の潜在的抗酸化能においては4群間に有意差を認めたことから,動脈結紮による虚血やVC摂取が酸化ストレス度などに影響をおよぼした可能性が考えられた。また,処置前においてd-ROM値などは4群間において有意差を認めなかった。これは,対象とした異なったマウスにおいて酸化ストレス防御系に相違がないことが示された。野生マウスは生体内でVCを合成することができるが,VCマウスではVCの合成ができないため,経口摂取によりVCを摂取することで生体の恒常性を保つことが可能であると考えられた。今回,と殺時には8-OHdGとbFGFのみ4群間に有意差を認めた。つまり,B群は生体内のVC量に変化を生じ,DNAが酸化ストレスにより障害を受けて生成される8-OHdGに影響をおよぼした可能性が考えられた。しかし,体内のVCのwash-outには4週間程度の期間が必要であることから,A群とB群などの比較において変化を認めなかった可能性が推察された。また,血管の形成には多くの促進因子と抑制因子が関与し,段階的に調整をされていることから,酸化ストレスマーカと共に経時的な分析を検討する必要が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】本研究は,動脈閉塞に対する介入を検討するための基礎データとなる。