[P3-B-0918] 糖尿病ラットの腎臓に関する運動効果
形態学的,及びAGEsとiNOSの免疫組織化学的分析
Keywords:2型糖尿病, ラット, 有酸素運動
【はじめに,目的】
AGEs(advanced glycation end-products)は糖尿病合併症において重要な因子の一つだと考えられている。腎臓はAGEsを代謝する重要な役割を果たしており,このような過剰な腎臓への負荷が糖尿病腎症の原因だとされている。その際,iNOS(inducible nitric oxide synthase)の誘導がAGEsやNF-κBを介して起こっている。
有酸素運動の実施は,血糖をインシュリン非依存的に細胞の中に取り込むことができるために,一般的に糖尿病患者に対して勧められている。しかし,2型糖尿病ラットを用いて運動効果指標としてのAGEsを評価した研究はほとんどない。
今回,Goto-KakizakiラットとWistarラットを用いて,運動による効果を,腎小体の形態変化及び尿細管でのAGEsとiNOSの分布を比較することによって,検討した。
【方法】
6週齢(雄性)のWistarラット(WIS群:n=6)とGoto-Kakizakiラット(GK群:n=6)を用いた。飼養環境へなれさせるために,実験への使用前に2週間の馴化を行った。各ラットをそれぞれ,EX群(運動群:exercise),SED群(非運動群:sedentary)に分け,WIS SED,WIS EX,GK SED,GK EXの4群とした。EX群は週3回,15m/分の速度で,15分間走行した後に15分間休憩をし,その後再び15分間走行した(合計30分間)。15週間後にすべてのラットに対して潅流固定を実施し,腎臓を切離した。
パラフィン包埋後,ミクロトームで5μmの切片とし,AGEsとiNOSの免疫組織学染色を実施した。その後顕微鏡で40倍の対物レンズを使用し,写真撮影した。撮影した200以上の尿細管の内皮細胞をPhotoshop Element 11で分析した。
【結果】
実験終了時にそれぞれWIS SEDは306g,WIS EXは229gの体重増があった(p<0.01)一方で,GK SED(384g)とGK EX(404g)間で有意差は認められなかった。
形態学的には,GK群はすべてのパラメーターにおいて(ボウマン嚢面積,糸球体面積,糸球体占有率)SEDとEX間で有意差を認めた。
免疫組織化学染色においては,WIS群,GK群の両方ともに,皮質深層の近位尿細管のAGEs陽性細胞がSED群よりもEX群の方が多かった。一方,iNOS陽性細胞の発現は,皮質深層と皮質浅層で大いに異なった。また,AGEs染色と同様に,皮質深層の近位尿細管のiNOS陽性細胞がSED群よりもEX群の方が多かった。iNOS染色のGK群のみに有意差が出現した(p<0.05)。
【考察】
今回の研究は,有酸素運動がGKラットの腎臓においてボウマン嚢の大きさを回復させ,iNOSが関連した反応とともにAGEsを再利用するために吸収を促進するという結果となった。
WIS群,GK群の両方ともにEX群の皮質深層の近位尿細管にAGEsの集積が観察された。これは,近位尿細管の膜に豊富に発現するメガリンの機能によるものである。AGEsはメガリンと結合し,リソソームに運搬されて代謝される。皮質深層に存在する傍髄質ネフロン(juxtamedullary nephron:JMネフロン)は長ループを持ち,単一糸球体濾過率(single nephron glomerular filtration rate:SNGFR)は表在性ネフロン(superficial nephron:SFネフロン)の2倍以上である。つまり,有酸素運動がJMネフロンのSNGFRを刺激し,近位尿細管にAGEsの集積を促したと考えられる。
形態学的には,GK EX群のパラメーター(ボウマン嚢面積,糸球体面積,糸球体占有率)がWIS群(EXとSED)とほとんど同じ値になった。これは有酸素運動が,AGEs吸収を増加させた後,循環,GFR及び近位尿細管による再吸収を刺激したためと考えられる。iNOSは,通常正常な状態では発現しないとされているが,いくつかの論文は正常な腎臓での発現を示している。AGEs集積はiNOS発現に先行すると考えられている。iNOS発現は,AGEs処理のためにAGEsによるNF-κBの活性化に起因するもので,AGEsリサイクル過程に重要な役割を果たしている。
【理学療法学研究としての意義】
