[S1-04] 日本型豚舎洗浄ロボットの開発
豚舎内の洗浄・消毒は,養豚農家において防疫上不可欠な作業である.そしてその作業時間は農場の管理作業の約1/3にもなる.しかしながら洗浄作業そのものは豚の生産工程には含まれず,衛生管理として行うものであり,その重要性は認識しつつも極力手をかけたくない,というところが養豚農家の本音ではないかと思われる.
数年前より海外製の豚舎洗浄ロボットの導入も始まり,現在,全国に約40台普及している.しかしながら海外製の豚舎洗浄ロボットはその車体寸法が大きく,また価格も高価なため,日本の,特に中小規模の養豚農家への導入はなかなか進まなかった.
そこで現場からの切実な要望により,日本の豚舎内でも洗浄作業が可能なロボットの開発が行われることとなった.日本型の豚舎洗浄ロボットは,コストを抑えるために海外製の豚舎洗浄ロボットの洗浄方法の良いところを取り入れつつ,小型化や操作性の向上など,現行機に寄せられた要望への対策を盛り込むこととした.具体的には次のような項目を掲げた.
・目標本体価格:600万円以下
・小型(機体幅650 mm以下)
・通路上を走行し,豚房上部へアームを伸展して洗浄
・洗浄範囲は4 m
・狭いスペースでの方向転換が容易に可能
・ティーチング操作が煩雑でない
・汚れのセンシングは行わず,ティーチングプログラムの指定通りに洗浄
・動作状況を自動記録し,端末から作業履歴の確認が可能
・緊急停止時は洗浄ロボットから農場担当者の端末へ,通報メールを送信する
・2020年以降に商品化
これらの項目をコンソーシアムの各構成員が担当して開発を行い(1),2018年12月には千葉県畜産総合研究センターの肥育豚舎と分娩豚舎にて洗浄試験を行うことができた.
今後は,現在までに開発した機能を,市販化に向けてより確実なものにすると同時に,ニーズに対応する価格と機能の検討を行う.また引き続き豚舎内での洗浄試験を行い,取扱い性や耐久性などの検証,改良を行う予定である.
なお,本研究は生研支援センターの革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)の支援を受けて実施した.
参考文献(1)松野更和ら(2018)豚舎洗浄ロボットの開発(第1報),農業環境工学関連学会2018年合同大会講演要旨集
略歴:2006年,生物系特定産業技術研究支援センター(現,農研機構農業技術革新工学研究センター)入所.生産システム研究部,畜産工学研究部を経て,現在は次世代コア技術研究領域,研究員.これまで稲作の直播栽培機械,乳牛の精密飼養管理技術,畜産環境対策技術の開発などに従事している.