[IIIYS-03] 乳汁IgAの産生制御因子としてのPolymeric immunoglobulin Receptor(PigR)の機能解明
目的:母子移行免疫の健全化を図る上で、乳汁中のIgAは重要な免疫因子である。しかし、乳腺におけるIgAの分泌機構は、完全に解明されていない。これまでの研究から、粘膜上皮細胞が発現するPoly-Ig Receptor(PigR)を欠損したマウスでは、腸管腔へのIgA輸送は認められないものの、乳汁IgAは豊富に検出されることが知られている。そこで本研究では、乳腺上皮細胞が発現するPigRによる、乳汁IgAの分泌制御の可能性を検証した。 方法:pigr-/-とpigr+/-マウスから乳汁を採材し、ELISA法でIgA濃度の測定および分泌型IgAの有無を評価した。また、ウエスタンブロット法で、乳汁IgAの分子構造を調べた。加えて、フローサイトメトリー解析で、乳腺のIgA産生形質細胞数を算出した。 結果:pigr+/-と比較し、pigr-/-の乳汁中には高濃度のIgAが検出された。pigr+/-が合成する乳汁IgAの多くは、PigRの一部が結合した分泌型IgAであるのに対し、pigr-/-の乳汁IgAは、分泌型ではないものの二量体を形成していた。また、乳腺の形質細胞数には、両マウス間で有意な差は認められなかった。 考察:pigr-/-では、二量体IgAが乳腺上皮細胞間を介して、間質から乳腺房腔に漏出していると推測された。また、PigRは、形質細胞からのIgA分泌を制御している可能性が示唆された。