糖尿病治療に関しては有酸素運動が推薦されていることが多い。しかし糖尿病の腎臓について,有酸素運動の効果を組織学的に表した論文は数少ない。
AGEs(advanced glycation end-products)は糖尿病合併症において重要な因子の一つだと考えられている。腎臓はAGEsを代謝する重要な役割を果たしており,このような過剰な腎臓への負荷が糖尿病腎症の原因だとされている。その際,iNOS(inducible nitric oxide synthase)の誘導がAGEsやNF-κBを介して起こっている。
有酸素運動の実施は,血糖をインシュリン非依存的に細胞の中に取り込むことができるために,一般的に糖尿病患者に対して勧められている。しかし,2型糖尿病ラットを用いて運動効果指標としてのAGEsを評価した研究はほとんどない。
今回,Goto-KakizakiラットとWistarラットを用いて,運動による効果を,腎小体の形態変化及び尿細管でのAGEsとiNOSの分布を比較することによって,検討した。
【方法】
6週齢(雄性)のWistarラット(WIS群:n=6)とGoto-Kakizakiラット(GK群:n=6)を用いた。飼養環境へなれさせるために,実験への使用前に2週間の馴化を行った。各ラットをそれぞれ,EX群(運動群:exercise),SED群(非運動群:sedentary)に分け,WIS SED,WIS EX,GK SED,GK EXの4群とした。EX群は週3回,15m/分の速度で,15分間走行した後に15分間休憩をし,その後再び15分間走行した(合計30分間)。15週間後にすべてのラットに対して潅流固定を実施し,腎臓を切離した。
パラフィン包埋後,ミクロトームで5μmの切片とし,AGEsとiNOSの免疫組織学染色を実施した。その後顕微鏡で40倍の対物レンズを使用し,写真撮影した。撮影した200以上の尿細管の内皮細胞をPhotoshop Element 11で分析した。
【結果】
実験終了時にそれぞれWIS SEDは306g,WIS EXは229gの体重増があった(p<0.01)一方で,GK SED(384g)とGK EX(404g)間で有意差は認められなかった。
形態学的には,GK群はすべてのパラメーターにおいて(ボウマン嚢面積,糸球体面積,糸球体占有率)SEDとEX間で有意差を認めた。
免疫組織化学染色においては,WIS群,GK群の両方ともに,皮質深層の近位尿細管のAGEs陽性細胞がSED群よりもEX群の方が多かった。一方,iNOS陽性細胞の発現は,皮質深層と皮質浅層で大いに異なった。また,AGEs染色と同様に,皮質深層の近位尿細管のiNOS陽性細胞がSED群よりもEX群の方が多かった。iNOS染色のGK群のみに有意差が出現した(p<0.05)。
【考察】
今回の研究は,有酸素運動がGKラットの腎臓においてボウマン嚢の大きさを回復させ,iNOSが関連した反応とともにAGEsを再利用するために吸収を促進するという結果となった。
WIS群,GK群の両方ともにEX群の皮質深層の近位尿細管にAGEsの集積が観察された。これは,近位尿細管の膜に豊富に発現するメガリンの機能によるものである。AGEsはメガリンと結合し,リソソームに運搬されて代謝される。皮質深層に存在する傍髄質ネフロン(juxtamedullary nephron:JMネフロン)は長ループを持ち,単一糸球体濾過率(single nephron glomerular filtration rate:SNGFR)は表在性ネフロン(superficial nephron:SFネフロン)の2倍以上である。つまり,有酸素運動がJMネフロンのSNGFRを刺激し,近位尿細管にAGEsの集積を促したと考えられる。
形態学的には,GK EX群のパラメーター(ボウマン嚢面積,糸球体面積,糸球体占有率)がWIS群(EXとSED)とほとんど同じ値になった。これは有酸素運動が,AGEs吸収を増加させた後,循環,GFR及び近位尿細管による再吸収を刺激したためと考えられる。iNOSは,通常正常な状態では発現しないとされているが,いくつかの論文は正常な腎臓での発現を示している。AGEs集積はiNOS発現に先行すると考えられている。iNOS発現は,AGEs処理のためにAGEsによるNF-κBの活性化に起因するもので,AGEsリサイクル過程に重要な役割を果たしている。
【理学療法学研究としての意義】
糖尿病治療に関しては有酸素運動が推薦されていることが多い。しかし糖尿病の腎臓について,有酸素運動の効果を組織学的に表した論文は数少ない。