第50回日本理学療法学術大会

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ポスター

ポスター3

がん その他1

Sun. Jun 7, 2015 1:10 PM - 2:10 PM ポスター会場 (展示ホール)

[P3-C-1120] 放射線療法施行症例に対するがんのリハビリテーション介入効果の検討

田畑伸治1, 石橋輝彦1, 作村里美1, 池嵜寛人2, 黒木はるか1 (1.熊本赤十字病院, 2.熊本保健科学大学)

Keywords:がん, 放射線療法, ADL

【はじめに,目的】
がん患者は原疾患による症状や,治療に伴う有害事象,また入院に伴う廃用性変化などの要因によりADLの低下が懸念される。そのため,がん患者のADL維持・向上を目的にがんのリハビリテーション(以下,がんリハ)として,当院でも介入している。今回,当院入院中放射線療法を施行した症例の,がんリハ介入効果を検討した。
【方法】
2013年1月から2014年8月までに実施したがんリハ介入症例112例の内,放射線療法を施行した,死亡5例を除く42例(男:女=25:17,平均年齢75.5±10.7歳,平均介入回数10.7±8.2回,転帰:自宅退院13例,転院29例)を対象とし,対象症例の初期評価と最終評価におけるBarthel Index(以下,BI)を比較検討した。さらに,対象症例を骨転移有群21例と骨転移無群21例に分類し,各群での初期評価と最終評価におけるBIも併せて比較検討した。なお,統計にはWilcoxonの符号付順位和検定を用いた。
【結果】
当院入院中放射線療法を施行し,がんリハ介入した症例のBIは初期評価と比較し最終評価では有意に点数の向上を認めた(p<0.001)。また,骨転移有群でも最終評価でのBIは有意に向上し(p<0.05),骨転移無群でも同様に有意に向上を認めた(p<0.01)。
【考察】
がんのリハビリテーションガイドラインでは,化学療法・放射線療法施行患者は有害事象や疼痛,睡眠障害,精神的要因も相まって,全身体力の低下,倦怠感をきたすことが多く,ADLやQOLにも関わることから,体力の維持・改善のためのリハビリテーションが重要であるとされており,「化学療法・放射線療法中・治療後の乳癌,前立腺癌,血液腫瘍患者に運動療法は安全に実施でき,エルゴメーターやトレッドミルを用いた有酸素運動,ストレッチングや筋力トレーニング,また,それらを組み合わせた運動療法を実施することは,運動耐容能や筋力などの身体機能の改善がみられるため,行うよう強く勧められる。」(grade A),「脊椎転移症例に対して,リハビリテーションを実施することによりADLやQOLの向上が得られるため,行うよう勧められる。」(grade B)と推奨されている。今回の結果もそれらを支持する結果となった。今回は,疾患は分類せず放射線療法を施行した点に着目したが,疾患に限らずADLの維持・向上が期待出来ることが示唆された。また,骨転移に関しても転移部位を限定せずに,骨転移の有無で比較したが,骨転移を有していてもADLの維持・向上効果が期待されることが示唆された。さらに当院では,骨転移症例に対し骨転移スクリーニングシートを活用し,画像評価や,治療内容・方針,患者背景を踏まえた上で,がんリハ担当整形外科医が診察・ICを実施後リハ介入しており,より安全に,適切なリハ介入が行えていることが,ADLの維持・向上に繋がったのではないかと考えられる。今後,症例数を増やし,疾患や転移部位による分類も加味し調査していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は報告の少ないがんのリハビリテーションに関するものであり,より安全に効果的リハビリテーションを施行するための,がんのリハビリテーションシステム構築に向けた取り組みとして意義のあるものだと考えられる。