日本畜産学会第130回大会

講演情報

口頭発表

3. 繁殖・生殖工学

繁殖・生殖工学1

2022年9月16日(金) 09:00 〜 11:20 Zoom会場3 (オンライン)

座長:平山 博樹、片桐 成二、山下 泰尚、岩田 尚孝(東京農業大学)、真方 文絵、松田 二子(東大院農生命)

11:00 〜 11:10

[III-16-13] 長期不受胎牛の子宮内環境の解析

*加藤 大雅1、樽 舞帆1、岩田 尚孝1、桑山 岳人1、三浦 亮太郎2、濱野 晴三3、白砂 孔明1 (1. 東農大院動物科学、2. 日獣生科大、3. 日人協)

【目的】約13%で存在する長期不受胎牛(RBC)は酪農経営で問題となるが、その要因は不明な点が多い。本研究では、RBCの子宮組織自体や、RBC子宮液がウシ子宮内膜上皮細胞(EEC)に及ぼす影響について網羅的な発現解析を行い、RBCの子宮環境を検討した。 【方法と結果】ホルスタイン種経産牛を用い、人工授精3回以内で受胎した個体を正常牛(5頭)、3回以内で受胎しない個体をRBC(5頭)とした。実験1: RBCの子宮組織ではImmune systemやNK細胞毒性に関する経路が大きく変動した。実験2: RBC子宮液中のlipopolysaccharide(LPS)濃度は正常牛に比べて有意に高かった。メタボローム解析では、RBC子宮液で胆汁酸が減少傾向だった。実験3: EECに子宮液を添加すると、RBC区で炎症応答を誘導するNF-kBやTNFシグナル経路等が活性化された。EECに子宮液を添加すると、正常区よりRBC区で著しくIL-8分泌が増加した。実験4:子宮液中のタンパク質成分の影響を検証するため、熱処理した子宮液をEECに添加した。正常子宮液を熱処理するとEECへのIL-8分泌刺激効果が完全に無くなったが、RBC子宮液を熱処理してもIL-8分泌刺激効果は完全には抑制されなかった。 【結論】RBCの子宮環境は正常牛とは異なり、LPS等により慢性的な炎症状態となる可能性が考えられた。