[S1-03] ロボット搾乳・ハードナビゲーターシステム導入による生産性の向上
例えば搾乳ロボット自体にはフィードステーションが付いています.このフィードステーションは非常に細かく設定することができ,また搾乳ロボットの乳量等のデータとリンクすることができます.これによりフリーストールやフリーバーンの牛群の中でも個別管理ができます.乳量がピークをむかえている牛には多くの配合飼料を給与することにより,エネルギー不足をなくし,乳量の維持や長期発情休止を回避することができます.また泌乳後期など乳量の落ちてきた牛には,少ない配合の給与にできるのでボディーコンディションスコアの上昇を抑えることができます.搾乳ロボットのデータは常に更新されていくので,フィードステーションで給与する配合飼料の量も自動で更新していくこともできます.
このように搾乳ロボットではデータを蓄積させることが非常に大切です.搾乳ロボットからも搾乳量や採食量など多くのデータを取ることができますが,今一番注目されているのはハードナビゲーターです.
ハードナビゲーターは搾乳ロボットで搾られた乳汁のプロゲステロン,BHB,LDHを測定できます.プロゲステロンの分泌量により卵巣,子宮の状態がよくわかります.プロゲステロンは卵巣で黄体期に分泌量が多くなります.そして排卵の直前になると急激に減少します.プロゲステロンの減少は排卵の24~36時間前におこります.万歩計などより早く発見でき,正確です.また妊娠鑑定,卵胞嚢腫・黄体嚢腫の発見,流産の発見など多くの事が解ります.BHBからはケトーシスの初期での発見ができます.牛の体内でケトン体が増加している時に発見できるので,治療することにより治りも早いです.牛は採食量の減少や乳量の低下などはまだ起こっていない状態なので,経済的損失を抑第四胃変位になるリスクを減らせます.LDHでは乳房炎のリスクがある牛を発見できます.リスクのある牛を発見してから,従来酪農家が発見していたブツが出る状態になるまで3日ほどあります.多くの牛はその間に自己治癒します.松下牧場では搾乳間隔を狭め,搾乳回数を増やすことで自己治癒率を高めています.
このように搾乳ロボットやハードナビゲーターからは多くのデータを採取,蓄積することができます.しかしデータを精査し,牛の状態と結び付け,今後の飼養管理に役立てるまでを酪農家が一人で行うことは非常に大変です.酪農家,獣医師,飼料メーカー,コンサルタントなどチームを組み,情報やデータを共有し,一体になってやっていくことが大切です.
略歴:学生時代から酪農をやろうとは全く考えておらず,酪農とは離れた分野を学び就職していましたが,サラリーマンをやっているうちに酪農に可能性を感じるようになり就農する.平成27年に搾乳ロボットの導入を機に法人化をする.翌28年にはハードナビゲーターを導入し,現在多くのメーカーと共同で試験等をし,より良い飼養管理を目指している.