日本畜産学会第129回大会

講演情報

口頭発表

4. 形態・生理

形態・生理1

2021年9月15日(水) 08:40 〜 12:00 形態・生理 (オンライン)

座長:小笠原 英毅(北里大獣医)、室谷 進(農研機構畜産部門)、松崎 正敏(弘前大農学生命)、小林 謙(北大院農)、磯部 直樹(広大院生物圏)、鈴木 裕(北大院農)

[IV-15-10] 乳房への局所的高温処理に対する自然免疫機能の変化

*津上 優作1,2、石場 優希2、鈴木 直樹1,2、新居 隆浩1,2、吉村 幸則1,2、小林 謙3、磯部 直樹1,2 (1. 広島大院統合生命、2. 広島大生物生産、3. 北大院農)

【背景・目的】夏期の暑熱は乳牛の摂食量を低下させ、免疫機能や乳生産性を低下させる。しかし、乳房局所的な暑熱がこれらに及ぼす影響は不明である。そこで、本研究では、カイロの貼付により乳房へ局所的な高温処理を施し、自然免疫機能の変化を調べた。【方法】トカラ種とシバ種の泌乳期ヤギを用いた。高温処理として、左右の乳房のいずれかにカイロを貼付し、反対側を対象区とした。カイロ貼付後、6時間ごとに乳汁を採取し、体細胞数、Na+濃度、抗菌因子濃度 (ラクトフェリン、β-ディフェンシン-1、カテリシジン-2、IgA)および炎症性サイトカイン濃度 (TNF-α、IL-1β、IL-8)を測定した。また、貼付24時間後に乳腺組織を採取し、HE染色を行った。【結果】カイロ貼付24時間後の乳房表面温度は対象区で40.8°C、処理区で46.7°Cであった。体細胞数は、処理24時間後において高温処理区で対象区より有意に増加しており、カテリシジン-2およびIgA濃度も高温処理区で有意な増加が確認された。一方で、炎症性サイトカイン濃度は処理による変化を示さなかった。また、乳腺胞構造および血液乳関門の指標である乳中Na+濃度も顕著な影響は確認されなかった。以上より、乳房局所的な高温処理は、激しい炎症や乳腺胞構造の崩壊を伴わない体細胞数の増加および抗菌因子産生の増加を誘導することが判明した。