日本畜産学会第130回大会

講演情報

口頭発表

2. 育種・遺伝

育種・遺伝1

2022年9月16日(金) 09:00 〜 12:00 Zoom会場2 (オンライン)

座長:口田 圭吾(帯畜大)、渡邊 敏夫(一般社団法人家畜改良事業団家畜改良技術研究所)、廣岡 博之(京大院農)、上本 吉伸(東北大院農)、萩谷 功一(帯畜大)

11:50 〜 12:00

[II-16-18] 乳用牛の初産記録に基づく選抜が泌乳成熟曲線の遺伝的トレンドに及ぼす影響

*増田 豊1 (1. 酪農大農食環境)

乳用牛の後代検定において、候補種雄牛の305日乳量の遺伝評価値は、娘牛の初産記録に基づいている。各個体の育種価の生涯にわたる変動が遺伝的成熟曲線である。この形質の遺伝評価には反復記録モデル(REP)がよく採用されるが、このモデルによる選抜で遺伝的成熟曲線がどのようなトレンドを示すかは不明である。本研究の目的は、娘牛の初産乳量に基づく種雄牛選抜による遺伝成熟曲線のトレンドを、シミュレーションによって示すことであった。各年次において、100頭の候補種雄牛は各50頭の娘牛を持ち、それらの初産記録に基づく推定育種価の上位20頭を選抜した。真の育種価は、5産次までの各産次を異なる形質とした多形質モデル(MT)により生成した。候補種雄牛をREPまたはMT5に基づいて20年間選抜する、2つのシナリオを想定した。MT5の選抜基準値は、各産次の推定育種価の算術平均とした。20年目に誕生した選抜牛の平均遺伝成熟曲線は、REPにおいて3産次までほぼ平坦となり、その後減少した。MT5においては、3産次をピークとする「上に凸」の形状を示した。遺伝的成熟曲線には個体差がみられた。成熟曲線が変動する個体は、遺伝評価値も年次ごとに変動する傾向にあった。両シナリオにおいて、5産までの累積育種価のトレンドは同程度であった。反復モデルは実用的であるが、個体の成熟度の違いを考慮できる多形質モデルが好ましいと推察された。