第50回日本理学療法学術大会

講演情報

分科学会 シンポジウム

日本呼吸理学療法学会 分科学会 シンポジウム11

新たなる可能性への挑戦「急性期呼吸理学療法」

2015年6月6日(土) 17:30 〜 19:20 第3会場 (ホールB7(1))

座長:神津玲(長崎大学病院 リハビリテーション部), 関川清一(広島大学大学院 医歯薬保健学研究院)

[S-11-2] 肺移植における理学療法の役割

玉木彰1, 大島洋平2, 長谷川聡3 (1.兵庫医療大学大学院医療科学研究科, 2.京都大学医学部附属病院, 3.京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻)

1997年の臓器移植法の制定により,本邦において脳死ドナーからの臓器移植(心臓,肺,肝臓,腎臓など)が可能となった。そして本邦における肺移植1例目は,臓器移植法が制定された翌年である1998年に岡山大学で実施された生体肺移植であり,脳死ドナーからの肺移植は2000年3月に東北大学と大阪大学で実施されたのが初めてである。演者が勤務していた京都大学医学部附属病院では,2002年の生体肺移植から始まり,現在までに100例以上の脳死および生体肺移植術が施行され,多くの重症呼吸不全患者の生命予後だけでなく,身体機能や健康関連QOLなどの向上に寄与してきた。そしてこれまでに肺移植を受けられ全ての症例に対し理学療法介入を実施しており,術後は定期的な検診(3ヶ月,半年,1年,2年と,以後1年毎に実施)によって身体機能の評価を継続している。
過去の報告や我々の研究から,肺移植患者の機能的予後には術前の身体機能が大きく関与しているため,移植前の理学療法介入が必須であることは言うまでもない。しかし我々の経験では,術前に理学療法を受けている患者は予想以上に少なく,これは肺移植待機患者に対する術前理学療法の重要性が医師だけでなく,実際に担当する理学療法士に対しても十分に浸透していないことが原因と考えられるため,今後の課題である。
肺移植後の介入は全身状態が許す限り可及的早期から開始することが望ましく,早期離床を目指していく。術後の機能的予後には,ICU滞在期間が関係していることから,術後における呼吸器合併症や廃用性症候群の予防が非常に重要となる。
以上の内容を含め,本シンポジウムでは,肺移植前後における理学療法介入の実際と術後の機能的変化に関する我々のデータを紹介する。