日本畜産学会第129回大会

講演情報

口頭発表

4. 形態・生理

形態・生理1

2021年9月15日(水) 08:40 〜 12:00 形態・生理 (オンライン)

座長:小笠原 英毅(北里大獣医)、室谷 進(農研機構畜産部門)、松崎 正敏(弘前大農学生命)、小林 謙(北大院農)、磯部 直樹(広大院生物圏)、鈴木 裕(北大院農)

[IV-15-07] 黒毛和種の肥育・産肉成績と肝臓由来ホルモンANGPTL3との関連

*鋪田 莉佳1、正木  達規2、生田  健太郎3、岩本  英治2、上本  吉伸1、寺田  文典4、盧 尚健1 (1. 東北大院農、2. 兵庫農技総セ、3. 兵庫淡路農技セ、4. 農研機構)

【目的】反芻動物の肝臓は糖新生と脂質代謝において重要な組織であり、その健全性は生産性に大きく影響する。我々は以前、肝臓由来ホルモンANGPTL8は負エネルギー時に代謝調節に関与することを報告した。本実験では黒毛和種牛の肥育前・中・後期の肝臓由来ANGPTL3と、血液代謝産物と肥育・枝肉成績などの生産性に関連する特徴を調査した。【方法】黒毛和牛21頭を供試し、30ヶ月齢まで肥育した。肥育前(13ヶ月齢)、中(20ヶ月齢)、後(28ヶ月齢)期に血液、肝組織の採取を行った。バイオプシーした肝組織からRNAを抽出してANGPTL3の遺伝子発現量を解析した。さらに、枝肉成績によってクラスター分析を行い、3グループに分けて代謝産物やホルモン、肝臓におけるANGPTL3発現量と比較した。また、培養肝細胞を用いてインスリンやGH、揮発性脂肪酸刺激によるANGPTL3の発現量を解析した。【結果】ANGPTL3の遺伝子発現量は肥育前、中、後期と肥育が進むにつれて有意に低くなり、インスリン濃度とは有意な負の相関がみられた。培養肝細胞においてはインスリンの刺激によりANGPTL3の発現は有意に抑制された。しかし、ANGPTL3と肥育・産肉成績との関連は認められなかった。以上より、ANGPTL3の発現調節には、体内のエネルギーバランスで生じるインスリンによって制御される可能性が示唆された。