[I-15-02] 分娩直後の母子および分娩時の臍静脈の血液性状におけるホルスタイン種と黒毛和種の比較
【目的】第125回大会において、肉用種(黒毛和種・F1)を妊娠するホルスタイン種は、同品種を妊娠する場合と比べて胎子へのグルコースやアミノ酸移行が少ないことを示した。しかし、母子ともに肉用種の比較をしていなかった。そこで、母子同品種の乳用種および肉用種における、分娩時の母子および臍静脈の血中代謝物やアミノ酸濃度を比較した。【方法】ホルスタイン種妊娠牛30頭と産子、黒毛和種妊娠牛5頭と産子を用いて、分娩予定日2~3週間前と分娩直後の母牛の尾静脈、分娩時の臍静脈ならびに出生直後(初乳摂取前)の子牛の頸静脈から血液を採取し、血中代謝物やアミノ酸濃度を比較した。【結果】黒毛和種母牛では、分娩前の血中アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性値と遊離脂肪酸濃度が高く(P<0.01)、正常範囲を逸脱していたため、肝機能障害および短期的な低栄養状態だったと考えられた。また、分娩時の母牛の血中グルコース濃度は品種間で差がなかったが、ホルスタイン種に比べて黒毛和種の臍静脈および子牛で低値を示した(P<0.01)。一方、血中総アミノ酸、総必須アミノ酸および総非必須アミノ酸濃度は、品種間で差がなかった。先行研究ならびに本研究の結果、黒毛和種妊娠において母牛の品種にかかわらず胎子へのグルコース移行が少ないこと、さらに母牛がホルスタイン種の場合のみ胎子へのアミノ酸移行が少ないことが示唆された。